
パーソルコミュニケーションサービス株式会社
パーソルコミュニケーションサービスは、コンタクトセンター運営や企業向けITサポート、ヘルプデスクなどのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供する企業です。人とテクノロジーの力を活用し、多様化・複雑化する企業課題や社会課題の解決に貢献。コンタクトセンターの設計・運営やデジタルマーケティング支援を通じて、企業の成長を支援しています。
https://persol.csl.co.jp/業務の中に支援を組み込み、利用データをもとに現場定着を実現。現場発の改善が続く体制へ
・複数システムをまたぐ顧客対応で、1回の対応あたり5〜10回のコピー&ペーストが発生し、貼り付け先の間違いや入力ミスにつながっていた
・マニュアル・手順書、二重チェック、運用変更の周知確認と、確認作業が何重にも重なり、ミス防止をスタッフ個人の注意力に依存していた
・業務の委託元であるクライアント企業のシステムは自社判断で改修できず、システム連携などの大規模な開発も費用面で現実的ではなかった
・「テックタッチ」で改善策をつくっても、忙しい現場では必ずしも使われず、改善策を定着させることが次の壁になった
・必要な注意事項、入力例、転記の自動化を作業画面上に実装し、業務そのものに支援を組み込む
・操作ガイドの再生回数や吹き出しの表示回数を定期的に確認し、利用率が低い案内は内容と表示条件を見直し
・各システムに表示される利用者名を分析対象に登録し、スタッフ単位の利用有無を把握して現場リーダーと個別にフォロー
・現場のメンバー自身が操作ガイドをつくれる状態を整え、他拠点へ展開
・ミス防止を個人に委ねず、仕組みで支える運用へ移行
・利用データをもとに操作ガイドの見直しを続け、対象業務全体で月間458時間相当の工数を削減
・現場から改善の声が上がり、現場主体で仕組みを育てる状態が生まれ、取り組みは半年で6拠点8部門・約200名に拡大
・法人向け窓口を担うセンターでは対象業務でのミス発生が0件、通話1件あたりの対応時間は約3分短縮
導入前の課題
複数システムをまたぐ転記とミス防止が、スタッフ個人の注意力に依存
パーソルコミュニケーションサービス株式会社は、複数企業の業務を代行するシェアード型コンタクトセンターとして、多様なサービスの窓口業務を担っています。全国10カ所のサポートセンターで、それぞれの窓口に合わせた運用を行っています。

パーソルコミュニケーションサービス株式会社 須賀 様、矢野 様
顧客対応を担うオペレーターは、1回の対応で電話システム、顧客管理システム、業務システム、メールと複数のシステムを行き来します。同じ情報を繰り返し入力するため、コピー&ペーストは1回の対応あたり5〜10回にのぼることもありました。貼り付け先の間違いや入力ミスが起きやすく、システム間を移動する時間の損失も小さくありませんでした。
ミスを防ぐ手立ても、オペレーターの負担となっていました。マニュアルや手順書、自分と他者で二重に確認するチェックリスト、運用変更を確認したかを管理するリストと、確認のための作業が何重にも重なっていました。
窓口ごとに運用が異なるため、確認すべき内容は増える一方でした。注意すべき点は把握していても、そのすべてを記憶して作業することは困難で、ミス防止はスタッフ個人の注意力に依存していました。
たとえば、クライアント企業から委託を受けて2023年5月に開始した法人向けの窓口では、2年間で問い合わせが月間630件から5,530件へと増加しました。件数が増えるほど業務は複雑化し、覚えるべきルールや確認すべき事項も増えていきます。ルールを覚えきれない、新人教育に時間がかかる、管理者に質問が集中し、その対応で改善に手が回らない。そうした状態が積み重なっていました。
改善を図るうえで壁となったのが、業務を請け負う立場ならではの制約です。日々操作するシステムの多くは業務の委託元であるクライアント企業のもので、自社の判断では改修できません。システム連携や自社システムへの一本化を提案しても、費用面で現実的ではありませんでした。
