企業の情報システムを担う「情シス」は、デジタル化が進む現代において重要な役割を果たす部門です。しかし、日々変化する技術トレンドや多様化する業務ニーズに対応するなかで、情シスが抱える課題は多岐にわたります。
本記事では、情シスの課題に焦点を当ててその解決策として取り組むべき6つの方法を具体的に解説します。
情シスとは?
情シスとは、企業や組織内で情報システムを担当する部署や職員を指し、正式には「情報システム部門」と呼ばれます。
情シスが主に担当する業務は以下の通りです。
情シスが主に担当する業務 |
・社内のITインフラやシステムの運用・管理 ・ネットワークやサーバーの構築 ・ソフトウェアの導入・開発 ・システムの保守 ・社内からのIT関連に関する問い合わせ対応 など |
特に近年では、在宅勤務の増加やクラウドサービスの普及に伴い、情シスの役割はさらに多様化・高度化しています。
情シスが抱える5つの課題
情シスが抱える課題は以下の5つです。ここでは、下記の課題について解説します。
1. IT人材の不足
情シス部門が直面する最大の課題の一つが、IT人材の不足です。急速に進化するテクノロジーや増加するサイバー攻撃への対応、業務のデジタル化など、多岐にわたる業務をこなすためには、広範なスキルセットを持つIT人材が必要です。しかし、業界全体で人材不足が深刻化しており、特に高度な専門知識を持つ人材の確保が困難になっています。企業が情シスに求める役割は年々増加しているにもかかわらず、人手不足のために日常業務で手一杯になり、リソースを割く余裕がないのが現状です。
さらに、情シスの業務ではトラブルシューティングや社員からの問い合わせ対応が頻繁に発生する場合があります。限られた人員で対応せざるを得ない企業では、本来注力すべきプロジェクトが遅延するリスクもあります。
2. 一人情シス
「一人情シス」とは、企業のIT業務を一人で担当する状況を指します。特に中小企業でよく見られるケースですが、大企業でも珍しくない状況であり、限られた予算や人材の中でIT業務を効率的にこなす必要があるため、大きな負担を伴います。
また、一人情シスの環境では、万が一その担当者が不在や退職する場合、IT業務が滞るリスクが高いのも早急に改善しなければならない理由の一つです。さらに、一人情シスで対応する状況が続けばノウハウが属人化してしまい、外部のサポートを受ける際にもスムーズに情報を引き継げないという問題も発生します。
ノウハウ・情報のブラックボックス化により、システムの老朽化やセキュリティの脆弱性が見過ごされるリスクが高まる点も、企業にとっては大きなリスク要素といえます。
3. システムの高度化
情シスが抱える課題の一つに、システムの高度化への対応があります。企業が成長し、業務が複雑化するなかでは、ITシステムも以下の高度な機能・技術への対応を求められます。
高度な機能・技術 |
・AI ・IoT ・ビッグデータ など |
上記の機能・技術を効果的に活用するためには、既存システムのアップグレードや新しい技術への対応が不可欠です。しかし、システムが高度化すれば、管理や保守の難易度が上がり、情シスの負担は増加します。特に、古いシステムと新しい技術との互換性が問題になるケースも多く、複雑なシステム環境を維持するためには高度な専門知識が必要です。
また、システムを高度化する際には多額のコストがかかるため、限られた予算の中でどの技術を優先的に導入すべきかという判断も情シスに求められます。企業としてはシンプルな構造にし、安定な運用を目指すのが得策ではありますが、早急に対応するのが難しい場合もあるのが実情です。
4. 不完全なセキュリティ
DX化が進む現代では、企業のITシステムはサイバー攻撃や内部不正のリスクに常にさらされており、セキュリティ強化は不可欠です。しかし、多くの企業では十分な予算やリソースが確保されていないため、必要なセキュリティ対策が十分に実施されていないケースが散見されます。例えば、定期的なシステムの脆弱性診断やセキュリティパッチの適用が滞ると、攻撃者にとっては格好の標的です。
また、情シスの人手不足や専門知識の限界により、最新のサイバー脅威に対応するためのセキュリティアップデートや対策が後回しにされる場合もあります。さらに、セキュリティ意識の低い従業員によるパスワード管理の不備や、不注意な操作による情報漏洩リスクも、情シスがカバーしきれない場合が少なくありません。
システム全体のセキュリティを完全に守るには、人的・技術的な資源が不足しているため、情シスにとっては大きな負担となり、常にリスク管理が求められます。
5. コストセンターとして扱われてしまう
多くの企業では、情シスは直接的な利益を生み出す部門ではないため、ITシステムの維持や管理にコストがかかる点に注目する傾向があります。コストセンターとして扱っている企業では、他の部門に比べて投資の優先度が低く、十分な予算が確保されないケースがあります。情シスがコストセンターと見なされると、必要なシステムのアップデートや新技術の導入が後回しにされ、業務効率やセキュリティ対策の向上に悪影響を及ぼしかねません。
また、限られた予算の中で日々の運用やトラブル対応に追われ、長期的なIT戦略や改善施策にリソースを割くのが難しくなります。情シスをコストセンターとして扱うと、ITインフラの老朽化や業務の非効率化が進行し、最終的には企業全体の競争力にも波及するおそれがあります。
