自治体DXとは?5つの課題から推進ポイント・先進事例まで解説

自治体DX

少子高齢化や人口減少が進む中、行政サービスの効率化と住民の利便性向上は喫緊の課題です。それを実現する鍵として「自治体DX」が注目を集めています。しかし、IT人材不足や予算の制約などによって、多くの自治体がDX推進に苦戦しているのも事実です。

この記事では、自治体DXの現状と課題、そして具体的な推進ポイントをご紹介します。自治体DXの課題を解決できた先進事例についても触れていますので、あわせてご参照ください。

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自治体DXとは?

自治体DXとは?

自治体DXとは、地方自治体などがデジタル技術を活用して、「住民にとってより便利で使いやすいサービスの提供」「行政の業務効率を向上」「データを活用して新たな価値を生み出す」取り組みです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して、より良い社会や組織に変革していくことを意味します。近年、デジタル庁の設立などもあり、自治体におけるDXへの注目は高まっています。少子高齢化や人口減少といった社会課題を抱えるなか、持続可能な地域社会を実現するには、自治体DXによる業務効率化が不可欠です。具体的には、マイナンバーカードを活用したオンライン申請やキャッシュレス決済の導入、行政手続きの簡素化などが挙げられます。これらの取り組みは、行政職員の負担軽減だけでなく、住民にとっても質の高いサービスを受けられるメリットがあります。

しかし、自治体DXにはいくつかの課題があり、DXの需要が高い一方でいまだに導入が後回しになっている事例も珍しくありません。

≫≫ 自治体DXとは?推進目的から課題、事例をわかりやすく解説

現段階の自治体DXの状況

現段階の自治体DXの状況

自治体DXには行政・民間にさまざまなメリットがある一方で、いくつかの課題があるのも事実です。現段階の自治体DXの状況は以下のようになっています。ここでは、現段階の自治体DXの状況について、それぞれの背景を解説します。

DXの需要は高い

自治体DXの導入にはいくつか課題が残っているものの、DX化自体には根強い需要があります。住民からデジタル化への期待が高まり、行政サービスのオンライン化や手続きの簡素化を求める声が増えています。特に、民間企業ではすでに多くのサービスがオンライン化されており、行政サービスにも同様の利便性が求められているのも事実です。

コロナ禍ではテレワークやオンラインサービスが増加した背景もあり、行政サービスにも似たようなオンラインでの手続きが求められるなど、自治体DXに対する住民の需要は高まっています。

自治体DXは民間企業に比べ進んでいない

住民からDX化の需要が高まっている一方で、IT人材の不足や予算の制約などさまざまな課題から自治体DXは思うように進んでいないのが現状です。民間企業に比べてデジタル技術への投資や人材育成が遅れており、DX化を推進する体制が整っていません。

令和6年1⽉10⽇〜1⽉31⽇に総務省より行われた調査によると、全1,788の都道府県・市区町村のDX化状況は以下のとおりとなります。

地方自治体におけるAIの導入状況
都道府県 導入済み47件(100%)
指定都市 導入済み20件(100%)
その他市区町村 導入済み859件(50%)
実証中35件(2%)
導入予定90件(5%)
導入検討中258件(15%)
検討したものの未導入76件(4%)
導入予定および検討なし403件(23%)
地方自治体におけるRPAの導入状況
都道府県 導入済み44件(94%)
実証中2件(4%)
検討したものの未導入1件(2%)
指定都市 導入済み20件(100%)
その他市区町村 導入済み700件(41%)
実証中41件(2%)
導入予定85件(5%)
導入検討中288件(17%)
検討したものの未導入194件(11%)
導入予定および検討なし413件(24%)

出典元:総務省自治体におけるAI・RPA活用促進(令和6年7月5日版)

令和5年に行われた調査では、その他市区町村にて「AIの導入済み771件(45%)→導入済み859件(50%)」「RPAの導入済み621件(36%)→導入済み700件(41%)」と、年々DX化が進められていることが分かります。

しかし、それでもAI・RPAを導入できている市区町村は全体の半数程度です。そのため、自治体DXはまだまだ取り組む余力があると言えます。

自治体DXの5つの課題

自治体DXの5つの課題

自治体DXは年々導入が進んでいるとはいえ、いまだ課題が残っているのも事実です。自治体DXでよく見られる課題として、以下5つが挙げられます。ここでは、自治体DXの5つの課題について、それぞれの内容を解説します。

