システム改修や機器のリプレース遅れ、担当できる人材不足など、「開発リソースが不足している」
状況に頭を悩ませている企業も少なくありません。開発リソースが不足していると、社員の生産性が低下するだけでなく、競争力の強いサービスがつくれず企業としての成長力を失ってしまうリスクもあります。
また、開発リソースの不足を放置していると、個々の社員に大きな負担がかかり、モチベーションの低下だけではなく、担当者の離職で人材不足が更に加速してしまう悪循環に陥る可能性も否定できません。
この記事では、リソースが不足する原因から及ぼす悪影響、開発リソース不足の解決方法まで解説します。
開発リソースとは
リソースとは、資源や財源を表す言葉です。ビジネスシーンでは「人材・資金・モノ・時間」などの経営資源を指します。
一方で「開発リソース」とは、開発プロジェクトにおいて用いられる概念です。主にソフトウェアやアプリ、システム開発に必要な存在ですが、一概に開発リソースと言ってもその種類はさまざまです。
「人的・資金・モノ・情報・時間」などの総称が開発リソースとされており、プロジェクトの成功を左右する重要な要素として知られています。具体的には以下のとおりです。
開発リソース |
人的リソース システム開発を進める人間のこと。プロジェクトを推進する担当者や外部コンサルタントなど資金リソース システム開発を進めるのに必要なお金のこと。人件費や機材費など物的リソース システム開発に必要な機材のこと。インフラ設備やソフトウェアなど情報リソース システム開発に利活用する情報のこと。データや知識、専門技術、市場情報など時間リソース システム開発に必要な期間のこと。スケジュールやアサインできる人時生産性など |
開発リソースの不足が組織に及ぼす影響
企業内の開発リソースが不足してしまうと、「離職率の増加」「生産性の低下」「競争力の低下」「スケジュールの遅延の可能性」などさまざまな悪影響を及ぼします。改善するための取り組みを進めなければ、売上や利益の減少に直結する恐れがあるのも事実です。
ここでは、開発リソースの不足が及ぼす影響についてそれぞれ解説します。
離職率の増加
開発リソースが不足すると、離職率の増加を招く恐れがあります。なかでも開発にアサインできる人的リソースが不足することは、裏を返せば一人あたりの工数・負担増加に繋がります。開発担当者のストレス増加やモチベーション低下を生み出し、結果として離職率に影響するのも事実です。
開発への人的リソースが不足していると、期間内にプロジェクトを完成させようとするため、長時間労働が常態化するシーンも珍しくありません。そのような労働環境では、離職率が増加する傾向にあります。加えて、開発に割り当てるべき資金・物的リソースが不足していることも離職率の増加を招く要因のひとつです。
適切なツールやシステム導入によって開発環境の改善が難しく、非効率な作業環境によるモチベーション低下から離職率増加に影響します。
生産性の低下
人的リソースなどの開発リソースが不足すると、生産性の低下に繋がります。製造業に例えると、今までは1時間に50もの品を製造していたのに、人的リソース等の不足で1時間に20品しか製造できなくなったという事例も珍しくありません。人材不足が叫ばれる昨今では、単に人手を増やすことだけでなく、作業フローを効率化する取り組みが重要です。
近年ではDX化によって新しいITツールを取り入れ、生産性を高める取り組みも多くなっています。
一方で、ITツールが導入されていない環境下では、特に非効率的な作業になりがちです。時代遅れのPCスペックなどの生産性の低い環境を放置していると、作業負担が増えて担当者が疲弊してしまい、生産性の低下が加速する可能性もあります。
競争力の低下
新しい技術・研究開発を進めるには、定期的な投資によって集めた情報を活用し、企業としての価値を高める必要があります。しかし、人的・資金などの開発リソースが不足すると、満足したプロダクト作りができず、技術力を高めていくことが難しくなります。
情報リソースが不足すると、イノベーションを起こす機会を逃してしまい、市場から見た企業・商品の魅力も薄れてしまいます。継続的な機材・人的投資による最新技術への適応など、技術面の充実を目指す情報リソースの確保は必要不可欠です。