情シスの業務改善で得られる効果
情シスが担当する業務を改善できれば、以下の効果を得られます。ここでは、下記の効果について解説します。
DXの推進に取り組める
情シスの業務改善が進むと、企業全体のDX化推進に大きな効果をもたらします。DXは、単にITシステムを導入するだけでなく、企業のビジネスモデルや業務プロセス全体に対してデジタル技術を駆使した変革の実現を目的としています。情シスが日々のトラブル対応やシステム管理に追われる状態では、戦略的なDX推進に取り組む時間やリソースの確保が難しいでしょう。
しかし、情シスの業務が効率化されると、より高度な技術を活用した以下のプロジェクトに取り組む余裕が生まれます。
高度な技術を活用したプロジェクト |
・業務プロセスの自動化 ・AIやビッグデータの活用 ・クラウドサービスの導入による柔軟な働き方の実現 など |
DXに関連した上記の施策に取り組めれば、業務効率の向上やコスト削減、新たなビジネスチャンスの創出などの成果が期待でき、企業全体の競争力が高まるでしょう。
社内のシステムやIT関連業務が安定する
情シスの業務改善が推進できれば、社内のシステムやIT関連業務の安定性の向上が期待できます。情シスが日々のトラブル対応に追われている場合、改修やアップデートが後回しになり、システム障害やセキュリティリスクが増大する可能性があります。
しかし、業務の効率化が実現すれば、トラブル発生前の予防措置や計画的なシステム更新が可能になります。また、情シスがITインフラの運用を安定させられると、企業全体のデータセキュリティも強化され、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクが減少します。さらに、安定したシステム環境は、業務のデジタル化や新しいITツールの導入を円滑に進める土台となり、企業の成長や競争力向上に大きく寄与します。
情シスが取り組むべき6つの解決方法
情シスが取り組むべき課題解決への6つの施策は以下の通りです。ここでは、下記の施策について解説します。
1. 業務範囲の明確化
情シスが抱える課題を解決するために重要な施策の一つが、業務範囲の明確化です。情シスは、多岐にわたる業務を担当する場合が多く、その負担は膨大です。情シスの対応範囲が曖昧なままだと、限られたリソースで非効率的に作業を行わざるを得ないため、重要なプロジェクトが後回しになりやすくなります。業務範囲を明確にできれば、情シスがどのタスクに優先的に取り組むべきかが明確になり、効率的なリソース配分が実現できます。
また、業務範囲が明確であれば、社員や他の部門とのコミュニケーションもスムーズになり、無理な依頼や負担が情シスに集中する状態も解消できるでしょう。
2. マニュアルやFAQを作成する
情シスは、日常的に社員からの問い合わせ対応に多くの時間を費やしていますが、同じ内容の質問が繰り返される状態が散見されます。そこで、基本的なITサポートや操作手順、トラブルシューティングに関するマニュアルやFAQを作成すれば、それらを社員が参照し問題を解決できるようになります。マニュアルやFAQの整備により、情シスへの問い合わせ件数が減少し、対応に割く時間の大幅な削減が期待できます。
また、マニュアルやFAQは、特定の業務に関する知識を広く社内に共有できるため、ITリテラシーの向上にもつながります。結果として、情シスは日常的なサポート業務から解放され、より高度なシステム管理や新しい技術の導入に集中できる環境が整うでしょう。さらに、マニュアルやFAQの更新を定期的に行えば、最新の情報に基づいたサポート体制を維持し、社内のIT環境をより安定させられます。
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3. 業務フローを改善する
情シスの業務効率を向上させるためには、業務フローの改善が不可欠です。情シスは多様な業務を抱えており、それが非効率な手順で進められていると、時間やリソースの無駄が生じます。業務フローの改善により、情シスの作業を体系的に整理し、無駄な作業を排除できるでしょう。
業務フローの改善例は以下の通りです。
改善すべき状態 | 改善例 |
・トラブル対応の手順が複雑であったり、社員からの問い合わせが重複していたりする | ・手順・回答例を簡略化・自動化できる仕組みを構築する |
・タスクの優先度が不明瞭 | ・タスクを棚卸しして、どのタスクから取り組むべきなのか改めて検討する |
上記のような業務フローの改善により、情シス全体のパフォーマンスが向上し、迅速で効率的なシステム運用が可能になります。
また、トラブルの未然防止や対応のスピード向上が実現し、企業全体のIT環境も安定するのもメリットといえます。
4. クラウドサービスの導入
情シスが抱える課題の解決策として、クラウドサービスの導入は有効な施策の一つです。従来のオンプレミス環境では、サーバーの管理やメンテナンス、ハードウェアの更新などに多くの時間とコストがかかっていました。
しかし、クラウドサービスを活用すれば、システムの管理が簡略化され、リソースの柔軟な利用が実現します。クラウドサービスは、必要に応じてリソースをスケールアップ・ダウンできるため、突発的な負荷にも対応しやすく、システムダウンのリスクを軽減できます。
