システム開発コストは平均250万円程度といわれています。
多くの費用がかかるため、少しでもコストを抑えたいと考えている企業は少なくありません。
費用を抑えるには、開発する目的を明確にし綿密な計画の立案などが必要です。
本記事のテーマは「システム開発コストの削減」です。
この記事を読めば、システム開発における主なコストや高くなる原因、削減する方法と4つのポイントについて理解できます。
システム開発を検討している方、コストを抑えたい方は、ぜひ参考にしてください。
システム開発の主なコストとは
システム開発の主なコストは以下の3つです。開発費を削減するには、まず何にコストがかかるかの把握が欠かせません。
ここからは、システム開発における主なコストについて詳しく解説します。
| 1. プロジェクト管理費用 2. システムの開発費用 3. その他予備費用 |
1. プロジェクト管理費用
プロジェクト管理費用とは、開発のマネジメントと品質の維持に関する費用のことです。
適切なマネジメントをしなければ、開発期間の長期化や品質の低下を避けられません。
具体的には以下の作業に関する費用です。
| プロジェクト管理費用が発生する作業 |
| ・企画作成 ・要件定義 ・工程管理 ・品質管理 ・リスク管理企画作成 |
要件定義を含める場合は開発費全体の20％前後、含めない場合は10％程度が相場です。
システム開発費における「消費税」と表現されるケースもあります。
2. システムの開発費用
人件費や材料費などのシステム開発費用もかかります。とくに、人件費のウエイトは高く、開発費における大部分が人件費に該当します。材料費は、具体的に以下などの項目が含まれます。
| システムの開発費用 |
| ・サーバー費用 ・クラウドストレージ利用料 ・その他外部サービス利用料 |
システム開発には、サーバーもしくはクラウドが用いられます。
自社でサーバーを導入する場合は初期費用、クラウドを利用する場合は月額費用が発生します。
サーバー導入は、ハードウェアとソフトウェアのライセンス購入やセットアップ業務が発生し、費用相場は500万円程度です。
一方、AWSなどのクラウドストレージを利用する場合は、CPUとストレージに応じて料金が決定され、月額5万円からで初期費用を抑えられます。
また、利用規模に応じてコストが決定するため、スモールスタートし活用状況に合わせて利用を拡充すれば、コストを最適化可能です。
他の外部サービスを活用する場合、ユーザー数や利用規模などにより料金が決定されるケースが一般的です。
開発期間によって左右する
システム開発費の主な項目である人件費は「人月単価×人数×開発期間」で決定されます。
人月単価は経験やスキル、役職などに応じて決まり、平均単価の目安は以下の通りです。
| 役職 | 人月単価 |
| プロジェクトマネージャー（PM） | 70万円 |
| プロジェクトリーダー（PL） | 50万円 |
| 大手企業プログラマー（PG） | 60万円 |
| 初級システムエンジニア（SE） | 25万円 |
| 中級システムエンジニア（SE | 45万円 |
| 上級システムエンジニア（SE） | 65万円 |
| 下請け・フリーランスプログラマー（PG） | 30万円 |
人月単価の低いエンジニアの利用や人数の減少によるコスト削減は、開発期間の長期化につながり、システムの質を下げる可能性があります。
開発期間が長期化すれば、コスト増加につながるため注意が必要です。
2. その他予備費用
その他予備費用には、以下など開発に関して生じるさまざまな費用が該当します。
| その他予備費用 |
| ・開発環境のオフィス賃借料や光熱費 ・機器のレンタル料 ・交通費 ・消耗品費 ・通信費 ・予備費用 |
広さや立地などにより異なりますが、オフィスを借りる場合の費用は、開発人数が10名であれば月額20万円程度です。
光熱費や交通費は月5万円程度、消耗品費と通信費が月3万円程度で、開発人数が10名程度であれば、約30万円が相場料金です。予備費用は、何かアクシデントが発生した際に対応するためのリスク費用です。
また、開発後も保守管理や維持などにコストが発生します。
例えば、設備をリースやレンタルする場合は、使用料・リース費がかかります。
開発コストが高くなる原因
開発コストが高くなる主な原因は以下の3つです。順に解説していきます。
| 1. 開発期間の延長 2. 対応デバイスによるコスト 3. テストの実施 |
1. 開発期間の延長
前述の通り、システム開発費の多くが「人月単価×人数×開発期間」で算出される人件費です。開発期間が延びれば、その分のコスト増加は避けられません。