そこで着目したのが、システム自体を改修することなく、画面上に操作ガイドや入力時の注意事項を表示できる「テックタッチ」です。
活用方法と効果
業務への支援実装と利用状況の可視化で、現場に根づく運用を構築し、他拠点へ展開
「テックタッチ」の導入により、注意事項の表示や転記の自動化を進め、システムを改修せずに業務を改善できる環境が整いました。
一方で、運用開始後に見えてきたのが「現場への定着」という次の壁です。新しいツールを導入しても、すぐに使われるとは限りません。日々の業務が忙しい現場では、少しでも手間が増えると「今までのやり方の方が早い」と受け取られます。ツールは導入するより、定着させることの方が難しい。そのため、仕組みをつくるだけで終わらせず、次の4つの段階で定着に取り組みました。
段階① 業務の中に支援を組み込む
前提としたのは、支援を業務の外に置かないことです。マニュアルを別途用意するのではなく、作業画面の中に必要な情報を表示します。
「テックタッチ」は表示条件を細かく設定できるため、特定の選択肢を選んだ場合のみ確認事項を表示したり、入力欄に入力例を吹き出しで示したりできます。あわせて、転記元のシステムで取得した情報を転記先の入力欄へ自動で反映する仕組みも実装しました。
クライアント企業のシステムに手を入れることなく、現場の業務に即した支援を実現しています。
さらに、判断に必要な情報を1クリックで表示する支援も実装しました。これまで複数の画面を開いて確認していた作業を、作業画面上で完結できるようにしています。

(上段)応対内容に即した確認事項と、システムへの入力ルールを表示しミスを防止。(下段)チェック項目を抜き出した確認画面を用意し、見落としを防ぐ

選択された内容に応じて、確認事項を画面上に表示

転記元と転記先で項目の位置が異なるなど、煩雑なコピペ作業を自動化(イメージ)
段階② 利用データから「使われない理由」を探る
次に取り組んだのが、利用状況の可視化です。「テックタッチ」の分析機能で、操作ガイドの再生回数や吹き出しの表示回数を定期的に確認しました。
重視したのは、使われていない事実の把握で終わらせないことです。利用率が低い場合は、案内内容が分かりにくいのか、表示のタイミングが業務の流れに合っていないのかを検討し、内容と表示条件を見直します。
具体的には、利用率が低い操作ガイドについて、まず完了率を確認しました。完了率が低ければ操作ガイドの内容に、高ければ操作ガイドと業務の流れのずれに原因があると見立て、現場のスタッフにヒアリングします。そのうえで修正し、利用率を高めています。
現場ごとに業務の流れや困りごとは異なるため、一度つくった仕組みを固定せず、状況に応じて見直しを重ねています。
段階③ スタッフ単位で利用状況を把握し、現場リーダーが定着を支援
全体の数値だけでは、利用のばらつきは見えません。誰が使っていて、誰が使えていないのかを把握する必要がありました。
そこで着目したのが、多くのシステムで画面右上に表示される利用者名です。この表示名を「テックタッチ」の分析対象として登録することで、スタッフ単位の利用有無を把握できるようになりました。あるチームでは活用されている機能が、別のチームでは使われていないといった差も見えてきます。
可視化したデータは現場に共有しました。現場のリーダーとともに使い方を見直し、必要な相手には追加の説明やフォローを実施。チームや個人の状況に応じて支援を変えられるようになり、定着が広がりました。ツールを一方的に押し付けるのではなく、現場と一緒に使い方を育てる進め方を重視しています。
段階④ 現場のメンバー自身が改善をつくり、他拠点へ広げる
定着を進めるうえで大きかったのは、操作ガイドを現場のメンバー自身がつくれることです。「テックタッチ」は理解のハードルが低く、短時間の学習で作成できます。課題を見つけた人がエンジニアに依頼するのではなく、そのまま自分で形にできる。私たちはこれを「市民開発」と呼んでいます。
