新しいシステムやツールの導入時、あるいは新入社員や中途社員の入社時に、効率的かつ迅速に業務を進めるために欠かせないもののひとつがSOP(Standard Operating Procedures)です。作業手順をコンパクトにまとめて記載されたSOPを参照すれば、不慣れな社員でも悩むことなく業務を進められます。ただし、作成方法や作成のポイントを理解していないと適切なSOPにはならず、業務効率化も果たせません。本記事では、SOPの概要、作成方法、ポイントについてお伝えします。システムやツールの運用管理を行う部門担当者の方はぜひ、参考にしてください。
SOPとは
SOPとはStandard Operating Proceduresの略称で、「標準作業手順書」と訳されます。ここでは、SOPの概要と、マニュアルとの違いについて解説します。
SOPの概要
SOPは、無駄なく安全かつ効率的に業務を進めるための手順を記載したものを指します。もともとは、自動車製造、医療、製薬など安全性が強く求められる業界で使われていました。特に医療業界では、医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)の遵守が法律で義務付けられています。基準にのっとり治験を適切かつ均質に実施するために、SOPの作成は必須でした。
現在では、業務効率化やシステム定着に対し高い効果が期待できる手法として、多くの業種にSOPの作成、運用が拡大しています。
マニュアルとの違い
作業を進める手順を記載したものであれば、マニュアルで事足りるのではと思う人も多いかもしれません。しかし、マニュアルには作業手順のほか、業務を行ううえでの目標やシステムを活用するノウハウ、注意事項など業務全体の枠組みも記載します。業務全体の基本的な理解を促す目的で利用するのがマニュアルです。広範な内容を網羅するあまり、分量が多くなりやすく、十分に活用されにくいという課題があります。
マニュアル活用については以下のお役立ち情報で詳しく説明しています。
なぜ、システムのマニュアルは読まれないのか? (社内システム編) – テックタッチ
これに対し、SOPは業務を進めるための手順のみを詳しく記載したものです。業務の安全性を確保しつつ、効率化やシステム定着を実現する目的で利用します。
SOP活用で得られる効果
SOPを活用することで得られる効果はさまざまですが、代表的なものを紹介します。
業務効率化
SOPには業務を最もスムーズに進めるための手順を記載します。SOPに沿って作業を進めれば正しい手順が浸透するため、迷ったり試行錯誤したりする時間が削減され、無駄のない効率的な業務の実現が可能です。
生産性向上
SOPの活用でミスが削減されれば安全性が高まり、品質向上も実現します。無駄なく良質の商品やサービスを生み出すことができ、生産性向上につながります。
リソース最適化
SOPを活用すれば、上司や経験者が部下や後輩に指導する時間の短縮が可能です。教育や研修に費やす時間を、付加価値を生み出したり、既存の商品・サービスを発展させたりする時間に充当できます。
業務属人化防止
SOPがあれば、誰もが同じ手順で作業を進められるようになり、特定の社員がいないと仕事が進まないといったリスクの軽減につながります。業務の属人化を防止できれば、担当社員の欠勤が生じたときも、業務が停滞することはありません。
SOPの作成手順
適切な手順を踏んでSOPを作成することで、より高い効果が期待できます。ここでは、SOPの基本的な作成手順を解説します。
既存業務プロセスの洗い出しを行う
まず、既存業務プロセスの洗い出しを行い、SOPの作成目的(業務効率化、システムの定着など)を明確化します。そのうえで、どの業務にSOPが必要かを選定します。具体的には、属人化している業務、作業手順が複雑な業務、新たに導入したシステム・ツールを扱う業務などです。
SOPを作成する優先順位を決める
既存業務の課題を明確化すると、やるべきことの優先順位が見えてきます。例えば、次のような状況に合わせて優先順位を決めると、SOPの作成もスムーズに進められます。
- 入社シーズンで部署の入れ替えが激しい
まず新入社員が行う業務を中心にSOPを作成する