1. IT人材の不足

自治体DXを推進するには、デジタル技術に関する知識やスキルを持つ人材が不可欠です。しかし、多くの自治体ではIT人材が不足しているのが課題のひとつです。IT人材そのものが日本市場に少ないだけでなく、民間企業での需要が高く、給与水準も高いため、自治体に人材が集まりにくい背景があります。

高度なプログラミングスキルを持つ人材は、民間企業の方がより魅力的な報酬やキャリアパスを提供できる可能性が高いのも事実です。そのため、IT人材の不足は自治体DXにおける大きな課題となっています。

2. DX推進が後回しになってしまう

少子高齢化や人口減少、災害対策など、自治体が抱える課題は多岐にわたります。そのため、DX推進がほかの重要課題に比べて後回しにされてしまう点も課題のひとつです。自治体DX化の効果はすぐに見えにくく、ほかの課題が重要視されてしまうケースも珍しくありません。

自治体DXは組織全体の協力が欠かせませんが、ほかの課題に埋もれてしまい、なかなか進まない状況が生じがちです。また、住民へのサービスなど基本業務もあり、DX化に価値があるとは理解しつつも対応できない自治体が多くなっています。

3. DX推進のための予算の確保が困難

DX推進には、システムの導入や人材育成など、多額の費用がかかります。しかし、多くの自治体では財政状況が厳しく、DX推進のための予算を十分に確保することが困難です。税収の減少や社会保障費の増加などにより、自治体の財政が逼迫している地方も少なくありません。

総務省が2020年に調査したアンケートでは自治体DX化推進のもっとも大きな課題が予算の確保だとされています。
自治体では老朽化したインフラの改修や福祉サービスの充実など、DX以外にも予算を必要とする事業はたくさんあります。そのため、DX推進のための予算確保は容易ではありません。

4. アナログ文化が根強く残っている

自治体でのDX推進を妨げている課題のひとつに、紙を使った業務が未だに多く残っていることが挙げられます。多くの自治体では、紙の書類やハンコを使った手続きなど、アナログな業務プロセスが根強く残っています。DXを進めるには、業務のデジタル化が重要ですが、自治体では紙での作業が定着しており、デジタル化への移行に抵抗を感じる職員もいるかもしれません。

例えば、「紙の書類の方が安心できる」「ハンコがないと正式な手続きにならない」といった意識が根強いと、DX推進の妨げになります。このような環境の変化に対応することが難しい自治体では、DX推進が難航する傾向にあります。

5. デジタル技術活用の世代間格差が大きい

デジタル技術を使いこなせる若い世代と、使い慣れていない高齢者との間には、デジタルディバイド(情報格差)が存在します。そのため、住民全員がデジタル技術の恩恵を受けられるようにするためには、高齢者へのサポート体制の構築などが重要です。

高齢者がデジタル技術を使えないと、行政サービスのオンライン化が進んでも、それを利用できない人が出てきてしまうからです。高齢者向けのサポートや分かりやすいシステムづくりを念頭に置いてしまうと、どうしても自治体DX化を進めるうえで課題がでてしまいます。

オンラインで申請手続きを行う際に、高齢者が操作方法で困らないようにサポート窓口を設けたり、わかりやすいマニュアルを作成したりするなど、DX化にはいくつかの補助が求められます。

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自治体DX推進の4つのポイント

自治体DX推進の4つのポイント

自治体DXの推進には課題があるものの、以下4つのポイントを満たせば、トラブルを最小限に抑えて導入しやすくなります。ここでは、自治体DX推進の4つのポイントについて、それぞれのコツを解説します。

≫≫ 自治体DX推進手順書の概要から効率的なDX推進方法を解説

1. DXに対して組織で共通認識を持つ

自治体DXを成功させるには、トップと現場で同じ目標を共有し、組織全体がDXの重要性を理解したうえで進める取り組みが不可欠です。一部の職員だけが熱心に取り組んでも、組織全体で足並みが揃わなければ、思うように進みません。リーダーが明確なビジョンを示し、職員全体の意識改革を促すことで、組織一丸となってDX推進に取り組めます。