スケジュールの遅延の可能性
プロジェクトに必要な開発リソースが不足すると、計画通りに進行することができず、結果としてスケジュールに遅延が生じる事例も多くなっています。実際にゆとりをもたせたスケジュールでも、「なかなか予定通りに進まない」と頭を悩ませる方も多いでしょう。滞りなくスケジュールを進めるには、人員や技術だけでなく、最適化されたフローなどの環境整備が重要です。
また、一部の業務がボトルネックになる可能性も踏まえて、余裕をもたせた開発リソースの割当が重要です。例えば、ソフトウェアの重要なテスト作業に必要な人材が不足していると、リリース直前にバグ修正が遅れ、プロジェクトのローンチが遅延してしまうリスクも否定できません。
プロジェクトの初期から正確なスケジュールの構築は難しいため、あとになって柔軟な予定変更・遅延に対応できるよう、開発には十分な人的リソースの確保が求められます。
開発リソース不足に陥る原因
近年では、さまざまな業界で開発リソースの不足問題が叫ばれています。開発リソース不足に陥る原因として、「少子高齢化によるIT人材の不足」「開発環境の不充実さ」「不適切な業務方針」などが問題視されています。
それぞれどのような開発リソースが不足しているかによって、対策すべき内容も異なる点に注意が必要です。ここでは、開発リソース不足に陥る根本的な原因を解説します。
少子高齢化によるIT人材の不足
少子高齢化により、IT業界全体で人材が不足しています。なぜなら、労働力人口の総数が減少していくと同時に、技術職の需要増加が進行しているからです。高度な技術を要する開発プロジェクトでは、経験豊富な技術者の不足が顕著になります。
そのため、若手の育成と技術習得の機会提供が重要視されていますが、IT人材に対する十分な教育・研修の機会を、企業が自社だけで提供することは難しくなっており、十分なスキルを持ったIT人材の不足は今後ますます加速すると予想されています。
平成28年に行われた経済産業省の調査によると、2030年には40〜80万人もの規模で人材が不足すると予測されています。
資金・物的リソースの不足
システム開発に割り当てられる予算が不足している場合、人件費だけでなく、ハードウェアやソフトウェアの購入費用・外部サービスの利用費用などにも悪影響を及ぼしかねません。資金や物的リソースが不足した結果、アサインされたIT人材のモチベーションや、会社全体の生産性低下に繋がります。
環境に起因する開発リソース不足を改善する方法として、ノーコードツールを活用する方法があげられます。ノーコードツールとはコーディングをせずともシステムを改修できるツールで、多少の変更であればIT人材のリソースを割かずに解決することもできます。
例えばノーコードツールの「テックタッチ」では、簡単な改修をノーコードで作業できるため不慣れな人でもシステムを調整できます。システムの誤入力・誤操作を削減できるUI/UXをIT人材以外の方でも実装できるため、IT人材に負担をかけずに生産性向上・業務効率化を実現できるのが魅力です。
IT人材がコア業務に注力しやすい環境を整備し、開発リソースの不足を改善するのに役立ちます。
企業の業務方針が適切でない
企業の業務方針が不適切な状況も、開発リソースの不足に繋がります。プロジェクトの計画が曖昧なまま進めるとリソース配分のミスマッチを引き起こし、スケジュールの乱れが長時間労働を招いて環境悪化・現場の人手不足を加速させる原因になります。
また、評価制度が充実していないのも離職・生産性低下を招く要因のひとつです。IT人材のスキルが正当に評価されなければ、モチベーションの低下を引き起こして離職率が高まる恐れもあります。
重要なIT人材が立ち去ってしまう状況を作るため、開発リソース不足の要因が業務方針である場合は、改善が必要不可欠だと言えます。
不適切な開発手法を選択している
不適切な開発手法を選択すると、開発リソースの不足を招くおそれがあります。プロジェクトや開発プロダクトの要件に合わない手法を選ぶと、作業効率が悪化し、余計なコストや時間が掛かるおそれがあります。
