アップセル・クロスセルとは?実施のメリットと成功のポイントを解説

SaaS事業者向け

企業が継続的に売上を向上させていくうえで重要なポイントとして、「新規顧客開拓」と「既存顧客維持」があります。
どちらも事業を安定的に展開するために欠かせない要素です。

特に定額制サービスを提供していることが多いSaaS事業においては、顧客に自社の商品・サービスを継続利用してもらうことがポイントとなるため、既存顧客維持の重要性が高くなっています。
そこで今回は、既存顧客維持を実現させるために欠かせない施策であるアップセル・クロスセルについて、その概要や実施のメリット、成功のポイントを解説します。

アップセル・クロスセルとは?

企業が継続的な売上向上を実現させるために欠かせない施策となる、アップセル・クロスセルの概要を説明します。

アップセルとは?

アップセルとは、商品・サービスの購入を検討している顧客、すでに購入した顧客に対し、より上位の商品・サービスを購入してもらうために行う働きかけを指します。
例えば家電量販店で、液晶テレビの購入を検討している顧客に対し、液晶テレビより高額になるものの、画面の性能がより高い有機ELテレビを勧めて顧客単価を向上させる営業手法がアップセルです。

SaaS事業者におけるアップセル例は、システムの無料版を使用している顧客に有料版への契約を促すことや、有料の機能限定版を契約している顧客に、すべての機能が使える完全版へ移行を促す施策などがあります。

クロスセルとは?

クロスセルとは、商品・サービスの購入を検討している顧客、すでに購入した顧客に対し、関連する別の商品・サービスも併せて購入してもらうために行う働きかけを指します。
例えば家電量販店で、一眼レフカメラの購入を検討している顧客に対し、さらに機能を高める望遠レンズの追加購入を勧めて顧客単価を向上させる営業手法がクロスセルです。

SaaS事業者におけるクロスセル例は、営業支援システムを契約している顧客に、顧客管理システムの追加契約を促す施策があります。
両者を連携して情報共有することによって情報分析の精度を上げたり、より顧客のニーズに合ったアプローチを実現できます。

アップセル・クロスセルが求められる理由

アップセル・クロスセルは、主に既存顧客維持や既存顧客からの売上向上のために行われる施策です。
新規顧客を獲得することも重要ですが、新規顧客を獲得するためには広告料や見込み客を呼び込むためのコンテンツ作成など、さまざまな手間やコストが発生します。

しかし既存顧客なら、すでに自社商品・サービスを知っているため、このような施策を実施する必要がなく手間やコストを抑えることが可能です。そのため、既存顧客をターゲットにしたこの施策が重視されているのです。
実際にマーケティングの世界では、新規顧客獲得にかかるコストは既存顧客維持のコストの5倍かかるという「1:5の法則」が知られています。さらに、少子高齢化の影響もあり、多くの業種で人材不足が慢性化しているなかで、新規顧客開拓にかけられる人材不足に悩む企業も少なくありません。

さらに、定額制のSaaS事業の場合、毎月・毎年の契約料金の設定が抑えられている傾向です。
そのため、新規顧客を獲得したとしても、長く契約を継続しないと顧客獲得にかけたコストを回収することが難しくなっています。アップセルやクロスセルによって契約料金の引き上げができれば、より早く新規顧客獲得にかけたコストを回収できます。

これらの理由から、より効率的に利益を上げる手段として、既存顧客維持が重視されており、その施策としてアップセルとクロスセルが求められているのです。

アップセル・クロスセルを実施するメリット

既存顧客維持の施策として、アップセル・クロスセルを重視する企業が増加しています。
では、これらの施策を実施することで企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

マーケティング・営業活動の効率化

一般的に自社商品・サービスを購入してもらううえでもっとも手間とコストを要するのは、認知を得るためのマーケティング、営業活動と言われています。
新規顧客獲得のために広告で商品の効果を訴求しても、その商品のことをまったく知らない人に興味を持ってもらうことは簡単ではありません。
そのため、段階的に顧客との接点を増やし、まずは時間をかけて自社商品・サービスの認知を得ていく必要があります。

新規顧客への営業活動と比較し、アップセル・クロスセルは既に認知を得ている既存顧客が相手です。
そのため、認知を得る段階(ステップ)を踏まずにマーケティング、営業活動が可能になり、大幅な効率化が実現します。

顧客単価の向上

アップセル・クロスセルの成功により、顧客単価が向上します。
特にSaaS事業の場合、アップセル・クロスセルが成功すれば、月単位、年単位で顧客単価の向上が可能です。
その結果、顧客が企業にもたらす収益を示すLTV(顧客生涯価値)の大幅な向上にもつながります。

LTVとは、ひとりの顧客から将来的にどれだけの利益を得られるかを見るものです。
例えば、前期は月額1万円で契約していた顧客がアップセルにより上位プランの月額3万円の契約となれば、月単位で2万円、年単位では24万円も顧客単価が向上します。

顧客満足度の向上

SaaS事業においてアップセル・クロスセルは、「より多くの成果を上げたい」「提供を受けているサービスの質や精度を高めたい」といった顧客の希望に寄り添った提案をすることで実現する手法です。
例えば、上位プランに移行することでサービスの品質が向上した、購入できる追加商品の幅が広がったなど、最終的には顧客満足度の向上につながります。