また、長期的な計画を事前に立てることも大切です。抜本的な変革には時間がかかることが多く、行き当たりばったりの進め方では、思うような成果が出ない場合にモチベーションが低下する可能性があります。

2. IT人材の確保と教育体制を作る

自治体DXを推進するには、IT人材の確保と育成が欠かせません。しかし、高度な専門知識を持つIT人材は非常に希少であり、自治体だけで確保・育成することは困難です。そこで、外部の専門機関との連携や、職員向けの研修制度の充実など、組織全体でIT人材の育成に取り組む必要があります。
具体的には、以下のような取り組みがあります。

取り組み
・専門性の高い人材育成:専門的な研修プログラムを提供したり、資格取得を支援するなど、職員のスキルアップを積極的に後押しする
・外部との連携:民間企業との連携や、外部コンサルタントの活用を通じて、ノウハウや技術を積極的に取り込む
・内製化の推進: 将来的には、外部の力を借りずに自前でDXを推進できるよう、人材育成と組織体制の強化に継続的に取り組む

上記の取り組みを通じて、DXを推進できる人材を確保・育成し、持続可能なDX体制を構築することが重要です。

3. 身近なDXを試みる

いきなり大規模なDXを行うのではなく、まずは職員にとって身近な業務プロセスからデジタル化を試みることも有効です。小さな成功体験を積み重ねれば、DXに対する心理的なハードルを下げ、組織全体のDX推進への機運を高められます。

例えば、「会議資料のペーパーレス化」など、比較的簡単に実現できるDXから始めることで職員の抵抗感を減らし、DX推進をスムーズに進められます。スモールスタートでも、最初に立てた計画に沿って着実に推進していくことが大切です。
小さな成功を積み重ね、組織全体でDXのメリットを実感すれば、より大きな自治体DX化へ繋げられます。

4. ツールの導入を検討する

自治体DXの課題を解決する選択肢のひとつに、ツールの導入が挙げられます。ツールを導入すれば業務効率化やデータ分析等、DX化の効果を最大限に引き出せるのがメリットです。例えば、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールを導入すれば、定型的な事務作業を自動化し、職員の負担を軽減できます。また、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを導入すれば、データの可視化・分析によって、より効果的な政策立案や意思決定を行いやすくなります。

さらに、デジタルサービスの利用が不慣れな方へ向けて、システム上でわかりやすく案内できるナビゲーションツールの導入もおすすめです。せっかく自治体DXで新しいシステムを導入しても、それが利活用されなければ効果は薄くなってしまいます。ナビゲーションツールを導入すれば利活用を促進しやすくなるほか、使い方の問い合わせなどの単純な対応工数も削減できるようになるため、さまざまな作業負担を軽減できるのがメリットです。

誰でもシステムを使いやすくするテックタッチ

テックタッチは、システムの操作方法を画面上に表示できるカスタマーサクセスツールです。操作に迷ったときに、システム上に表示されるガイドに従うだけで、誰でも簡単にシステムを使いこなせるようになります。そのため、デジタルサービスの利用が不慣れな高齢者などを徹底的にサポートできるのが魅力です。

自治体DX化で課題に挙げられる「デジタル技術活用の世代間格差」をカバーしやすくなるほか、単純な問い合わせなども抑制できるため、問い合わせ対応の工数を大きく削減できます。

また、ノーコード・ローコード開発で手間を抑えてシステムを改修できるほか、非IT人材でも操作しやすい魅力もあります。マニュアルの作成や問い合わせ対応などの手間を削減し、業務効率化を実現できるため、自治体DX化の課題に頭を悩まされている方はぜひお気軽にお問い合わせください。

自治体ホームページに関する 意識比較調査

自治体DXの先進事例

自治体DXの先進事例

自治体DXにはさまざまな課題があるものの、取り組むことで多くのメリットを得られるのも事実です。ここでは、自治体DXに先進的に取り組んだケースについて、総務省で紹介されている推進事例を紹介します。

福島県がDXを推進する体制の整備の事例

福島県では、市町村におけるデジタル人材の確保・育成などが課題として認識されていました。そこで、2021年9月に策定した「福島県デジタル変革(DX)推進基本方針」に基づき、県庁だけでなく市町村のDX推進も支援する運びになりました。

