大学でもDXの必要性が高まっています。しかし、出張・経費精算や購買、人事・労務といったバックオフィス業務では、紙やExcelを使った手作業や複雑な申請フローが残っているほか、既存システムの改修が難しいケースもあり、DXが思うように進まない大学も少なくありません。
大学DXを進める際は、単にシステムを導入するだけでなく、既存の業務を見直し、教職員が迷わず使える仕組みを整えることが欠かせません。デジタル技術やAIを適切に活用すれば、事務作業の効率化やミス・問い合わせの削減につなげられます。
本記事では、大学のバックオフィスDXに焦点を当て、メリットや効率化できる業務、推進時の課題、成功させるポイントを解説します。併せて、出張申請や購買業務を効率化した大学のDX事例も紹介します。
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大学DXとは
はじめに、大学DXという言葉が何を指すのかを整理しておきましょう。
大学DXの意味
大学DXとは、デジタル技術やデータを活用して、大学の教育・研究・運営などを変革する取り組みを指します。
ITツールを導入したり、書類をペーパーレス化したりするだけでは、本当の意味でのDXとはいえません。業務プロセスやサービスそのものを見直し、大学の運営を変えていくことに、DXの本質があります。
大学DXにおける教育・学習領域とバックオフィス領域
大学DXは、大きく2つの領域に分けられます。一つは、オンライン授業やLMS(学習管理システム)、デジタル教材などを扱う教育・学習領域のDXです。もう一つは、経理や人事、購買、出張、各種申請といった事務業務を対象とするバックオフィス領域のDXです。
本記事で扱うのは後者、つまり事務業務のDXです。教務や経理、窓口などの業務をデジタル化して職員の負担を軽くすることは、大学運営における重要なテーマになっています。
なお、DXの進め方を事例から学びたい方は、「DXとは?導入事例や4つのメリットから実現するポイントまでを解説」の記事も併せてご覧ください。
大学のバックオフィスDXを推進する3つのメリット

大学のバックオフィスDXを進めると、どのような効果が期待できるのでしょうか。おもなメリットを3つ解説します。
職員の事務作業を効率化できる
バックオフィスのDXが進むと、申請内容の入力や確認、転記、承認、問い合わせ対応、差し戻しといった一連の事務作業を効率化できます。
これまで単純作業に費やしていた時間を削減できるため、職員の残業や業務の滞留を減らすことにもつながります。
紙や手作業によるミス・属人化を減らせる
紙の申請書やExcelでの管理を見直し、申請・管理業務をシステム化すれば、入力漏れや転記ミスを防ぎやすくなります。併せて、業務フローや入力ルールを整理・統一することで、担当者にしかわからない属人的な業務を標準化できる点も見逃せません。
業務フローが整理・可視化されれば、引き継ぎや異動があっても業務が滞りにくくなり、組織として安定した運営が可能になります。
教育・研究や学生支援など重要な業務に注力できる
定型的なバックオフィス業務が減れば、職員は本来注力すべき業務に時間を割けるようになります。
教育・研究の支援や学生サービスの充実など、大学の価値を高める仕事にリソースを振り向けられることは、DXがもたらす大きな成果の一つです。
大学のバックオフィスDXで効率化できるおもな業務

では、大学のバックオフィスDXによって、具体的にどのような業務を効率化できるのでしょうか。代表的な5つの業務を掘り下げます。
出張・経費精算業務
教員の学会参加や研究活動にともなう出張に関する申請・精算は、大学において件数の多い業務の一つです。出張申請から旅費の計算、経費精算までをデジタル化すれば、申請者と事務担当者の双方の手間を減らせます。
領収書などの必要書類の確認や承認フローもシステム上で完結できるようになり、処理スピードが上がるでしょう。
購買・物品調達業務
研究備品や消耗品などの購入申請も、効率化の効果が期待できる領域です。見積書や添付書類の確認、承認、発注といった一連の流れをシステム化することで、処理にかかる時間を短縮できます。
購買業務では入力の不備による差し戻しが発生しやすいため、入力を支援する仕組みも併せて導入すると、さらなる効果を期待できます。
