経費精算、出張管理、請求書処理といった間接業務の負担を減らし、業務の効率化とガバナンスの強化を両立したいと考える企業にとって、SAP Concur(コンカー)は非常に有効な選択肢です。クラウド上での一元管理やモバイル対応、多言語・多通貨環境での運用、既存システムとの柔軟な連携により、経理業務の負荷を大幅に軽減するだけでなく、全社的なデジタル化基盤としての活用も可能です。
本記事では、SAP Concurの主な機能やサービス構成、導入メリット、代表的な企業の活用事例に加え、AI不正検知機能などの最新情報もあわせてご紹介します。さらに、システムの早期定着と現場の活用を促進するノーコードツール「テックタッチ」の活用にも触れながら、経理部門がより戦略的な業務に移行するためのヒントをまとめました。
そもそもSAP Concur(コンカー)とは?

SAP Concur(コンカー)は、SAPグループに属する株式会社コンカーが提供するクラウド型の経費精算・出張管理・請求書管理システムです。もともとは米国のConcur Technologies, Inc.が開発したサービスで、日本ではその日本法人が展開しています。
「出張・経費精算・請求書をペーパーレスに、いつでもどこからでも」をコンセプトに掲げ、ユーザー数は全世界で7,500万人超、処理される経費総額は年間約16兆円に上ります。実際に日本国内でも高い導入実績を誇り、電子帳簿保存法改正など制度対応への提案も積極的に行うなど、国内ニーズにも柔軟に対応しています。経費精算領域におけるクラウドサービスの先駆けとして、SAP Concurは「世界標準」と呼ぶにふさわしい存在です。
SAP Concurの具体的な評判や料金体系について詳しく知りたい方は、「SAPconcur(コンカー)の評判・口コミや特徴や料金を解説」の記事もあわせてご覧ください。
SAP Concur(コンカー)が提供しているサービス

SAP Concurは、経費精算・請求書処理・出張管理の3領域に対応するサービスを展開しています。
いずれも業務の効率化とガバナンス強化を目的に設計されており、各プロセスをデジタルで一元管理することが可能です。
ここでは、それぞれの主要サービスについて解説します。
経費の申請・管理を効率化する「Concur Expense」
Concur Expenseは、経費精算と経費管理をクラウド上で一元化するサービスです。
領収書情報の自動入力や社内規定に基づく自動チェック、モバイルアプリによるスムーズな申請・承認など、多様な機能を備えています。
これにより、経費処理の迅速化とコスト削減を実現し、業務負荷の軽減と不正防止によるガバナンス強化にも寄与します。
Concur Expenseの具体的なメリットや実際の口コミについては、「Concur Expenseの評判・口コミやメリット・デメリットを紹介」で詳しく解説しています。
請求書処理をデジタルで一元管理する「Concur Invoice」
Concur Invoiceは、請求書の受領から入力、承認、支払までの一連の処理を自動化するサービスです。
発注情報や取引先情報との連携により、支払い予定の適切な管理とキャッシュフローの精度向上を実現します。
経理業務の負担を軽減しつつ、不正防止とガバナンス強化にもつながる仕組みです。
出張の手配から精算までをサポートする「Concur Travel」
Concur Travelは、出張に関する各種業務を一括して処理できるクラウドサービスです。
出張前の申請手続きから、移動・宿泊の手配、スケジュール調整、さらに帰社後の精算処理までをひとつの仕組みに統合することで、社員と管理部門の作業負担を軽くします。
複雑化しやすい出張業務を標準化し、業務時間の短縮や費用面での効率化を実現します。
さらに業務プロセスの透明性を高め、組織全体の統制力向上にもつながります。Concurの他機能と組み合わせれば、リスク管理や経費処理も含めた出張対応が可能です。
なお、SAP製品全体の特徴やERPとしての位置づけについて理解を深めたい場合は、「SAP ERPとは?製品の特徴やメリット・デメリットを紹介」を参考にしてください。
SAP Concur(コンカー)を導入の3つのメリット

