「テックタッチ」により、開発・ユーザー教育コストを抑制しながらシステムの安定稼働に成功
・基幹システムおよび周辺システムを一括で、かつ稼働前倒しで刷新し、運用定着・安定稼働をさせる必要性があったこと
・システム導入に伴うユーザー教育やサポートのリソース不足
・マニュアル等の定着支援では、投資対効果が悪いこと
・ガイダンスをシステム上に実装してユーザーの入力ミスや差し戻しを軽減
・一部の操作や入力を自動で行うことで、ユーザーのシステム操作の手間を削減
・ユーザーの直観的なシステム利用をサポートし、「Fit to People」というべき運用を実現
・期限内でのシステム刷新を実現しつつ、導入コストも抑制
・ユーザー教育などの工数を削減しつつ、システムの運用定着の早期化を迅速に実現
・年間約3万時間強の業務工数の削減に成功し、IT戦略のプラットフォームとして国内だけでなく、海外でも「テックタッチ」を展開予定
導入前の課題
グループ全体における大規模なシステム刷新プロジェクトがスタート、会社再編による3か月の稼働前倒しと安定的なシステム稼働が不可避に
TOPPANグループは、旧凸版印刷として1900年に創業し、グループ全体で約200社強の関連会社、約5万人強の社員から成ります。事業は「印刷テクノロジー」をベースに「情報コミュニケーション事業分野」、「生活・産業事業分野」および「エレクトロニクス事業分野」の3分野にわたり幅広く展開しています。
2023年には新中期経営計画を策定し、「経営基盤の強化」を重点施策として推進するなかで、システム基盤のモダナイゼーションに約200億円の投資を行うと発表しました。
TOPPANホールディングスのデジタルイノベーション本部は、業務部門と共に事業・業務を変革していく担い手として、ICTを活用したソリューション提案を目的とした部門です。
特に、私が所属するIT戦略センターはTOPPANグループの持続的成長に向けたIT戦略の策定と、それを実現するリソースの適正化を推進しています。また、グループ全体のIT戦略の実現とシステムモダナイゼーションを推進する機能も担っています。
TOPPANグループでは、各社および各事業に個別最適化された基幹システムを使用していました。そのため、2020年からデジタルイノベーション本部を中心にシステム基盤のモダナイゼーションのプロジェクトを立ち上げ、2021年から本格的にシステムの構築をスタートさせました。「レガシーシステムを残して未来はない」という決意で、我々現場から経営層も含めて一体となってプロジェクトに臨んできました。
私たちはグローバルスタンダードであるSAP社の基幹システム「SAP S/4HANA」※1および経費精算「SAP Concur」※1など複数のシステムを採用しました。
ところが、当プロジェクトの最中にホールディングス化に伴う会社再編という新たな経営課題が発生しました。
そこで、システムを初期導入し、不具合を解消したうえで事業会社にシステムを導入、そこで運用や操作の定着を図った上で会社再編を迎えるという3つのステップでのプランを策定しました。
これにより当初計画を前倒し、わずか3か月という短い期間で、複数システムにおいて数千名のユーザーへの操作教育・運用定着・安定稼働を実現させる必要が生じたのです。
これまではマニュアル作成や社内教育を実施しながら新しい社内システムを導入してきたものの、マニュアルが参照されなかったり、マニュアル自体がアップデートされなかったりと、システムの定着に膨大な時間とコストがかかっていました。
そのため、ユーザー教育や導入後の運用サポートのリソース不足に大きな危機感を持っていました。
また、例えば仕組みの改善といった、本来注力すべき業務への時間を割くことができなくなることで、元々計画していた投資効果の創出が遅れてしまうような負のスパイラルも避けたかったのです。
そのタイミングで、当社のDX担当役員を通じて「テックタッチ」を知りました。
実際に話を聞いてみると、ユーザーの思考に沿ってガイダンスを出せることが分かり、実装イメージも具体的に描くことができました。マニュアルを用意しなくとも、システムに合わせて正しく使えるようになること、またガイダンスを内製化してスピーディーにUIの改善ができる点に魅力を感じ、導入を決めました。
活用方法と効果
「テックタッチ」の活用で、年間約3万時間強の工数削減と低コストでシステムの早期定着を実現し、「Fit to People」を体現
「テックタッチ」を活用し、システム刷新プロジェクトの課題解決を目指しました。特にシステムリリース時は、問い合わせが多発してしまいます。そこに対して、システムを改修するのではなく、「テックタッチ」を用いて解消することでシステム刷新に伴う教育や開発コスト、問い合わせ対応数の削減、システムによる効果創出の早期化といったメリットがありました。また、本プロジェクトを契機に新しく導入する「SAP BTP」※1や「SAP Concur」などにおいては、現場の混乱を避けたいと考えていました。
