顧客体験(CX)を高めたくても、他社が何をして成果を出したのかが見えず、施策に踏み出せない担当者は多いのではないでしょうか。重要性は理解していても、自社にどう取り入れるか、糸口がつかめない場合もあるでしょう。
製品の機能や価格による差別化が難しい市場においては、顧客体験の質こそが、選ばれ続ける企業とそうでない企業の分かれ目です。他社の成功事例を知り、自社が取り組むべき施策を見つけていきましょう。
本記事では、CXの基礎知識やCS・UX・DXとの違いを整理したうえで、BtoBとBtoCの事例を紹介します。併せて、成功に共通するポイントや、明日から実践できる施策とその始め方まで解説していきます。
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カスタマーエクスペリエンス(CX)とは?CS・UX・DXとの違い

CXという言葉の意味や混同されやすいCS・UX・DXとの違い、BtoB企業でCXが重視される理由を解説します。
CXとは商品の認知から購入後までに得る体験のこと
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、顧客が商品を知ってから購入・利用し、アフターサポートを受けるなど、商品やサービスに接する一連の過程で得る体験を指します。日本語では「顧客体験」や「顧客体験価値」と呼ばれています。
製品の機能や価格だけでなく、購入の前後で顧客が得る感覚的な価値まで大切にする点が特徴です。例えば、問い合わせ対応が丁寧だった、手続きが迷わず進んだといった積み重ねが、CXを形づくっていきます。目に見える機能に加え、顧客が感じ取る心地よさまで含めて考える視点こそ、CXを向上させるうえで重要です。
CX・CS・UX・DXの違い
CXと混同されやすいCS・UX・DXの違いについて、下表にまとめました。
| 用語 | 意味 | CXとの関係 |
|---|---|---|
| CX(顧客体験) | 商品の認知から購入・利用・アフターサポートまでに得る一連の体験 | 4つのなかで最も広い概念。UXを構成要素として含み、CSなどの指標で評価される |
| CS(顧客満足度) | 商品・サービスに対する顧客の満足度。アンケートなどで数値化され、指標として用いられる | CXの現状を測る指標。CXより対象範囲が狭い |
| UX(ユーザー体験) | 商品・サービスを利用する際に得る個別の体験 | CXを構成する要素の一つ。CXより対象範囲が狭い |
| DX(デジタル変革) | データやデジタル技術を活用し、製品・サービスや業務などを変革する取り組み | CXとは異なる概念だが、CX向上の手段になり得る |
これらの関係を整理すると、CSはCXの現状を評価する際に用いられる指標、UXはCXを構成する要素の一つ、DXはCXとは概念が異なるものの、CX向上の手段になり得るものと位置付けられます。
BtoB企業でCXが重視される理由
CXが重要視される理由は、市場競争力を維持・強化するためです。市場が成熟し、製品や価格による差別化が難しくなったことで、模倣されにくい顧客体験の質が競争力を左右するようになりました。類似製品が並ぶなかでは、顧客がどう感じたかが選択の決め手になります。
加えて、顧客が営業担当者を介さず、インターネットで自ら情報を集めて比較検討するようになったため、Webサイトや申し込みフォームといったデジタル接点における顧客体験が重要になってきました。口コミや比較サイトの影響も見過ごせません。
良質な体験は、既存顧客をつなぎとめるだけでなく、新規顧客の獲得にもつながります。だからこそ、BtoB企業にとってCXへの取り組みが欠かせないのです。
カスタマーエクスペリエンス(CX)の成功事例|BtoB・BtoC・デジタル接点別
ここからは、実在する企業6社の取り組みを紹介します。BtoC、BtoB、デジタル接点の3つに分けて取り上げるので、自社に近い立場の事例を探しながらご覧ください。
【BtoC】スターバックス|空間と接客でブランド体験を高める