SAP Concurの導入により、経費管理の業務負荷軽減だけでなく、グローバル対応力やセキュリティ面での安心感も得られます。
以下では、主な導入メリットを3点に絞ってご紹介します。
経費入力作業の効率化
Concur Expenseを導入することで、日常的な経費登録の手間を大きく軽減できます。
コーポレートカードの利用明細は自動的にシステムへ反映され、SuicaやPASMOといった交通系ICの履歴も取り込み可能です。
また、スマートフォンからスムーズに申請処理が行えるため、従業員の作業時間を短縮しながら業務全体の効率を高められます。
多言語・多通貨に対応
SAP Concurは、20カ国語以上の言語に加え、さまざまな通貨や税制・法制度にも対応しており、国際的な経理業務を効率的にサポートします。
海外に拠点を展開する企業や、多国籍の従業員を抱える組織においても、同一のプラットフォームで一貫した管理を行えるため、国をまたいだ業務でもスムーズな運用が可能です。
高水準のセキュリティ対策
SAP Concurは、国際的な基準に基づいた堅牢なセキュリティ対策を実装しており、第三者機関の認証も取得しています。
プライバシー保護やアクセス制御、脆弱性への対処、システムの常時監視などを通じて、企業の重要なデータを安全に管理します。
安心して利用できる信頼性の高いクラウドサービスとして、多くの企業に支持されています。
SAP Concur(コンカー)を導入すべき企業とは?

SAP Concurは、経費まわりの課題を抱える企業にとって有効な解決策となります。
ここでは、導入によって特に効果が期待できる企業のタイプを3つの観点からご紹介します。
経費のデータ分析によって業務改善の戦略を設計したい企業
SAP Concurは、経費処理の枠を超えて、蓄積された支出情報を企業の意思決定に活かせる点が強みです。
Concur Expenseで集約されたデータをConcur Business Intelligenceと連携させることで、視覚的な分析や多角的な検証が可能になり、コスト削減や業務改善の方向性を具体化できます。
経理部門を経営の一翼として位置づけたい企業にとって、全社的なデータ活用の基盤として有効なツールです。
従業員の移動が多く、出張手配や精算が煩雑な企業
SAP Concurは、出張に関わる一連の業務を一つのシステムで管理できるため、移動の多い企業にとって大きな効果を発揮します。
出張の申請、予約、スケジュールの確認、リスク対応、帰着後の精算までを一元化することで、手配ミスや申請の不備といった人的ミスを防ぎ、業務全体を効率化が可能です。
不正防止やガバナンス強化の観点からも、有効なソリューションとなります。
複雑な社内規定がある企業
SAP Concurは、細かな社内規定や複雑な承認フローにも柔軟に対応できる設計となっており、経費・請求書・出張に関する社内手続きの統制を支援します。
組織ごとのルールに基づいた設定が可能なため、手続きの一貫性を保ちながら、誤申請や確認漏れの防止にも効果的です。
社内ガバナンスを強化したい企業にとって、実務に即した運用できることは有力な選択肢と言えます。
SAP Concur(コンカー)の導入事例

実際にSAP Concurを導入した企業の取り組みからは、導入効果や活用の工夫が具体的に見えてきます。
業種や課題の異なる企業がどのように活用しているのかを知ることで、自社導入時の参考にもなるはずです。
ここでは、代表的な3社の事例をご紹介します。
事例を見る前に、導入を成功させるための一般的な手順やポイントを押さえておきたい方は、「SAP導入を成功させるための手順やポイントを解説」の記事も参考にしてください。
株式会社ジーテクト様

■会社名:株式会社ジーテクト
■選択した理由:グループ全体で統一された経費処理基盤を構築し、複数拠点・部署にまたがる承認フローや社内規定に柔軟に対応できる体制を整えるため。
■主な導入効果:複雑なルールに沿った処理を効率的に運用できるようになり、ガバナンス強化と承認業務の標準化を同時に実現。グループ全体での経費管理の透明性も向上した。
■詳細URL:https://www.concur.co.jp/casestudy/g-tekt
株式会社日能研関東様

■会社名:株式会社日能研関東
■選択した理由:「承認レス」という運用コンセプトへの共感に加え、信頼性の高いシステム基盤と、法人カードの活用による部門別管理や予算対応の可能性を評価。導入支援体制も重視した。
■主な導入効果:経費精算業務の大幅な効率化に加え、現金管理の廃止によるリスク低減を実現。承認プロセスの迅速化と、部門間連携の強化にもつながり、業務の質が向上した。
■詳細URL:https://www.concur.co.jp/casestudy/nichinoken-kanto
株式会社マイスターエンジニアリング様

■会社名:株式会社マイスターエンジニアリング
■選択した理由:複雑な経費項目への対応や社内システムとの柔軟な連携が可能であり、他社事例や導入支援の手厚さも評価。顧客請求と自社経費を両立できる仕組みを構築するため。
■主な導入効果:経理業務の処理時間を大幅に短縮し、社員1人あたりの工数を34%削減。捺印や現金利用の削減にもつながり、経費の可視化と管理レベルの向上を実現した。
■詳細URL:https://www.concur.co.jp/casestudy/mystar-enginnering

「テックタッチ」の導入でSAP Concurへのスムーズなシステム移行を実現!

