人的資本経営の開示はいつから?義務化が求められた理由と実現するポイントを解説

社内システム担当者向け

人材を「資源」ではなく「資本」としてとらえ、その価値を最大限に引き出すことで企業価値を向上させる経営を指す人的資本経営。2023年3月期以降より、大手企業約4,000社を対象に人的資本の情報開示が義務化され、注目を集めていることをご存じでしょうか。企業価値を向上させる経営という点において、今後は大手企業に限らず中小企業も取り組みが必要となる可能性は大いにあります。

本記事では、人的資本経営の概要や開示が求められている理由を見たうえで、開示が望ましいとされる19の項目、開示を行うためのポイントをお伝えします。情報システム部門や人事部門で経営層に近い担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

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人的資本経営とは?

人的資本経営とは?

人的資本経営とは、中長期的な企業価値向上を実現させるための経営のひとつです。これまで人材は、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」という4つの経営資源のひとつとして考えられていました。しかし、人的資本経営においては「ヒト」を資源ではなく資本としてとらえます。「ヒト」の価値を最大限に引き出し、それを企業価値向上につなげようとする経営手法です。

従来、「ヒト」は企業にとって資源であるため、育成にかかるお金や時間はコストでした。しかし、「ヒト」を資本としてとらえる人的資本経営では、育成にかかるお金や時間はコストではなく、「ヒト(資本)」に対する投資として考えます。つまり、いかに人材に対して投資を行い、価値を高められるかが人的資本経営では重視されるのです。

人的資本経営開示の義務化が求められた理由

人的資本経営開示の義務化が求められた理由

経済産業省は人的資本経営の重要性を説き、人材戦略に関する経営層や投資家を含めた関係者の行動変容を促す方策を検討するとして、「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」を開催しました。ここで報告書として2020年9月に発表されたのが「人材版伊藤レポート」です。

そのなかで人的資本経営の重要性が記載されたことが、人的経営資本に注目が集まった最初のきっかけです。そこで書かれた、人的資本経営が必要とされる理由の一例をご紹介します。

“持続的な企業価値の向上を実現するためには、ビジネスモデル、経営戦略と人材戦略が連動していることが不可欠である。一方、企業や個人を取り巻く変革のスピードが増す中で、目指すべきビジネスモデルや経営戦略と、足下の人材及び人材戦略のギャップが大きくなってきている。このギャップをどのような時間軸でいかに適合させていくかが、大きな経営課題となっている。”

引用:人材版伊藤レポート

つまり人的資本経営は、先が見通せない現在において企業価値の持続的成長を実現するために必要な要素であると言えます。

また、海外ではすでに人的資本経営が取り込まれており、対応が義務化されているケースも少なくありません。具体的には2018年に人的資本に関する情報開示のガイドラインとなる「ISO30414」が発表され、そして2020年8月には、米国証券委員会がアメリカの上場企業を対象に人的資本情報開示を義務化しています。

さらに、最近になって投資家が投資判断の指標として次の3つの観点を意識するようになったことも、人的資本経営の開示が求められる理由のひとつです。

  • Environment=環境

地球温暖化や自然資源など、地球環境への配慮があるか

  • Social=社会

人的資本や製品安全性など、社会に対する配慮がなされているか

  • Governance=ガバナンス

企業倫理や公正取引など、法令順守の意識があるか

この3点の頭文字を取ったESG投資が近年、投資家が投資判断をするうえでの重要な基準となっています

そのほか、少子高齢化による労働人口の減少で、これまで以上に人材の重要性が高まっていることも、人的資本経営の重要性を高め、かつ開示が求められるようになっている理由と言えるでしょう。

企業が人的資本経営の開示を行うことのメリット

人的資本経営の開示は、企業にとって多くのメリットが得られます。具体的には、企業が積極的に情報開示に取り組むことで従業員の能力を可視化できること。人材投資により従業員のスキルアップが実現し、生産性向上が期待できることなどです。

また、人材育成に注力する企業ということで企業ブランディングにつながり、投資家に注目されやすくなるのも、人的資本経営の開示を実施するメリットと言えるでしょう。

人的資本経営の開示に求められる19の項目

人的資本経営の開示に求められる19の項目

内閣官房より、2022年8月に「人的資本可視化指針」が策定されました。ここで情報開示が望ましいとされるのは、次の7分野19項目です。

 分野  項目
 1.人材育成  1.リーダーシップ

 2.育成

 3.スキル/経験

 2. エンゲージメント  4.エンゲージメント
 3.流動性  5.採用

 6.維持

 7.サクセッション

 4.ダイバーシティ  8.ダイバーシティ

 9.非差別

 10.育児休業

 5.健康・安全  11.精神的健康

 12.身体的健康

 13.安全

 6.労働慣行  14.労働慣行

 15.児童労働/強制労働

 16.賃金の公平性

 17.福利厚生

 18.組合との関係

 7.コンプライアンス/倫理  19.コンプライアンス/倫理

また冒頭でも触れたように、2023年3月期以降からは、「有価証券報告書」を発行する大手企業約4,000社を対象に、人的資本の情報開示が義務化されました。義務化された項目は次のとおりです。