アップセル・クロスセルを成功させるためのポイント

SaaS事業では、顧客が商品・サービスの買い換え検討を始めた際や、契約更改のタイミングでアップセル・クロスセルを実施すると効果的とされています。
しかし、そもそも顧客との関係性構築ができていなければ、アップセル・クロスセルは成功しません。

アップセル・クロスセルの成功率を上げるために、どのように顧客との関係性を築いていくべきか、そのポイントを説明します。

カスタマーサクセスの実施

SaaS事業では、アップセル・クロスセルの提案ができるのは、顧客が自社商品・サービスを使いこなせていることが前提です。
そこで、まずは自社商品・サービスを使いこなすための支援策として、カスタマーサクセスを実施します。

カスタマーサクセスとは、顧客の成功を支援する取り組み全般のことです。
そのなかでも、自社商品・サービスの導入から活用開始初期に実施するオンボーディングは重要な施策となります。
顧客企業における初期段階の課題や疑問を解消し、商品やサービスのスムーズな導入をサポートできるからです。

カスタマーサクセスについての詳細は「SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスとは?実行時の注意点や成功のポイントを解説」をご覧ください。
オンボーディングについての詳細は「SaaSビジネスに欠かせないオンボーディング!実施方法とポイントについて解説」をご覧ください。

DAP(デジタルアダプションプラットフォーム)の活用

オンボーディングを行い、自社サービスが顧客の業務に定着した状態のことをデジタルアダプションと呼びます。
デジタルアダプションの実現に効果を発揮するのが、デジタルアダプションを推進するツールであるデジタルアダプションプラットフォーム(DAP)です。

デジタルアダプションについての詳細は「DXの実現に欠かせないデジタルアダプションとは?実現による効果と課題を解説」をご覧ください。

自社商品、サービスを使いこなせるようにするサポートには、顧客向けの使い方講習や勉強会などがありますが、それには人的コストが発生します。
企業によっては、人材の確保が困難な場合もあるでしょう。特にコロナ禍の感染症対策として、対面でのサポートが難しい状況においては、システムやツールの活用が有効です。

例えばDAPのひとつに、システムを利用する際、使い方をリアルタイムにナビゲーションするツールがあります。
このツールを搭載すれば使い方講習や勉強会などの必要性を低減できるため、人的コストを抑えつつシステム定着を実現させることが可能です。
システム定着が実現すれば、顧客のサービス活用が活発になり、アップセル・クロスセルへつながる可能性が高まるでしょう。

デジタルアダプションプラットフォームについての詳細は「デジタルアダプションプラットフォームとは? そのメリットと導入時の注意点」をご覧ください。

NPS(顧客推奨度)の実施

契約更改をせずに自社商品やサービスの利用をやめてしまう顧客の多くは、その理由を明示することなく解約に至ります。
そのため、SaaS事業者側は何を改善すればよいかわかりません。これを回避するには、常に顧客の声に耳を傾け、顧客の課題点を把握し、自社商品・サービスの改善を行う必要があります。

顧客の声を聞く方法としては、顧客満足度アンケートやインタビューなどがありますが、なかでもおすすめの方法は、NPS(顧客推奨度)アンケートの実施です。
NPSは、自社商品やサービスの満足度を聞くものではなく、自分以外の人に勧めたいかどうかを聞き、推奨度を調べるものです。

多くの場合、顧客満足度は現時点の評価であるのに対し、NPSは、自分以外の人に勧めたいかどうかという「未来の行動」に対する評価を行います。
そのため、アップセル・クロスセルを成功させるには、現時点での満足度を見るよりも、将来的な活用度を見極めることができるNPSのほうがより現実的といえるでしょう。

ダウンセルの検討

アップセル・クロスセルは有効な営業手法ではありますが、アピールしすぎたりアプローチを誤ったりすると、顧客との関係性が悪化する懸念があります。
顧客満足度が高くても、価格が高くなるのであれば必要ないと考える顧客も少なくありません。

そこで、状況によってはより下位の商品・サービスを提案するダウンセルを行うのもひとつの方法です。
ダウンセルにより契約終了による関係断絶を避け、自社商品・サービスの良さを理解してもらえれば、その後、アップセル・クロスセルを提案できる可能性は十分にあります。

アップセル・クロスセルの成功は既存顧客との関係性強化がカギ

新規顧客獲得が難しくなっているいま、企業が継続的な売上向上を図るためには、既存顧客維持が重要な要素となっています。
そのための施策として欠かせないのが、アップセル・クロスセルです。

アップセル・クロスセルは既存顧客の単価を向上させるため、新規顧客獲得にくらべ、効率的に成果を上げられる施策といわれています。
しかし、ただ提案すればアップセル・クロスセルが成功するわけではありません。
SaaS事業においては、自社商品・サービスを活用することで成果を上げられるという信頼感を得られなければ、再購入・契約更新は難しいでしょう。

そこでポイントとなるのが、既存顧客との関係性強化です。
SaaS事業者は、常に顧客の声に耳を傾け、課題解決に積極的に関与することが求められます。
こうした営業活動に有効なのが、カスタマーサクセスの実施やDAPの活用です。商品・サービスの定着や効果的な活用を実現する手段として、アップセル・クロスセルに大きく貢献します。

テックタッチでは、システムの操作をリアルタイムにナビゲーションする機能を持つDAPを提供しており、 システム上でNPS計測も可能です。
これらの機能は効果的なアップセル・クロスセルの実施に貢献します。

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