また、クラウドは自動バックアップやセキュリティ機能も充実しており、それらの保守・運用もベンダーが行ってくれるのも導入するメリットの一つです。クラウドサービスの導入により、情シスはシステム運用の負担を軽減し、より戦略的な業務に集中できるようになるため、企業のIT運用が効率化できるでしょう。
5. コア業務以外をアウトソーシングする
情シスは日常的に多岐にわたる業務を担っていますが、全てを自社内で対応しようするとリソースの限界を超えてしまうおそれがあります。そこで、コア業務でない部分をアウトソーシングすれば、情シス本来の業務に集中できる環境が構築できます。
情シスがアウトソーシングすると効率化できる業務の例は以下の通りです。
アウトソーシングすると効率化できる業務ス |
・日常的なトラブルシューティング ・ヘルプデスク業務 ・定期的なシステムメンテナンス など |
アウトソーシングにより、情シスはシステム戦略やセキュリティ強化、新技術の導入といった重要な業務にリソースを集中できるようになり、業務の効率化が進みます。
また、アウトソーシングによる専門業者を活用すれば、最新の技術や知識を導入しやすくなり、システム運用の質が向上します。アウトソーシングは、業務効率化のみならず、IT環境全体の安定性とセキュリティが強化され、企業の競争力向上にもつながるメリットの大きい施策です。
6. 組織のITリテラシーを向上させる
多くの企業で、基本的な操作方法やシステム利用の際のトラブル対応に関する問い合わせが情シスに集中しがちなのは、従業員のITリテラシーが低い状態である点が原因の一つです。これにより、情シスは本来の業務に集中できず、効率的なIT運用が難しくなります。
組織全体のITリテラシーを向上させるためには、定期的なITトレーニングやワークショップを実施し、基本的な操作やセキュリティに関する知識の共有を目指す施策が有効です。
また、簡潔なマニュアルやFAQを整備し、社員が自己解決できる仕組みを構築すれば、情シスへの負担を減らせられるでしょう。
社内システムの利活用を促進できるDAPツール「テックタッチ」
DX化推進によるシステムの導入・改修で問題となりやすいのが、社内の理解度・浸透率が悪くシステムが効果的に利用されない点です。社内システムの利活用を促進するためには、DAPツールの「テックタッチ」の導入がおすすめです。
テックタッチなら、「デジタルガイド」と呼ばれる機能により、システムを操作する画面上にガイドが表示される環境を構築可能です。
デジタルガイドにより、システムの利用方法が視覚的に分かるようになるため、情シスへの問い合わせ削減が実現できます。
DAPを導入して情シスの課題を解決できた成功事例
ここでは、DAPツールのテックタッチを導入して、情シスの課題解決を実現できた事例を紹介します。(敬称略)
積水化学工業株式会社
積水化学工業株式会社はプラスチック製品を取り扱うメーカーで、グループ全体で継続的な競争力の維持・強化を実現するためのデジタル変革に取り組んでいます。デジタル変革の一環として導入されたツールが、経費精算システムの「SAP Concur」でした。
ただ、導入後に経理管理部門宛にシステム活用に関する問い合わせが大量に寄せられる事態となり、コア業務に割くリソースが減少する問題が浮上しました。そこで解決策として導入が決まったのが、DAPツールの「テックタッチ」です。
テックタッチの導入で得られた成果は以下の通りです。
テックタッチの導入で得られた成果 |
・カスタマーサクセス担当者から、アンケート結果や収集したデータを元に、解決すべき課題の優先順位を提案してもらえた ・差し戻し率は約20%削減 ・問い合わせ率を10%削減 |
元々企業風土として新しいシステム・ツールの利活用が難しい環境でしたが、テックタッチの使い勝手の良さが受け入れられ、そのような風潮にも変化が見られています。
前田建設工業株式会社
前田建設工業株式会社は、「エンジニアリング力」と「新たな建設サービス」を持つ総合インフラサービス企業として事業展開を行っています。業務の効率化を目指し、さまざまなツールを導入しているなかで、社員の利用・理解が追いついていないのが課題でした。特に、経費精算システムの「Concur」では、PDFと動画によるマニュアルを用意したものの、活用が定着化されず、操作に関する問い合わせが多く寄せられていました。そこで導入されたのが、DAPツールの「テックタッチ」です。
テックタッチの導入により、問い合わせ数の35%削減に成功。また、自動化機能によって、入力ミスによる差し戻し件数も減少し、システム改修のコストをかけずに高い効果を得られている点も成果の一つです。
まとめ:テックタッチを導入して情シスの課題を解決
情シスが本来のコア業務に集中し、企業全体の競争力・売り上げを向上させられるようにするためには、社内問い合わせ業務の削減を実現する必要があります。情シスの負担軽減に役立つツールが、デジタルガイドで既存システムを誰でも利用しやすくできる「テックタッチ」です。
テックタッチの導入により、情シスに所属する社員のみならず、全社的に効率化が進み誰しもがストレスなくシステムを利用して業務に取り組めます。