人事・労務業務
勤怠管理や各種届出、雇用・人事情報の管理といった人事・労務の業務も、デジタル化の対象になります。
特に年末調整や教職員からの各種申請への対応は、時期によって業務量が集中しがちです。システムで自動化・省力化できれば、繁忙期の負担を軽減できます。
経理・会計業務
支払いや予算管理、会計処理、請求書の処理なども、効率化が見込める業務です。大学には、研究費の扱いをはじめとする独自の複雑なルールや承認フローが存在します。
財務会計システムを軸に業務を整理し、こうした大学特有の事情に対応できる形でデジタル化を進めることが求められます。
問い合わせ・マニュアル対応
システムの操作方法に関する問い合わせや、規程・申請方法の確認、マニュアルの案内などは、事務部門の隠れた負担になっています。
FAQやチャットボットの整備に加え、システムの画面上で操作を案内するナビゲーションを取り入れれば、教職員の自己解決を促し、問い合わせ対応の工数を減らせます。
FAQについて詳しく知りたい方は、「社内FAQの作り方の5つのポイントからおすすめツールを紹介」の記事も参考にしてください。
大学のバックオフィスDXを進めるうえでの課題
バックオフィスDXによって効率化できる業務は多い一方で、その実現には大学特有の難しさもあります。ここでは、大学が直面しやすい5つの課題を整理していきましょう。
紙や従来の業務フローが残っている
大学の事務現場には、紙の申請書や押印、Excelでの管理、メールでのやり取り、部署ごとの独自ルールといった従来のやり方が今も残っています。
こうした業務をそのままシステムに載せ替えるだけでは、非効率な部分が残ってしまいます。デジタル化の前に、業務フローそのものを見直す視点が欠かせません。
大学独自のルールや承認フローが複雑である
研究費や出張、購買などの業務には、大学ごとに定められた細かなルールがあります。部門や役職に応じて承認の経路が変わるうえ、入力項目や必要書類も多いのが実情です。
この複雑さが、システム化を難しくする要因になっています。また、システム化できたとしても、操作が複雑になり、利用者のつまずく原因になることもあります。
教職員によってデジタルスキルに差がある
教職員のITリテラシーには個人差があります。特に、出張申請や年末調整のように利用頻度が低いシステムは、教職員が前回の操作方法を忘れてしまいがちです。
マニュアルの整備や研修を行っても、それだけでは操作方法が定着しない場合もあり、現場からの問い合わせが減らない一因になっています。FAQページの設置やAIチャットボットの導入など、自己解決できる環境も併せて整えることで、サポートの負担を減らす工夫が求められます。
システムを導入しても利用が定着しない
システムの導入をもって、DXが完了するわけではありません。操作が複雑なままだと、問い合わせや入力不備による差し戻しが発生し続けます。
特に、画面上の案内や入力支援を設置・変更するたびにエンジニアへの依頼が必要なシステムでは、利用状況に応じた改善をすぐに反映できません。現場の声をもとに使いやすさを改善したくても、設定やカスタマイズの難しさが利用定着の妨げになる場合があります。
システム導入後の運用まで含めて、DXの取り組みを計画する必要があります。
DXの推進体制が大学によって異なる
大学DXでは、情報システム部門と業務部門の連携が十分でないと、施策が現場に定着せず、DX推進につまずくことがあります。
例えばICTとバックオフィスDXを同じ部署が担うケースがある一方で、別部署・別担当で進めるケースも見られます。自大学の体制に合った役割分担と連携の仕組みを整え、関係部門が協力して進められる体制をつくることが大切です。
大学のバックオフィスDXを成功させる4つのポイント

こうした課題を乗り越え、大学のバックオフィスDXを成功させるために押さえておきたいポイントを4つ解説します。
現状の業務と課題を洗い出す
DXツールありきで始めるのではなく、まず現状の把握から取り組みましょう。業務フローを可視化し、時間がかかっている業務、ミスや差し戻しが多い業務、問い合わせが集中している業務を洗い出します。
課題が具体的に見えれば、どこから手を付けるべきか判断しやすくなります。
