DX推進に取り組む企業が増えるなかで、業務でツールやシステムを使うことが一般的になりました。
しかし、社内の全従業員が使い方を熟知しているわけではなく、使い方がわからずトラブルに発展することも少なくないでしょう。
そういった際の問い合わせ先として設置されるのがヘルプデスクです。
ヘルプデスクは日々さまざまな問い合わせに対応し、社内のツールやシステムの定着に役立つ一方で、問い合わせ数が増大すると対応が追いつかず、うまく機能しなくなる懸念があります。
多くの問い合わせに対応するためには、マニュアルの準備が効果的です。
マニュアルの重要性、作成や運営のポイントなどについて紹介します。
ヘルプデスクの運営における課題
ヘルプデスクの運営では、以下のような課題があります。
スピード感が求められる
システムトラブルの問い合わせは早急な解決が求められるので、担当者の負荷は重くなります。
わかりやすい回答をしたとしても、対応に時間がかかると相手の満足度が下がり、担当者の疲弊を招きます。
同じ問い合わせを何回も受ける
ツール・システムのアップデート時など、使い方や仕様に変化が生じたときに社内全体から同じような問い合わせが急増し、繰り返し対応しなければなりません。
ヘルプデスク対応範囲外の問い合わせがある
困ったことがあればすぐにヘルプデスクに確認するという考えが根強く、対応範囲を超えた問い合わせが寄せられることもあります。
対応しようとすると時間がかかり、円滑な案内が困難となります。
育成が難しい
問い合わせ対応は、同じ質問でも状況や相手のシステム理解度によって最善策が異なる難易度の高い業務です。
そのため、対応水準を引き上げるための育成に時間がかかります。
問い合わせ対応について、またヘルプデスクを効率化するためのポイントについては、下記記事をご参照ください。
「問い合わせ対応における課題と効率化の実現方法をご紹介」
「ヘルプデスクの効率化が進まない理由と改善のポイントを解説」
ヘルプデスクにおけるマニュアルの重要性
課題解決のためには、業務の効率化や、スムーズに対応ができる体制の構築が必要です。
そこで役に立つのがマニュアルです。マニュアルの作成が重要とされる主な理由を紹介します。
業務の標準化
業務内容をマニュアルにまとめるためには、業務の流れや対応方法を整理しなければなりません。
整理する作業を通して、ヘルプデスクの業務が結果的に標準化されます。
業務が標準化されるとヘルプデスク業務の効率化が進み、担当者間の知識量や処理能力の差をなくすことが可能です。
教育時間の短縮化を実現
ヘルプデスクでの問い合わせ対応は、通常、問い合わせを受けた人が最後まで対応します。
担当者の経験不足によってほかの担当者に変わるケースも考えられますが、それでは対応時間の延長につながってしまいます。
ヘルプデスク担当者はたとえ新人でも、早期にひとりで問題解決ができるようになる必要があります。
新人教育にかけられる時間は限られているため、マニュアルがあれば、自主的に知識習得を図ることが可能になります。
ノウハウの蓄積・共有
電話対応は対応が属人的になる傾向があり、ベテラン担当者と新人担当者との間でノウハウを共有する必要があります。
マニュアルにベテラン担当者が持つ知識や応対方法が明記されていれば、ヘルプデスクの誰もが質の高い応対ができるようになります。
会社にもノウハウを蓄積でき、ヘルプデスク全体の対応スピードも向上するでしょう。
ヘルプデスクにおけるマニュアル作成のポイント
実際にマニュアルを作成するときには、どのようなポイントに着目すればよいのでしょうか。
作成手順を踏まえて紹介します。
業務内容の把握
マニュアル作成前に業務全体像を把握します。
全体の流れを意識してマニュアルを作成することで、マニュアルが社内でどのような位置にあるのかがわかります。
質の高いマニュアルを作成するために土台となる要素です。
業務の範囲を明確化
ヘルプデスクの対応範囲を明確にします。
対応範囲をマニュアルに盛り込むことで、対応範囲外の質問を未然に防ぐことが見込めます。
対応範囲が広い場合は、ヘルプデスクの業務を圧迫している問い合わせを特定することも重要です。
負荷の高い業務から対応をマニュアル化することで、最速で業務改善を実現します。