スターバックスは、店舗を自宅や職場に次ぐ「サードプレイス」と位置付け、商品そのものを超えた体験価値を届けています。この体験は、商品、従業員の接客、居心地の良い空間という3つの要素で成り立っています。
どの店舗を訪れても一貫した「らしさ」の軸があるからこそ、顧客はコーヒーだけでなく、ホスピタリティや居心地の良さを求めて足を運ぶのでしょう。こうした体験がブランドへの愛着を育て、再来店や好意的な口コミにつながります。
飲み物という商品を売るだけでなく、過ごす時間そのものを価値に変えてCXを高めている好例といえます。
【BtoC】ニトリ|バーチャルショールームで購入前の体験を強化
ニトリは、公式通販の「ニトリネット」に、実店舗内のコーディネートルームを3D撮影した「バーチャルショールーム」を開設しました。顧客はショールーム内を360度見渡しながら移動でき、好みのコーディネートを探せます。
気になった商品のピンをクリックすれば、そのままECサイトで購入することも可能です。実店舗の楽しさと、インターネットならではの便利さを兼ね備えた、新たな顧客体験を実現しました。自宅での使用をイメージしやすくする工夫によって、納得感のある買い物体験につなげています。
【BtoB】SMAS|問い合わせ対応を年間1,800件効率化
カーリース業界のリーディングカンパニーであるSMAS(住友三井オートサービス)では、モビリティ管理システムのマスタ登録に関する年間1,800件もの問い合わせに、7名体制で対応していました。
そこで、Webシステム上に操作ガイドを実装し、顧客が自己解決できる導線を整え、わからない点をその場で確かめられるようにしました。問い合わせ対応の効率化により、コールセンターの負担が軽くなっただけでなく、顧客満足度の向上や、営業部門の提案活動を後押しする基盤づくりにもつながっています。
【BtoB】freee|オンボーディング改善で製品の定着率を向上
freeeは、クラウドサービスの提供開始当初から、導入や継続利用を支援するカスタマーサクセスに取り組んできました。顧客の規模や利用状況に応じて、ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチを使い分け、人とツールによる支援を組み合わせる進め方です。
freee請求書ではデジタルガイドを取り入れ、初回請求書作成率が135%改善しました。使い始めの段階でつまずきを減らす工夫が、利用開始の促進に結びついた事例といえます。
【BtoB】パーソルコミュニケーションサービス|エスカレーション90%削減
パーソルコミュニケーションサービスでは、コンタクトセンターのCRM画面に入力補助のガイドを実装しました。内容が特定できる項目は自動で入力し、判断が必要な項目にはトークスクリプトを表示する仕組みです。
入力ミスや名乗り間違いを防ぐ仕組みによって、オペレーターの心理的な安全性を確保しました。慣れていないオペレーターでも、画面の案内に沿って迷わず対応しやすくなります。
この取り組みにより、管理者(SV)へのエスカレーションを90%削減し、管理者層の工数削減にもつながりました。現場の負担を軽くする工夫が、組織全体の効率化に波及した事例です。
【デジタル接点】代々木ゼミナール|講座検索のしやすさを改善
代々木ゼミナールは、数多くの講座のなかから目的のものを探せる講座検索を公式サイトで提供しています。条件で絞り込めるため、受講を希望する人は迷うことなく目当ての講座にたどり着くことが可能です。
選択肢が多いサービスでは、この「見つけやすさ(ファインダビリティ)」が顧客体験を大きく左右します。目的の情報をすぐ探し出せるかどうかが、使い勝手の良さにつながるためです。
情報を探す段階でのつまずきをなくすことも、CX向上の重要な一歩といえるでしょう。
CX事例に共通する成功のポイント

ここまで紹介した事例には、共通する成功のポイントがあります。ここでは、顧客接点を横断した連携、デジタルと人の役割分担、改善サイクルを回す仕組みの3つの観点に分けて解説します。自社のCX改善に応用していきましょう。
顧客接点(タッチポイント)を横断で設計する
BtoBでは、意思決定に複数の関係者がかかわり、購買プロセスが長期にわたるため、接点ごとに体験を設計できているかどうかが成果を左右します。