開発期間が延長してしまう原因として以下の理由が考えられます。
| 開発期間延長の原因 |
| ・機能の追加や変更 ・仕様変更 ・想定しなかったバグの発生 |
機能の追加や変更の主な原因の一つは、要件定義のあまさです。
要件定義は設計や実装作業の前工程で実施され、解決したい課題やシステム開発の目的を明確にするとともに、必要な機能や性能を整理する作業です。
具体的には、以下の項目を検討します。
| 項目 | 概要 |
| システム要件 | 現状の業務フローを整理し、どこをシステム化するかを検討します。全てをシステム化すれば、予算オーバーや開発期間の長期化を招くケースも少なくありません。システム化するところと併せ、しないところの決定も重要です。システムを開発する目的から、優先順位づけの実施が大切です。 |
| 機能要件 | システム要件で決定した方向性にもとづき、どの機能を実装するか決定します。具体的には、以下の項目を定めます。 システムの構造・機能 ・処理可能な内容 ・帳票要件 ・データの種類 ・バッチ要件 |
| 非機能要件 | システム要件や機能要件など、機能面以外で検討が必要な要件全般で、システムのパフォーマンスや拡張性なども含まれます。具体的な非機能要件での検討・決定項目は以下の通りです。
1. 可用性（アベイラビリティ）：システムを継続的に利用するための運用スケジュールや障害時・災害時の稼働目標、ダウンタイムなど 2. 性能・拡張性：システムの性能や将来的拡張に関連する特性を見通した性能目標業務量の増加・変化への対応力など 3. 運用・保守性：システムの運用および保守サービスに関係する要件で、運用中の稼働レベルやトラブル発生時の対応監視手段、バックアップ方法など 4. 移行性：既存システムのデータ資産などの移行に関係する、スケジュールや方法、対象データなど 5. セキュリティ：システムの安全性に関連するログインやアクセス制限、利用制限不正アクセス防止方法など 6. システム環境・エコロジー：システムの設置環境および、騒音CO2排出量・消費エネルギーなどのエコロジーに関連するもの |
| 技術要件 | 技術要件では、以下などを検討します。
・システムの基盤となるプラットフォーム 非機能要件で検討されるケースもありますが、分けた方が後日確認しやすくなります。 |
| その他要件 | 知的財産権への抵触や個人情報保護法、輸出禁止技術の活用など、法律に関する要件を確認・検討するケースもあります。 |
要件定義があまければ、機能の追加や変更が起こりやすくなります。
また、開発ミスでバグなどが起これば、作業のやり直しによる期間の延長とコストの増加につながります。
2. 対応デバイスによるコスト
対応デバイスごとにシステム開発を行えば、開発費が増大します。
システムを利用するシーンは複数あり、以下などのさまざまなデバイスで活用するケースがあります。
| 各デバイス |
| ・パソコン ・スマートフォン ・タブレット |
上記デバイス全てに個別対応すれば、その分開発における手間の増加と期間の長期化を招き、コストが増えます。
コストを抑えるためにパソコン用のシステムを開発し、その他のデバイスでも利用する方法がありますが、視認性や操作性の低下をまぬがれません。
最近は、データや画面、コンテンツなどをCMS（コンテンツマネジメントシステム）で一元管理し、アクセス時のデバイスに合わせたレイアウト変更が主流です。各デバイス用の開発が不要となるため、コストを抑えられます。
3. テストの実施
システム開発の最終工程では、想定通りに動作するかや、設計書通りの性能・機能を備えているかなどの検証をします。
エンドユーザーが実際に使用するシーンを想定し、さまざまな観点からテストを行えば、開発環境では発見できなかった不具合・バグを発見可能です。
また、システム全体を見据えハードウェアも含めた包括的なテストにより、ハードウェア環境に関する不具合も検出できます。
具体的には、開発前に作成した要件定義書や仕様書をもとに、以下などのテストを実施します。
| 項目 | 概要 |
| 機能テスト | 求める機能が実装されているかを検証するものです。機能面に関する詳細な部分をチェックする工程で、機能だけでなくUIのテストを実施します。 |
| 性能テスト | データ処理能力や応答速度、データ容量などを検証するものです。エンドユーザーの操作における快適性を左右するため、実際の環境でシビアに行います。システムテストの中でも終盤の実施が一般的です。 |