読者のレベルに応じて内容を決定
マニュアルの読者層を検討し、内容を吟味するとよいでしょう。
初心者向けならわかりやすさや読みやすさが重要となる一方、上級者向けなら専門用語を使った端的な表現が可能です。
一時的なヘルプ要員向けのマニュアルならば、作業の要所部のみまとめた簡易版マニュアルも有効でしょう。
FAQや過去の対応事例を盛り込む
すべての問題を広範囲にわたって解決できるマニュアルを作成することが理想ですが、そのような完璧なマニュアルづくりは困難です。
実際にあった問い合わせ内容を対応事例として反映させていくことで、時間をかけずに実用的なマニュアルを作成できます。
また、業務をするうえでどのような点で困ったか、マニュアルのどの点がわかりにくかったかなど、ヘルプデスク現場の担当者からのフィードバックをマニュアルに反映します。
FAQを設けるのもいいでしょう。ツール・システムのアップデート時も、対応策をいち早くマニュアルに反映させることで、繰り返し対応しなければならない事態を回避できます。
ヘルプデスクにおけるマニュアルの適切な運用ポイント
せっかくマニュアルを作成しても、適切に運用されなければ意味がありません。
マニュアルを適切に運用するポイントを紹介します。
マニュアル管理の効率化を心がける
マニュアルは、作成後も常に内容を最新の状態に更新し続ける必要があります。
しかしヘルプデスクでは、定常業務に加えて突発的な対応も発生するので、マニュアル管理ばかりに時間をかけられません。
効率的にマニュアル管理するために、次のような工夫が必要です。
- 内容を細かくカテゴリ化することで、編集が必要な箇所がすぐに見分けられるようにする
- マニュアルに検索機能をつけて、修正や確認したい場合に必要箇所を見つけやすくする
- フォーマットを用意して、追加部分が生じた際はフォーマットに従い作成することで、書式を考える手間をなくす
定期的に更新する体制を整える
ヘルプデスクのマニュアルは、業務内容や企業体制の変化やユーザーの声など、運用していくなかで情報が古くなり更新が必要となることが多々あります。
マニュアルの内容が古ければ、ミスや事故の原因となるため、定期的な更新が必要です。
更新時は、マニュアルの最新データの管理や更新内容の整理、編集作業、内容確認などのさまざまな作業が伴います。
担当者がひとりで対応するには限界があるので、オペレーション体制を整え、複数人で運用しましょう。
また、マニュアルが古くなってから一度に対応しようとすると、更新すべき内容が膨大になりがちです。
定期的に内容を見直す体制を整え、こまめに更新することが重要です。
マニュアルはヘルプデスク業務改善の助けになる
ヘルプデスクの業務は知識量だけでなく、問い合わせに対し適切かつ迅速に回答できる対応力も求められる業務です。
業務負荷が大きく、人材の教育にも時間を要しますが、マニュアルがあれば業務と育成双方の効率化がかないます。
ヘルプデスク全体の効率化のために、マニュアルを作成・運営していきましょう。
一方で、ヘルプデスクへの問い合わせ件数を減らすための努力も必要です。
そのためには、従業員がヘルプデスクに頼ることなく、自身の力だけでツール・システムを使いこなせるようにならなくてはいけません。
ツール・システムを定着させるための概念として、DAP(デジタルアダプションプラットフォーム)があります。
DAPとはシステムを定着させるためのサポートのことで、近年注目を浴びています。
DAPの概念やメリットについて詳しくは、「デジタルアダプションプラットフォームとは?そのメリットと導入時の注意点」をご覧ください。
特に効果を発揮するのが、「テックタッチ」です。
「テックタッチ」はWebシステムの画面上にユーザーの操作に応じてリアルタイムに動く操作ガイドやヒント・説明を表示させることができ、従業員がWebシステムをマニュアルレスで使いこなすことを支援します。
また、操作ガイドやヒントはプログラミング不要で作成・修正可能となっており、従業員の声に応じて即座に修正し、より使いやすいシステムへと改善することが可能です。
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