SAP Concurの導入時には、システムが持つ高度な機能や操作性の複雑さから、現場に混乱が生じやすいのも事実です。
こうした課題に対して、DAP(デジタルアダプションプラットフォーム)市場で国内No.1の実績を持つ「テックタッチ」を併用することで、Web画面上にマニュアルや操作ガイドを直接表示でき、ユーザーの理解を促進しながら、システム定着を大幅にスムーズに進めることが可能になります。
以下、「SAP Concur」と「テックタッチ」の併用によってシステム移行を成功させた、川崎汽船株式会社の具体的な導入事例をご紹介します
■会社名:川崎汽船株式会社
■問題点:旧システムは操作性に難があり、毎日のように基本的な使い方に関する問い合わせが寄せられていました。社内の電帳法対応も不十分で、紙中心の運用が続いており、新システム導入時には前回のマイナスイメージが強く、ユーザーからの不安も大きい状況でした。
■活用方法:「SAP Concur」のほぼ全画面に「テックタッチ」を実装し、特に入力ミスが起きやすい「接待費」や「交通費」の申請画面において、ツールチップやステップガイドを設置することで、入力ルールや操作手順を視覚的にサポートいたしました。これにより、ユーザーはマニュアルを開くことなく、その場で使い方を把握できる環境を整備しました。
■効果:導入前に想定されていた混乱を回避し、問い合わせ数は大幅に減少しました。仮に問い合わせがあった場合でも、該当画面のスクリーンショットを共有し、「テックタッチのガイドをご参照ください」と案内するだけで即座に解決できる体制が整いました。
対応時間の短縮に加え、情報の即時修正や反映が可能となり、運用改善のスピードも向上しております。ユーザーから寄せられたご意見をもとにナビゲーションを継続的に更新することで、運用品質の向上にもつながっています。
■詳細URL:https://techtouch.jp/cases/kline/
SAP Concur(コンカー)に関してのよくある質問

SAP Concurの導入を検討する際に多く寄せられる疑問について、代表的なポイントを以下に整理しました。各項目で詳しく解説します。
モバイル端末への対応は?
SAP Concurは、iOSおよびAndroid向けに専用アプリを提供しており、スマートフォンやタブレットからも快適に操作できます。
経費申請や承認、領収書のアップロードなど、外出先でもスムーズに対応できるため、業務効率の向上に貢献します。
他のシステムとの連携はできる?
SAP Concurは、既存の会計・人事システムなどと柔軟に連携可能です。
経費データの自動取り込みや、マスタデータ(人事・口座情報など)の同期、ファームバンキングデータの作成まで対応可能で、業務全体の効率化を支援します。
SalesforceなどのクラウドサービスともAPIを通じて接続できるため、環境に合わせたスムーズな連携が実現します。既存システムに影響を与えない設計が可能な点も特長です。
準拠しているセキュリティ標準は?
SAP Concurは、安心してクラウドサービスを利用できるよう、業界最高水準のセキュリティ認証を取得しています。
以下の通り、第三者機関による複数の国際認証に準拠しており、情報保護体制の信頼性が確保されています。
| 認証名 | 概要 |
| ISO 27001 | 情報セキュリティ管理体制に関する国際標準規格 |
| PCI DSS | クレジットカード情報の適切な管理に関する国際統一基準 |
| SOC1 Type1 | 財務報告に関する内部統制が整備されていることを証明する報告書 |
| SOC1 Type2 | セキュリティ統制の有効性が一定期間にわたり維持されていることを示す報告書 |
| ISO 20000 | ITサービス運用の管理が国際的な基準に則って適切に行われていることを示す認証 |
どんな法人カードに対応している?
SAP Concurは、主要な国内外の法人カードに幅広く対応しています。以下のカード発行会社のコーポレートカードと連携が可能です。
- アメリカン・エキスプレス(American Express)
- クレディセゾン(VISA/MasterCard)
- ジェイシービー(JCB)
- 東京クレジットサービス(VISA)
- トヨタファイナンス(VISA)
- 三井住友カード(VISA)
- 三井住友トラストクラブ(Diners Club/VISA/MasterCard)
- 三菱UFJニコス(VISA/MasterCard)
- ユーシーカード(MasterCard)
- りそなカード(VISA/JCB)
- JCBグループの各カード発行会社(JCB)
導入までの期間は?
Concur Expenseの導入には、目安として最短で約6か月程度を見込む必要があります。
ただし、企業の規模や導入対象の範囲、他システムとの連携状況などによって前後するため、詳しいスケジュールは別途ご相談ください。
スケジュール遅延などの失敗を避けるためのポイントについては、SAP導入に失敗してしまう原因と失敗を避けるためのポイントを解説を参考にしてください。
SAP Concur(コンカー)の最新情報