企業や担当者のペルソナを設定すると、それぞれの接点でどこに課題があり、どこでつまずくのかをつかみやすくなるでしょう。かかわる人が変われば、求める情報も変わるためです。
BtoBとBtoCに共通するポイントは、オンラインとオフラインの接点を場面に応じて使い分けながらも、全体を通して一貫した体験を届けていく姿勢です。バラバラの対応にならないよう、接点をまたいで設計する視点が欠かせません。
デジタルと人の役割を切り分ける
顧客を、LTV(顧客生涯価値)や見込み度合いなどを基準にセグメントに分け、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチを使い分ける進め方が効果的です。
ハイタッチは、個別支援の優先度が高い顧客への個別対応にあてます。ロータッチは、セミナーなどを通じて1対複数でアプローチする支援方法です。テックタッチでは、ツールを使って多くの顧客を効率的にカバーしていきます。
これらは、顧客の状況や支援の必要性に応じてアプローチを切り分ける発想です。先に紹介したfreeeの事例のように、人とデジタルで役割を分担すれば、限られたリソースを活用しながら、幅広い顧客に対応できます。
成果指標を決めて改善サイクルを回す
CXは定性的な評価に流れがちですが、NPSなどの指標を使って顧客ロイヤルティや体験への評価を数値化すれば、現状を定量的にも評価できます。指標を継続して測り、その結果を現場の改善活動に活かす仕組みが有効です。
単に指標を測るだけで終わらせず、次の一手につなげる流れをつくることも重要です。短期と中長期の視点でKPIを設定しておけば、施策の効果を時間軸に沿って評価できます。改善サイクルを回し続ける仕組みがあってこそ、CXは着実に向上していきます。
CX(顧客体験)を向上させる施策例
他社の事例を取り入れる際は、幅広い業種で実績のある施策から検討していくとよいでしょう。ここでは、CX向上に役立つ代表的な4つの施策を紹介します。
顧客データを統合してパーソナライズする
部門やシステムごとに散らばった顧客データをCDPなどで一元管理すると、顧客一人ひとりの全体像を把握しやすくなります。特定の部署だけが情報を握っている状態では、顧客の姿を正しくつかめません。統合したデータをもとにすれば、興味や関心、購買の履歴に応じた情報を届けるパーソナライズが可能になるでしょう。
さらに、部門を越えてデータを共有すれば、どの窓口でも一貫した対応がしやすくなり、顧客の満足度も高まります。
デジタル接点の操作ガイド・UXを改善して離脱を防ぐ
Web申し込みや登録フォームは、入力の手間や不安から、途中で離脱が起きやすい接点です。あと少しで完了する場面でも、わずかな引っかかりで顧客が離脱することも珍しくありません。
離脱を防止するには、入力項目を減らし、自動補完や入力例の表示を取り入れ、リアルタイムでエラーを表示する対策が有効です。さらに、画面上で操作手順を案内するデジタルガイドがあれば、ユーザーは迷うことなく手続きを終えられます。
問い合わせ前に自己解決できる導線を整える
CXを高める手立ての一つが、顧客が自分で調べて解決できる仕組みを用意することです。
具体的には、自社サイトにFAQを設置して検索性を高める方法があります。ただし、FAQ自体が見つからなければ、結局は問い合わせが必要になるため、顧客の目に付きやすい場所に導線を設けましょう。また、チャットボットを設置すると、顧客の質問に応じて必要な情報を案内し、自己解決をサポートできます。
自己解決率が上がると、顧客は手間をかけずに目的を果たせる「エフォートレスな体験」を得られ、満足度の向上につながります。
顧客の声(VOC)を収集して改善に反映する
問い合わせやアンケート、SNSから顧客の声(VOC)を集め、改善の材料にしていきましょう。顧客が求める情報をFAQやWebサイトに反映できていないと、顧客は自己解決できず、問い合わせがかえって増えてしまいます。
声を拾って終わりにせず、次の改善へ回すことが大切です。FAQやチャットボットのログを分析し、問い合わせの傾向や改善すべき点を把握したうえで、優先度を付けて手を入れていくとよいでしょう。こうして顧客の困りごとを起点に改善を重ねる姿勢が、CXの向上につながります。