  • 従業員の状況(人材投資の費用、従業員の満足度など)
  • 女性管理職比率
  • 男性の育児休業取得率
  • 男女間賃金格差

これは金融商品取引法に基づく法定開示であり、虚偽記載をすれば罰則の対象となる可能性もあるため、十分な注意が必要です。

人的資本経営の開示を行うためのポイント

人的資本経営の開示を行うためのポイント

では、実際に企業として人的資本の開示を行うためには、どのような点に注意する必要があるのでしょう。ここでは特に重要となる5つのポイントを解説します。

企業のストーリーを意識する

人的資本経営の開示は、単純に7分野19項目についてどれかを開示すればよいとするのではなく、自社のストーリーを意識することが重要です。例えば、女性向けの商品を製造・販売している企業であれば、育児休業に注力している、女性の管理職率が高いなどを開示することで具体的なアピールにつながります。

情報開示を行う際は数値化を前提とする

例えば「福利厚生が充実している」、「ダイバーシティ経営に積極的に取り組んでいる」といった具体性のない開示では信頼されにくいでしょう。情報は数値化したものを開示することを前提とし、福利厚生利用率〇%、外国人採用率〇%など具体的に、かつ現状と目標の差を明確に示すことが重要です。

自社独自の取り組みをアピールする

人的資本経営の情報開示は、自社のアピールとして有効です。そのため、基本的な情報はもちろん、自社独自の取り組みを開示することが重要です。これが競合他社との差別化につながり、ステークホルダーの関心を引くきっかけとなるでしょう。

中長期的な視点で取り組む

人的資本経営の情報開示は短期的な視点で取り組むのではなく、中長期的な視点での精度向上が欠かせません。開示した情報に対しステークホルダーからフィードバックを受け、開示内容を充実させながら競合他社との差別化や自社独自の強みを見つけ出していくようにします。

全部署が協力して取り組む

人的資本経営といっても人事部や経営層だけで取り組むのではなく、全部署が情報を共有し合い、協力しながら取り組むことが重要です。社外のステークホルダーへのアピールと同時に、社員に対しても自社の取り組み状況を共有することで、取り組みの精度向上につながるでしょう。

記述内容を精査する

アメリカでは、人的資本に関する文章の長さがひと段落程度の企業もあれば、3ページに及ぶ企業も存在します。平均的な長さは1ページで、長ければよいということはありませんが、記述内容はしっかりと精査しなくてはなりません。アメリカでよく記述されている主な項目は次のとおりです。

  • 多様性や公正性に関するもの
  • 従業員のベネフィットに関するもの
  • 従業員の教育機会や人材開発に関するもの
  • 職場の安全性や衛生に関するもの
  • 従業員エンゲージメントに関するもの
  • 報酬体系に関するもの

人的資本経営の開示には社内環境の整備、従業員満足度の向上がカギ

人的資本経営の開示には社内環境の整備、従業員満足度の向上がカギ

人的資本経営とは、人材を「資本」としてとらえ、その価値を最大限に引き出すことで企業価値を向上させる経営を指すものです。今後、人的資本経営の実践と情報開示の動きは加速することでしょう。

人的資本経営の開示を適切に行えば、ステークホルダーに対し、競合他社との差別化や自社の強みをアピールできるようになるため、積極的な取り組みが求められます。ただし、自社の独自性をアピールするには、前提として基本的な分野の強化も欠かせません。そこでおすすめしたいのが「テックタッチ」です。

社内システムの操作方法やチップスを画面に表示するデジタルガイドにより、システムの誤入力・誤操作をなくせるうえ、教育の効率化も実現します。その結果、求められている7分野19項目の「(人材)育成」や「エンゲージメント(従業員満足度)」などの向上が可能です。

基本的な部分に加え、独自性も向上できれば、全体の底上げにつながり、ステークホルダーに対し積極的にアピールしていけるようになるでしょう。人的資本経営の開示を検討している際には、ぜひお気軽にご相談ください。

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