SAP Concurは日々進化を遂げており、近年ではAI技術を活用した機能強化が進んでいます。
業務効率化とガバナンス強化の両立を目指す企業にとって、こうしたアップデートは重要な検討材料となります。
ここでは、注目すべき最新機能を2点ご紹介します。
AI不正検知サービス 「Verify」の実装
SAP Concurは、「経費精算のない世界」の実現に向けて推進してきた5つの“レス”のうち、最後まで残っていた「承認レス」の領域に対し、AI技術を活用した不正検知サービス「Verify」を2025年春に提供開始されました。
「Verify」は、経費申請後の内容をAIが自動でチェックし、領収書の画像と申請内容の整合性や画像の使い回しの有無などを、高精度かつ短時間で判定できるのが特長です。
さらに、AIによるチェックに加えて、専任のAuditorによる目視確認を重ねることで、30種類以上にわたる監査項目に対応可能です。
市場価格との乖離、不正な加盟店の検出、重複申請の発見など、多角的な視点での自動監査が可能になります。
これにより、従来の承認業務を代替し、さらなる業務効率化とガバナンス強化が期待されています。
既存サービスに追加されるAI新機能
SAP Concurでは、AIとビッグデータを活用した機能強化が各サービスにおいて進められており、業務のさらなる効率化と精度向上が期待されています。
【SAP Concur全体】
2024年冬以降にリリース予定の「AI管理者サポート」では、管理者向けサポートポータルに生成AIが組み込まれ、リアルタイムで適切な対応手順を提示。運用負荷の軽減が図られます。
【Concur Expense】
「Request Assistant」は、出張申請時にAIが概算金額を自動で算出する機能で、今後は社内ルールや過去データを反映した精度の高い見積もりにも対応予定です。
また、ホテル領収書を取り込むだけで明細を自動入力する「ホテル領収書明細化機能」も進化を予定しており、入力ミスや作業負担の削減に寄与します。
【Concur Travel】
2025年内には、SAPの対話型AI「Joule」を活用した「Co-Pilot Jouleによる出張手配」がリリース予定です。出張先の情報を入力するだけで、個人の好みや社内規定に沿ったフライトを自動提案する新たな支援機能となります。
【Concur Invoice】
「AI-OCR機能の拡充」により、指定アドレスにメール送信された請求書をAIが自動読み取りし、Concur Invoiceに連携。これまで外部サービスで対応していた処理が標準機能として統合されることで、導入・運用コストの削減にもつながります。
SAP Concur(コンカー)を導入して経理業務の効率化を図ろう

SAP Concurは、経費精算・出張管理・請求書処理といったバックオフィス業務をクラウド上で統合管理できるソリューションです。
入力の自動化やモバイル対応、多通貨・多言語環境での運用、各種システムとの柔軟な連携機能などを通じて、日常業務の負荷を大幅に削減すると同時に、ガバナンスの強化やコスト最適化にも貢献します。また、AIを活用した不正検知機能やデータ分析基盤も整っており、経理部門が経営に貢献する体制を構築しやすい点も特長です。
加えて、「テックタッチ」を併用すれば、SAP Concurの各画面上にナビゲーションや操作ガイドを視覚的に表示できるようになり、利用者が迷わず業務を遂行できる環境が整います。
ノーコードで簡単にガイドの作成・変更ができるため、現場での定着スピードも速く、システム導入効果を早期に発揮させることが可能です。経理業務のデジタル化を成功させるには、こうした補完ツールとの組み合わせも視野に入れた導入設計が重要です。