- 特定の業務を専任で担当していた社員の異動、退職がある
属人化の可能性がある業務を選定し、該当業務のSOPを作成する
- 新たなシステム・ツールを導入したので、操作に不慣れである
定着化のためにSOPを作成する。システムアップデートによる改変がある場合も同様
SOPを作成するツール、フォーマットの選定をする
SOPを作成するツールについて、WordやExcel、PowerPointなどのOfficeツールを使うのか、あるいはマニュアル作成専用のツールを使うのかを選定します。合わせて、フローチャート式、ステップ式などのなかから、どのようなフォーマットにするかも決定します。「手順の分岐が多いからフローチャート式」「分岐は少ないが手順が多いからステップ式」のように、業務内容に合わせて都度選択していきます。
SOPの利用者を特定する
利用者の技量や理解力に合わせて、SOPに使用する用語や説明方法を変える必要があるため、SOPの利用対象者を特定します。新入社員向けに作成する場合は、できるだけ専門用語は使わないようにしなくてはなりません。逆に中堅以上の社員を対象とする場合、細かい説明は最小限に抑えても問題ないでしょう。
テスト運用を行う
まずは、一部の社員に作成したSOPをもとに作業を行ってもらい、効果を検証します。SOPに課題があれば改善して、問題を解決したうえで本格運用を開始するとスムーズな運用が可能です。
SOP作成のポイント
SOPで成果を高めるには、手順を踏んで作成するほか、いくつかのポイントを押さえることが重要です。ここでは、そのポイントについて解説します。
箇条書きで簡潔に記載する
SOPを読んだ人が手順を追って作業を進められるよう、箇条書きを使い、一文を短く簡潔に記載します。
画像やキャプチャーを使う
文章だけではわかりにくい作業内容については、業務を行っている画像を挿入する、システム・ツールのキャプチャーを活用するなど、視覚的にわかるような構成にします。
現場の声を反映させる
現場業務を知っている社員の声を集め、SOPに反映させることも重要です。ただし、業務の基本を把握していることを前提としたSOPになるリスクがあるので、注意が必要です。未経験者にも理解しやすいよう、対象者(利用者)を意識した内容や表現を心掛けます。
定期的な改善を行う
定期的に効果検証を行い、わかりにくい箇所や伝わりにくい箇所があれば適宜修正します。また、業務で用いるシステム・ツールはアップデートにより操作方法や見た目が変わる場合があるため、アップデート時は必ずSOPの見直しを行いましょう。
デジタルガイドも活用する
システム・ツールを使って行う業務のSOPを作成する際は、システム画面上に指示を出せるデジタルガイドの併用も検討しましょう。デジタルガイドを有効に活用して、SOPと補完し合うことが可能です。
SOP活用で効率化を!デジタルガイドとの併用もおすすめ
SOPとは標準作業手順書の略称で、作業の手順に特化して詳しく記載した説明書のことです。誰もが同じ手順で作業を進められるため、品質向上と同時に、業務効率化や属人化の防止にも高い効果が期待できます。
SOPは、適切な手順を踏んで作成する必要があります。作成目的と対象者を明確化したうえで、SOPで使う用語やフォーマットなどの基本的な設定を調整します。
また、説明はできるだけ簡潔に書くことを心がけ、画像やキャプチャーを使い視覚的にもわかりやすくすることが欠かせません。SOPを確認しながら作業する可能性もあるため、理解しやすく見やすいことが重要です。
システムやツールなどを使った業務のSOP作成では、デジタルガイドとの併用も検討しましょう。SOPで基本的なことを習得し、デジタルガイドで間違いやすい部分を補足するといった方法で、さらなる成果を上げられるでしょう。そこでおすすめなのが、「テックタッチ」です。
WEBシステムやツール上にデジタルガイドを表示する「テックタッチ」を活用すれば、作業から目を離すことなく進められるため、ミスを起こすリスクを低減できます。デジタルガイドはノーコードで作成できます。専門知識が必須ではないため、現場担当者でも作成可能です。SOPの効果を高めるために、「テックタッチ」導入の検討をおすすめします。