つくった支援はすぐに使われ、「便利」という声が返ってきます。効果がすぐ目に見えることで、業務の目的も「ミスをなくす」から「どう改善するか」へと変わり、「やらなくては」ではなく「やりたい」という気持ちで取り組めるようになりました。
現場からは「小さな面倒」の声が集まるようになりました。あるセンターでは3カ月で11種類の改善運用を追加し、現在も週1ペースで追加を続けています。
たとえば、処理ごとの期限などを定めたスケジュールはナレッジに掲載されており、内容は月ごとに変わります。そのためスタッフは、「スケジュール」と当日の日付を検索ワードに入力して探す作業を、1人あたり1日に数十回繰り返していました。そこで、業務ツール上の当日の日付を「テックタッチ」で取得し、検索ワードの入力を自動化しています。
このほか、メール内の担当者名の入力も自動化しました。手入力の手間が減っただけでなく、入力漏れも防いでいます。
この動きは、1つの部門から他の拠点へと広がりました。2025年10月に1部門で始まった取り組みは、半年後の2026年3月時点で6拠点8部門に展開し、利用者は2倍以上の約200名になりました。35名が参加する週次の横連携会議では、要望を挙げると数日後には改善されている、という状態も生まれています。
【効果】改善サイクルが定着し、月間458時間相当を削減
一連の取り組みにより、ミス防止は個人の注意力に頼るものから、仕組みで支えるものへと変わりました。操作ガイドも、利用状況を定期的に確認して見直す運用となり、作って終わりにしない改善サイクルができています。
現在は「テックタッチ」を使い、業務分析とボトルネックの特定、操作ガイド実装と自動化、効果測定というサイクルを継続的に回しています。
その結果、「テックタッチ」を活用した対象業務全体で、月間458時間相当の工数を削減しています。内訳は次のとおりです。
- 次のステップを案内するガイド:月47時間→27時間(43.3%削減)
- 自動転記:月210時間→99時間(52.6%削減)
- 操作自動化:月653時間→326時間(50.1%削減)
※時間は小数点以下を省略
品質面でも、操作の自動化で操作ミスを、自動転記で転記ミスを、操作ガイドで処理漏れを防いでいます。スタッフの負担軽減にもつながっています。
法人向け窓口を担うセンターでは、導入以降、対象業務でのミス発生は0件です(2025年10月〜2026年3月実績)。通話1件あたりの対応時間は15分28秒から12分25秒へと約3分短縮し、必要な情報を画面上で確認できるようになったことで、保留時間も45秒から35秒へと短くなりました。
センター内アンケートでは約8割のスタッフが工数削減を実感しており(作業工数が減った84%、ログ作成の手間が減った100%)、従業員満足度調査のネガティブ評価も5.92ptから3.17ptへと改善しています。
システム改修ではなく、「テックタッチ」と現場での小さな工夫の積み重ねで、ミス防止と効率化の仕組みの定着が支えられました。
今後の展望
「DX背中押し活動」として、使われるところまで見届ける
私たちはこの取り組みを「DX背中押し活動」と呼んでいます。ミスをなくす、マニュアルを整える、という発想だけでは十分ではありません。そのマニュアルが正しく使われているかまでを見届ける必要があります。
「テックタッチ」導入の目的も、ツールの追加そのものではなく、現場の負担を軽くし、間違いをその場で防げる「心の保険」がある状態で働ける環境をつくることでした。
ツールは作って終わりではなく、現場とともに育てるものだと考えています。整理する、使ってもらう、使える状態にする。そこまでを自分たちの仕事として、取り組みを続けていきます。
現場からの小さな一歩が、業務改善と意識の変化を促してきました。今後はこの進め方をより多くの拠点・部門へ広げ、現場発の改善が続く状態を定着させていきます。