一般的に、EX(従業員体験価値)とは、従業員の満足度や幸福度のことで、EXを高めることを目的とした取り組みがEX向上やEX施策と呼ばれます。
少子高齢化による労働人口の減少や、終身雇用制度が崩壊しつつあることで人材不足は慢性化しており、EX向上は人材流出を防ぐために欠かせない施策のひとつです。
また、EX向上の効果は人材流出防止だけに限らず、CX(顧客体験価値)向上の効果も期待できます。
では、なぜEXの向上がCXの向上につながるのでしょう。今回は、EXの概要や向上のメリットを解説しつつ、CXとの関連性やEX向上のポイントをお伝えします。
EXやCXとは?
EXの一般的な定義と、EXと似た用語であるCXについて解説します。
EXの定義とは?
EXとはエンプロイーエクスペリエンス(Employee Experience)の略称で、「従業員体験価値」と訳されるほか、「従業員エクスペリエンス」とも呼ばれる概念です。
EXにおける 価値には、福利厚生や人間関係といった職場環境、待遇などが該当します。
また、報酬や就労条件だけでなく、仕事によって得られる充足感や満足感、上司や同僚からの評価といった精神的な体験も含まれます。
EXの対象期間は、従業員として就業している期間だけではありません。
入社前の求職活動の段階から退職に至るまでの間で企業から得るすべての体験が対象であり、主に次の5段階に分けられます。
EXの5段階
人材募集
企業と初めての接触となる人材募集での体験は、企業の印象を形成する土台となります。求人広告の内容や応募から面接、内定承諾に至るまでの時間や対応などが重視されます。
オンボーディング
入社から仕事に慣れるまでの段階での体験です。この段階では、研修や勉強会が実施され、社内ルールの把握や業務で使用するシステム・ツールの操作方法の習得など、自身の職務や役割を把握するための体験が欠かせません。業務への意欲を引き出す段階でもあります。
能力開発
オンボーディング段階をへてから業務に従事し、退職に至るまでのすべての期間で継続して行われ、プロフェッショナルとして独り立ちを目指す段階です。従業員それぞれが自身の役割を把握し、スキルアップを図ることで成長をするためのすべての体験を指し、意欲を維持しつづけるためにも重要な段階です。
定着促進
それぞれのスキルアップを果たし、自身のポジションを確立する段階です。企業とのつながりを強化し、生産性を高める意識ややりがいを持てるよう、リーダー研修を受ける、プロジェクトチームに抜擢するといった体験が求められます。
退職
定年による退職以外では、必ず理由を確認することで離職率の低下、退職要因の改善を実施し、より良いEXの実現を目指す必要があります。なお、退職後もリファラル 採用、口コミなどがEXの測定値に影響する可能性があるため、退職手続きにおいてもEXを意識し、適切な対応を行います。
CXとは?
CXとは、カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)の略称で、「顧客体験価値」を意味する言葉です。
自社商品・サービスの認知段階から購入、アフターサービスに至るまでの顧客との接点において、良質な体験を提供するための取り組みを指します。
※CXについてより詳しくは、「CXとは?向上に向けた取り組みやポイントを紹介」をご覧ください。
CXを向上させるにはさまざまな施策が求められますが、EX向上も重要な施策です。
BtoBではセミナーや商談の質、BtoCでは店舗の雰囲気や店員の対応などにおいて、顧客に良質な体験を提供しなければなりません。
そのためには、従業員が業務にやりがいを感じ、意欲を持っていることが 重要です。そのため、EXの向上はCXにも深く関与しているのです。
EXを向上させることのメリット
従来、多くの企業では顧客を重視することが一般的であり、従業員の満足度や充実感といったことは後回しにされるケースも珍しくありませんでした。
しかし、現在ではそれも見直され、EXの向上は顧客満足度と同様に重視されています。なぜならばEXを向上させることで、企業に次のようなメリットがあると考えられるからです。
人材の流出防止
従業員が働きながら高い充足感や満足感を得られるようになれば、離職率の低下が期待できます。その結果、人材流出の防止にもつながるでしょう。
優秀な人材の獲得
求職・転職活動にインターネットが活用されるのがあたりまえとなった今、企業の情報は容易に開示されます。
そのため、良い評判も悪い評判もすぐに拡散されます。