| 負荷テスト | システムが不具合を起こさず、どの程度の負荷に耐えられるかを検証するものです。高性能な機能ばかりでは、システムが負荷に耐えられずオーバーフローする可能性があります。システムが不具合を起こさず、どの程度の負荷に耐えられるかを検証するテストは重要です。
|
| ロングランテスト | 事前に決めた期間内に連続で稼働させ、不具合が発生しないかを検証するものです。短期的には稼働できても、長期間稼働できるとは限りません。 |
| セキュリティテスト | 情報漏れや個人情報の流出は大きなニュースとなり、経営に影響を与えるケースも少なくありません。以下などが情報漏洩の原因となるため、複数回テストを実施し問題がないかを確認します。
・設計ミス |
| ユーザビリティテスト | システム改善を目的に、実際にエンドユーザーに利用してもらい、以下を検証します。 ・操作感 ・UI／UX ・その他の課題 |
| 回帰テスト | プログラム変更後に修正が完了しているかを確かめるものです。システムの規模が拡大するほど、バグや不具合が発生するリスクも増えるため、回帰テストの重要性が高まります。ただ、回帰テストを必要以上に行えば工数が増え、非効率化します。事前の実施するパターンとタイミングの設定が欠かせません。
|
上記の通り、テストの実施項目は多数あり、システム開発における多くの部分を占めます。
とくに、品質を求めれば求めるほど工数は増加するため、事前に品質基準を定め、テストの目的や実施規模などの明確化が必要です。
また、テストツールを利用し、自動化・最適化すれば、コスト削減効果が期待できます。
システム開発のコストを削減する方法と4つのポイント
システム開発のコストを削減する方法と4つのポイントは以下の通りです。それぞれについて解説します。
| 1. システム開発する目的を明確にする 2. 計画を綿密に立てる 3. ノンコア業務を外注する 4. 自社内でできることは社内でする |
1. システム開発する目的を明確にする
開発に取り組む前、目的を明確にすればプロセスがブレないため、無駄が生じにくくなります。
また、不要な機能の実装や品質の追求による手間を抑え、コストの削減が可能です。
開発途中での追加作業や大幅な修正も避けられます。
目的を明確にすれば、どのような機能が必要かが明確になり、工数やスケジュールも定めやすくなります。
2. 計画を綿密に立てる
解決したい課題や目的を明確にした後に、実装する機能・開発スケジュールなどの計画を綿密に立てますが開発計画に固執し過ぎてはなりません。
とくに、大規模な開発を行う場合、期間が長く途中で新たなアイディアなどが出るケースがあります。
固執し過ぎては、かえって時間がかかるケースがあるため、柔軟な対応が必要です。
計画を立てる際はコンセプトを守りつつ、万が一の事態に備えるバッファが重要です。
3. ノンコア業務を外注する
誰がやっても問題ないレベルのノンコア業務であれば、外注の活用も大切です。
全てを自社内で完結させる必要はありません。
ノンコア業務を外注すれば、負担を減らし本当に大切なコア業務に集中できます。
とくに、残業が発生しているケースであれば、外注によるコストの削減も可能です。
4. 自社内でできることは社内でする
近年はシステム開発におけるアウトソーシングが主流ですが、自社内でできる業務の社内実施も重要です。
外注すればするほど、その分コストが発生します。
また、外注する際には業者との打ち合わせが必要で、その手間やコストもかかります。
自社内で巻き取れる工数は極力巻き取ることが重要です。
簡単なプロダクト改修なら「テックタッチ」
システム上にデジタルガイドやツールチップを表示できるテックタッチは、簡単な改修をノーコードで対応可能です。
簡単なUI／UXの改修であれば、ビジネスサイドでもノーコードで改修を行えるため、顧客の声を即時システム上に反映できます。
社内に優秀なIT人材を確保する必要はありません。
改修費用の削減やUX改善のスピード向上が期待できます。
まとめ
この記事では、システム開発における主なコストや高くなる原因、削減する方法と4つのポイントについて解説しました。
システム開発コストは平均250万円程度といわれており、多くの費用がかかります。
費用を抑えるためには、開発する目的を明確にし綿密な計画の立案などが必要です。
また、どの業務をアウトソーシングするか、社内実施するかの見極めも大切です。
近年は、専門知識がなくても簡単に改修可能なノーコードツールが豊富なので、こうしたツールの活用によるコストや実装までの時間的リソースの削減を検討してみるのも有効でしょう。