具体的な取り組み
・ICTアドバイザー市町村派遣事業:専門家を市町村に派遣し、DX推進に関する課題分析やAI、RPAなどの先端技術活用に関する助言を実施。
・市町村DX推進トップセミナー:市町村の首長などを対象にセミナーを開催し、DX推進の意識向上を図る。
効果
・DX推進により効率的な行政運営や住民サービスの向上を実現できた
・行政手続のオンライン利用率を向上できた
・市町村の自主的なDXの取組を促進できた
コスト
・ICTアドバイザー市町村派遣事業の委託料:約3,000万円
・市町村DX推進トップセミナーの開催経費:約100万円

≫≫ 福島県がDXを推進する体制の整備の事例

「愛媛県・市町DX協働宣言」によるDX推進事例

デジタル人材は全国的に不足しており、特に愛媛県のような地方自治体では、個々の市町村が市町が高度なデジタル人材を確保・育成することは困難でした。県全体でのDX推進を効果的に進めるためには、高度なデジタル人材を確保し、県と市町が共有する仕組みが必要です。

そこで、以下のような取り組みを行いました。

具体的な取り組み
・高度デジタル人材シェアリング事業:高度なデジタル人材を確保し、県と市町で共有する仕組みを構築。
・「チーム愛媛DX推進支援センター」の設置:人材シェアリングを円滑に進めるための拠点として、多様なコミュニケーション手段と連携体制を整備。
効果
・各自治体において、プロジェクトや事業の推進、研修の実施に外部人材を活用できた
・市町間での情報交換や事例共有をオンラインコミュニティで促進し、DXの機運を醸成した
・市町のDXプロジェクトや窓口業務のオンライン化などが効果的に推進され、行政サービスの利便性向上などの効果が得られた
コスト
・非公開

≫≫「愛媛県・市町DX協働宣言」によるDX推進事例

テックタッチ×宇都宮市のDX事例

テックタッチ×宇都宮市のDX事例

総務省の事例とは別に、テックタッチでも宇都宮市で自治体DX化の課題を克服した事例があります。宇都宮市では、スタートアップ企業に伴走支援する独自プログラムを提供していました。イノベーション推進など支援していたものの、行政から発される情報量が多く、ITリテラシーの差による情報格差が課題となっていたそうです。

そこで、情報格差をなくすため、システムをリプレイスせずに簡単に問題を解決できる「テックタッチ」をご導入いただきました。

具体的な取り組み
・テックタッチの導入:ITの操作に不安を感じている方でも簡単にシステムを操作できるよう、ナビゲーションを設置
・「宇都宮市電子申請共通システム」で実証実験:システム案内をわかりやすくガイドして情報格差を抑制
効果
・ひとりあたりの操作時間を約63%削減
・電子申請を活用する負担について、約88%のユーザーが心理的ハードルの軽減を実感
・入力画面におけるわかりやすさについて、約85%のユーザーがUI改善を実感
コスト
・非公開

≫≫ テックタッチ×宇都宮市のDX事例

自治体DXにおける課題のまとめ

自治体DXにおける課題のまとめ

自治体DXは、住民サービスの向上と行政効率化など、自治体が抱える喫緊の課題を解決するための重要な取り組みです。しかし、IT人材不足や予算の制約、アナログ文化の残存など、多くの課題も存在します。これらの課題を克服してDXを推進するには、組織全体で共通認識を持ち、「IT人材の確保と育成」「身近なDX化」「ツールの導入」など、さまざまな取り組みが求められます。

もし、自治体DXの課題で見られる「IT人材の確保・育成が難しい」「システム改修のコストが掛けられない」「既存のシステムの基盤ベースを大きく変えることに抵抗がある」といった問題を抱えている方は、テックタッチまでお気軽にお問い合わせください。テックタッチは、既存のシステム上に操作方法をわかりやすく表示できるナビゲーションツールです。非IT人材でも手軽に操作でき、人材確保・育成の手間を減らしつつ、システム改修のコストも削減できます。

既存のシステムはそのまま、ナビゲーションによってユーザー体験を大きく変化させられるため、単純な問い合わせ件数自体を削減できるのもポイントです。自治体DXの推進をはじめ、さまざまな企業で導入事例も多数ございますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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