例えば、アジャイル開発を適用すべき所をウォーターフォール開発で進めてしまうと、変更が頻繁に発生する影響で開発遅れが起き、リソースの無駄遣いとなってしまうのは避けられません。進めているプロジェクトに応じて、適切な開発手法を選択しなければ、十分な開発リソースがあっても人材の不足感を覚えてしまいます。
開発リソース不足を解消する3つの開発手法
開発リソースの不足を解消する方法は多岐にわたりますが、特に有効なのは適切な開発手法の選定です。リソースの最適な利用と効率的なプロジェクト運営を進めるためにも、以下3つの開発手法について事前に違いの把握をおすすめします。
ここでは、開発リソース不足に頭を悩ませている方に向けて、3つの開発手法と違いを解説します。
オフショア開発
オフショア開発とは、優れた技術を持ちながらも低コストで委託できる海外企業・海外子会社などへ開発業務を委託・移管する方法を指します。優れたIT人材が豊富ながらも、貨幣価値が低い外国に外注することで、人件費や開発コストを大幅に削減できるのがメリットです。
例えば、アメリカやヨーロッパの企業ではインド・東欧にオフショア開発として委託するケースが増えています。自社内に求められる開発コストを削減しつつ、内部リソースを節約できるのが魅力です。しかし、オフショア開発は主にプロジェクト単位で解散することが課題です。
システム開発のノウハウが蓄積しにくく、人材やスキルの定着が見込めないデメリットがあります。加えて、主に海外とのやり取りになるため英語を始めとした通訳手段が求められます。
ラボ型開発
ラボ型開発とは、主に人件費の安い海外で一定期間に渡って、IT人材の開発リソースを確保・業務を委託する開発手法です。オフショア開発と同じように、人件費や開発コストを削減できる効果が期待できます。一方で、オフショア開発とは違った面もあります。ラボ開発はプロジェクト単位ではなく、期間を定めて契約を結ぶ仕組みです。
そのため、「一定期間だけ追加でIT人材を確保できる開発手法」と言えます。
契約期間内であれば、プロジェクト内容の変更やシステムの機能追加などがあっても見積もりを調整する必要がありません。また、ノウハウの蓄積によって開発スピードの向上やコミュニケーションの円滑化も期待できるなど、さまざまなメリットがあります。
しかし、契約期間中は確保した開発リソースを無駄にしないよう、定期的に仕事を発注しなければなりません。明確なプランがなければ費用対効果が低くなってしまうため、依頼前のプロジェクト管理やスケジューリング能力といった対策が求められます。
ニアショア開発
ニアショア開発とは、地理的に近い環境に拠点を設けて開発業務を委託する手法です。主に国内の地方都市や拠点へ委託することで、自社オフィスに常駐する必要性をなくし、オフィスの賃料や光熱費などのコストを削減する効果が期待できます。
加えて、ニアショア開発は通訳の確保や、時差の影響を考慮しないで済むのもメリットです。
文化的な違いを抑えられるため、スムーズなやり取りで開発リソースの不足問題を解決しやすくなります。ただし、主に国内への委託になるためオフショア型・ラボ型に比べると人件費の削減効果が低くなってしまいます。
また、リモートワークなどの普及で地方への回帰もわずかに起きているものの、都市部と比べてIT人材を確保しにくいのも課題のひとつです。
開発リソース不足の解消方法
開発リソースの不足を根本から解消するためには、組織全体を通してアプローチを見直す必要があります。具体的な方法は以下の4点です。
リソース不足を解消するためには、組織全体のアプローチの見直しと、具体的な戦略の実施が必要です。
ここでは、それを実現するための複数の方法を探ります。
社内環境の改善
社内の開発リソースが不足する対策として、社内環境の改善は欠かせません。IT人材の労働環境を改善すれば、従業員のモチベーションが向上し、結果として生産性の向上に繋げられます。
例えば、「開発環境の社用PCを最新モデルに買い替える」「生産性の低い一部業務をツールやシステムの導入で効率化する」などが有効です。労働環境の改善に加えて、従業員一人ひとりを適切に評価できる制度も構築すれば、モチベーションの向上も期待できます。