EXを向上させて、従業員の充足度や満足度が高い企業としての評判が拡散されれば、優秀な人材が集まる可能性が高まるでしょう。
CXの向上
EXを向上させ、従業員一人ひとりが高いスキルを習得すれば、顧客に対しても質の高いサービスを提供できるようになり、CXの向上にもつながります。
また、上述した人材の流出防止や優秀な人材の獲得も、顧客へのサービス向上(商品品質やカスタマーサービスの質など)につながるため、総じてEXの向上はCX向上に重要な影響を与えているといえるでしょう。
EXを向上させるための取り組み、ポイント
EXを向上させるには、どのような取り組みを行う必要があるのでしょう。ここでは、具体的な取り組みや実施のポイントについて解説します。
社内アンケートの実施
現状把握のため、社内アンケートや面談などを行います。従業員の声をよく聞いて課題を認識し、改善に役立てます。
聞き取り内容を精査して隠れた課題を発見することや、従業員の本音を引き出す工夫をすることが重要です。
コミュニケーションの活性化
1on1面談 や、チャットやグループウェアなどのツールを活用して、コミュニケーションを活性化させる施策を実施します。
また、少人数向け会議室であるハドルルームや自然と人が集まりやすいオフィスカフェの設置など、すぐにミーティングが行えるオフィスレイアウトもコミュニケーション活性化に有効です。
職場環境の改善
テレワークや時短勤務などの多様な働き方の実現、ワークライフバランスを実現しやすい福利厚生の提供など、社内アンケートの結果も踏まえ、幅広く職場環境の改善を検討します。
オンボーディングの徹底
厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します」によると新卒3年目までの離職率(31.5%、2019年大学卒)が高いため、早い段階で業務を覚えて、意欲的に働けるようにするため、能力開発段階に至るまでのオンボーディングを徹底することが重要です。
ただし、オンボーディングは指導者にかかる負担も少なくありません。
そこで、業務で使用するWEBシステムやツールに関して、画面上に操作方法やポイントを直接表示させられるデジタルガイドの活用がおすすめです。
マニュアルの準備や勉強会の実施などの工程を省いてシステム・ツールの利活用を可能にします。
システムやツールへのデジタルガイドは、いち早く従業員が一人前になるのをサポートするでしょう。
CX向上にはEX向上への取り組みも重要
従業員体験価値を意味するEXは、これまでCXほどは重視されていませんでした。
しかし、EXの向上により従業員のスキルが上がれば、それだけ顧客に提供するサービスも向上するため、CXの向上にもつながるとして注目されるようになっています。
≫≫ CXの成功事例を紹介!失敗を回避するための注意点も解説
また、EXの向上は離職率の低下や優秀な人材の獲得を実現し、採用・教育コスト削減にもなるため、積極的に取り組む企業が増加しています 。
EXの向上の重要性を理解しても、何から手をつけてよいか悩むケースも多いのではないでしょうか。
社内アンケートやコミュニケーションの活性化、オンボーディングの徹底など、さまざまな方面からの取り組みがあります。
重要度や優先順位を見極めながらEX施策に着手していきましょう。
なかでも定着化につながるオンボーディングは、重要度が高いです。
というのも、従業員が成果をだすには今や業務ツールの活用が不可欠だからです。
システム操作に関するオンボーディングは、マニュアル作成や勉強会の実施などの工程が多く、重要とわかっていても施策を講じにくいかもしれません。
しかし、従業員が業務に必要なシステム・ツールを正確に扱えるようになれば、業務スピードが上がり、できることも増え、満足感ややりがいを持てるようになります。
成長を実感できれば、さらなるスキルアップへの意欲向上も期待できます。結果として、早期離職のリスク軽減にもつながるでしょう。
そのような場合におすすめしたいのが、「テックタッチ」の活用です。
「テックタッチ」では、WEBシステム・ツールの画面上に操作方法や社内での申請ルールなどが直接表示することができるため、早い段階で正しい操作方法でシステムを使いこなすことが可能です。
また、デジタルガイドの作成はノーコードで行えるため、社内にエンジニアがいない場合でも対応可能です。
EXの向上とともにCXの向上を実現させる施策のひとつとして、ぜひ、「テックタッチ」の活用をご検討ください。