CX施策の実行を支えるデジタルアダプションプラットフォーム「テックタッチ」

ここまで紹介した4つの施策はいずれも効果が見込めますが、成果を出すには継続的な運用が欠かせず、担当者の工数がボトルネックになりがちです。
「テックタッチ」は、直感的な操作ガイドやナビゲーションによって、Webシステムやサイトの使いやすさを高める、国内シェアNo.1(※)のデジタルアダプションプラットフォーム(DAP)です。自社サービスの画面上にリアルタイムで操作の案内を表示し、ユーザーが迷わず目的の操作を終えられるよう支えます。
自己解決を支援することで、問い合わせ対応やサポートの工数を減らしながら、顧客満足度の向上につなげられます。また、利用開始後の定着率を高め、解約を抑える施策にも有効です。
※出所:株式会社アイ・ティ・アール「ITR Market View:コラボレーション/ナレッジ共有市場2025」デジタル・アダプション・プラットフォーム市場-従業員10,000人以上:ベンダー別売上金額シェア(2021~2025年度予測)
CX・顧客体験に関するよくある質問
CX改善に取り組む際によく寄せられる疑問をまとめます。
CX向上の効果はどう測定すればよいですか?
CXを数値化する調査指標として、NPS(顧客推奨度)、CSAT(顧客満足度)、CES(顧客努力度)などがあります。顧客がどう感じたかを、これらの指標で可視化しましょう。
さらに、LTV(顧客生涯価値)や解約率、リピート率といった行動データも組み合わせると、より多面的にCXを評価できます。
CX改善でよくある失敗は何ですか?
よくある失敗の一つは、部門間がサイロ化し、顧客データや責任が共有されないままCX改善の施策を進めてしまうことです。各部署が別々に動くと、顧客への対応にばらつきが生まれます。
もう一つは、デジタル接点だけに偏り、リアルの接点まで含めた一貫した体験を設計できていないことです。オンラインとオフラインに一貫性がないと、顧客は違和感を覚えます。
CXとCXM(顧客体験管理)の違いは何ですか?
CXは顧客が企業と接するなかで実際に感じる体験そのものを指します。これに対してCXM(顧客体験管理)は、CXを向上させるための戦略や施策、一連のプロセスを指します。
CXが「顧客の体験」であるのに対し、CXMはそれを「分析・最適化していく取り組み」という関係性です。
CX改善は何から始めればよいですか?
まずはCX改善の目的とゴールを決めたうえで、顧客像(ペルソナ)を定めます。次に、カスタマージャーニーマップで接点を洗い出し、どこに課題があり、どこでつまずくのかを特定しましょう。そのうえで、NPSや接点ごとの評価指標などを用いて現状を数値化し、改善すべき接点の優先順位を決めていきます。
いきなり大きく動くのではなく、小さく始めて効果を確かめながら、部門を越えて改善サイクルを回していくとよいでしょう。
BtoBとBtoCでCX施策はどう違うのですか?
設定するペルソナと重視すべきCX施策が変わります。
BtoBは、意思決定に複数の関係者がかかわるため、購買のプロセスが長く、複雑になりがちです。組織としてのペルソナと、担当者個人としてのペルソナの両方を設定したうえで、それぞれに応じたCX施策を検討することになるでしょう。
一方、BtoCはBtoBと比べて意思決定が比較的シンプルで、短期間に進む傾向があります。そのため、購入者の感情や利便性を踏まえた施策が重視されます。
CX事例に学び自社の顧客体験を改善しよう
CX(顧客体験)は、商品を知る段階から購入、利用、アフターサポートまでの体験全体を指します。製品や価格での差別化が難しくなるなか、企業の競争力を左右する要素として注目されています。
今回紹介した事例やポイントを手がかりにしながら、まずは自社の顧客体験のどこに課題があるのかを可視化することから始めてみてはいかがでしょうか。現状が見えれば、次に取り組むべき施策も検討しやすくなります。
顧客接点の改善をデジタルで進めたい方は、テックタッチのサービスもぜひご覧ください。