しかし、急にWindows10などのOSをバージョンアップしたり、利用しているシステムを刷新したりすると、一時的に現場が混乱してしまうのは避けられません。社内環境の改善は言い換えれば、「使い慣れた環境の変化」を指します。
開発リソースの不足を解消するための新しいシステムが敬遠されてしまわぬように、社員が使いやすい環境づくりも同時に取り組むことが大切です。例えば、テックタッチのデジタルガイドツールを活用すると、PCのシステム上に操作手順などを表示することができます。改善された社内環境に適応するお手伝いができるため、社員の生産性引き上げにも貢献できます。
≫≫ デジタルガイド、プロダクトツアーを活用してシステム運用を活性化させるポイントを解説
幅広い人材の採用と育成を心がける
開発リソースが不足している対策として、幅広い人材の採用・育成を心がけることも大切です。労働者の総人口が減りつつある昨今では、新しいIT人材が戦力になるようしっかりとした育成基盤を設けるのはもちろん、即戦力になる人材確保も重要視されています。
即戦力になる人材を採用するには、フレキシブルな働き方を実現できるなど自社の魅力を高める取り組みが重要です。例えば、「フレックスタイムの導入」「テレワークが利用できる」などがあげられます。
アウトソーシングやシステム導入
特に専門的な、特定の開発リソースが求められるような事案に関しては、アウトソーシング(外注)を利用するのもポイントです。自社内のノウハウが不足していても、専門家が案件を効率的に進めてくれるため、プロジェクトを進行しやすいだけでなく、内部リソースの負担を軽減できる魅力もあります。
ノウハウがない状態で無理に自社内リソースによる開発を進めると、さまざまなコストが掛かってしまう懸念があります。必要に応じてフリーランスなどを含む専門家に外注したり、「システムエンジニアリングサービス(SES)」を利用したりするのがおすすめです。
ノーコードツールの活用促進
開発リソースが不足しているときは、コーディングをせずにシステム開発・改修ができる「ノーコードツール」を活用するのもポイントです。コーディングができない人材でも簡単にソフトやアプリの開発・カスタマイズを行えるため、IT人材に掛かる負担を減らす効果が期待できます。
例えば、社内システムの誤操作が多くなりがちなフローを改善したいとき、人事部門など非IT人材でも簡単に問題を解決できるため、自社内のIT人材のリソースを割く必要がなくなります。言い換えれば、IT人材が開発業務などのコア業務に注力できるようになるため、開発リソース不足の改善に貢献します。
システムの利活用を促進できるノーコードツールをお探しの場合は、「テックタッチ」をご検討ください。Webシステムの画面上でプロダクトの正しい活用方法をナビゲーションする仕組みで、自社内のオンボーディング工数や、問い合わせ対応の削減を期待できます。
ナビゲーションの作成・修正もプログラミング不要で行えるため、ITリソースを消耗することなく、プロダクトをリアルタイムで修正しやすいのも魅力です。「テックタッチ」は、ノーコードで簡単に改修ができる社内環境づくりをお助けします。
≫≫ ノーコードで、システムのユーザー体験を改善できる「テックタッチ」
開発リソースのまとめ
開発リソースの適切な管理と割り当ては、企業が持続可能な成長を遂げるうえで非常に重要です。社内の開発リソースが不足する背景には、「少子高齢化による根本的人材の不足」「開発環境が整備されていない」「企業の業務方針が不適切」「誤った開発手法の選択」などが挙げられます。
経済産業省の調べでは、今後もますますIT人材が不足していく見込みです。そのため、IT人材の確保はもちろん、コア業務に注力できる環境づくりを構築することが大切です。もし、自社内のIT人材がヘルプデスクなど開発リソース以外にも時間を取られている場合は、「テックタッチ」をご検討ください。
「テックタッチ」は簡単な改修ならノーコードで対応できるデジタルガイドツールで、社内のさまざまなトラブルによりIT人材へ掛かる負担を軽減する効果が期待できます。開発リソース不足の直接的な問題解消だけでなく、間接的に生産性を低下させている問題の対処法として、ぜひ「テックタッチ」のご利用をご検討ください。