「テックタッチ」の導入にあたっては、経験豊富なカスタマーサクセス(CSM)の方が専任で伴走してくれました。プロジェクトへの強い帰属意識を持ちながら、柔軟に対応してくれたので非常に心強かったです。
まずCSMの方と一緒に、システムリリース前後の要件整理や設計・ブラッシュアップを行いながら、最適な体制も並行で構築しました。プロジェクトのゴールから逆算し、課題特定からリスク評価、プロジェクトの推進方法などあらゆる提案をしてくれましたし、システムの運用が軌道に乗るまでの長い間、とことん議論できました。途中、さまざまな課題に直面しても親身に相談に乗ってくれたことには本当に感謝しています。
その結果として、コストの削減とシステムの運用定着を早めることができ、3か月間という短期間にもかかわらずスケジュールどおりに前倒しを実現し、システムの安定稼働も実現できました。
複数グループ会社、かつ複数システムという規模にもかかわらず、実はユーザー教育を行っていませんでした。それにもかかわらず、目標を達成できたことには非常に高い評価をしています。
「SAP」のようなパッケージソフトは、その性質上UIや操作性の改善については限界がありましたが、「テックタッチ」によってこの課題を解決することができました。「Fit to Standard」のメリットを活かしつつ、当社の業務設計に寄り添った実装で、従業員一人一人の業務負荷を軽減し、まさに「Fit to People」というべき運用が実現しました。
現在、「テックタッチ」を活用しているシステムは6つあります。 基幹システムの「SAP S/4HANA」、経費精算システムの「SAP Concur」やAIを活用した通勤交通費精算システムの「SAPPHIRE」※1、またTOPPANグループ共通利用システムのマスターデータを管理する「MDM」などがあります。
効果を特に実感したのは、規程や業務ルールが複雑になりがちな経費精算システムやMDMです。システム上で自動処理を行うガイダンスの設置や、グループ会社ごとの業務ルールをひと目で理解できるようにしたり、入力された内容によってガイダンスを出し分けたりすることで、従業員の処理時間や差し戻し数を大幅に削減できました。
各システムを合算すると、年間約3万時間強の時間削減に成功し、コスト面でも期待以上の成果を得ることができました。
実際に、財務部門からは「精算時にこれまでは情報の入力漏れにより、差し戻しが発生していたものが、改善された」といった声をもらいました。
「テックタッチ」のおかげで品質・コスト・納期を維持したままシステム稼働を開始するという当初の目標も達成でき、大変満足しています。
今後の展望
「テックタッチ」をグループ全体のIT戦略のプラットフォームへ
「経営基盤の強化」を加速させるためには、システム活用時のデータ精度や生産性を向上させることが重要だと考えています。
今回、「テックタッチ」は会計領域から導入を進め、効果を強く実感したことで、購買、営業、人事など会計以外の多くの業務領域におけるシステムでも活用を検討しています。デジタルイノベーション本部や業務部門が管轄するグループ共通システムにおいて、データ精度や生産性の向上といった効果を最大化できるのではないかと考えています。
グループの複数システムへの利用拡大に向けては、CSMの方より検討開始から数年後を見据えた効果最大化のためのロードマップと、それを実現させるためのCoE※2と仕組みの確立を提案・主導してもらいました。
まず、複数部門、複数システムをまたぐ大規模なプロジェクトになるため、CoEの重要性を改めて共通認識として持ちました。そして、デジタル変革の価値創出を加速させる船頭として、一緒にCoEを立ち上げました。
CoEを検討した際には、当社のCoEメンバー候補のリソース逼迫や「テックタッチ」の導入経験・知見不足といったボトルネックがあったものの、将来的な当社の自走体制を実現するようCoE人材の育成を含めて、CSMの方に伴走してもらうことで解消しました。
現在、国内のグループ会社のシステムモダナイゼーションが軌道に乗り始めています。今後は欧州の工場システムにおいても「テックタッチ」の採用を検討しており、ここでもシステムの早期運用定着とデータ精度向上が図れるのではと期待しています。
私たちは「テックタッチ」をTOPPANグループのIT戦略におけるプラットフォームとすべく、現時点で10種類以上のシステムへ導入(数万人で利用)を決めています。
各システムのゴールやスケジュールを明確にしながら確実に導入を進め、対象システムの投資対効果の最大化、ひいては中期経営計画にある「経営基盤」の向上につなげていきたいと考えています。
※2 CoE(日本語訳:専門センター)は、特定の分野における専門知識やノウハウを集約し、高度なスキルや能力を発揮する組織またはチームを指す。