DXの目的と優先順位を明確にする
大学のバックオフィスDXでは、システムを導入すること自体を目的にしてはいけません。業務時間の削減、差し戻しの削減、問い合わせの削減など、実現したい成果を具体的に設定しましょう。
目的が定まれば優先順位も決まり、限られた予算と人員を効果の大きい取り組みに集中させられます。
システムの使いやすさと利用定着まで考える
システムを選定・導入する際は、機能だけでなく操作性を重視することが大切です。教職員が迷わず利用できる環境を整えなければ、せっかくのシステムも使われなくなってしまいます。
効果的な対策の一つが、操作画面上で必要な情報を提供する操作ガイドやナビゲーションの導入です。マニュアルを参照したり、問い合わせをしたりする手間を減らせるため、利用定着が進みやすくなります。
スモールスタートで効果を検証する
最初から全学に展開するのではなく、一部の部署や業務から導入を始めるのが堅実な進め方です。小さく始めて効果を検証し、現場からのフィードバックを集めながら改善していきましょう。
成果を確認したうえで全学へ広げれば、大きな失敗を避けつつ、学内の理解も得やすくなります。
大学DXによるバックオフィス業務効率化の事例
ここからは、テックタッチを活用して大学のバックオフィス業務を効率化した事例を紹介します。
テックタッチは、既存システムを改修することなく、操作ガイドを画面表示できるデジタルアダプションプラットフォーム(DAP)です。教職員が使う出張・購買・経理などの業務システムにノーコードで導入でき、AI機能「AI Hub」も利用できます。
早稲田大学|出張申請システムの操作時間を短縮
早稲田大学では、約4,000名の教職員・学生が利用する出張申請システム「e-Trip」において、月およそ5,100件の申請を処理しています。入力項目が多いことから、入力エラーや差し戻しの発生、申請にかかる時間が課題となっていました。
そこで同大学は、テックタッチを導入。画面上のガイドで入力を支援するとともに、利用状況をデータで把握しながら継続的な改善につなげています。
学校法人立命館|生成AIを活用して購買申請の入力不備を削減
学校法人立命館では、購買管理システム「Coupa」を利用する機会が少ない教職員に、申請ルールが定着しにくいという課題を抱えていました。
この解決策として導入したのが、「テックタッチ AI Hub」です。AIが入力内容をリアルタイムで解析し、その場で修正を促す仕組みを整えました。
運用開始から2週間で、AIによる入力支援・ナビゲーションの利用は1日平均100回を突破し、問い合わせや差し戻しにかかる工数の削減につながっています。
大学DXに関するよくある質問
最後に、大学DXについてよく寄せられる3つの質問にお答えします。
大学DXと教育DXの違いは?
大学DXは、教育・研究・運営など、大学全体のデジタル変革を指す広い概念です。教育DXは大学DXの一部で、デジタル技術を取り入れた授業やLMSの活用など、教育・学習の領域に焦点を当てた取り組みを指します。
出張・購買・経理などを対象にしたバックオフィスDXも、大学DXの一部に位置づけられます。
大学のバックオフィスDXは何から始めればよい?
まずは出張精算や購買申請など、時間がかかる業務やミス・差し戻しの多い業務を洗い出すことが第一歩です。
ツールの導入自体を目的にせず、業務時間の削減や問い合わせの削減といった具体的な成果を設定したうえで、優先度の高い業務から着手するとよいでしょう。
既存システムを入れ替えなくてもDXは進められる?
進められます。システムを入れ替えなくても、既存システムに操作ガイドやAIによる入力支援をあと付けすることで、教職員が迷わず使える環境を整えることが可能です。
多額の改修コストをかけずに、利用の定着や業務効率化を実現する方法として有効といえます。
大学DXでバックオフィス業務の効率化を進めよう
大学DXは教育分野だけの話ではなく、大学運営を支えるバックオフィス業務においても重要な取り組みです。出張・購買・経理などの業務をデジタル化すれば、職員の負担を軽減し、教育・研究支援に注力できる体制をつくれます。
その際は、現状の業務と課題を洗い出し、目的と優先順位を定めたうえで、スモールスタートで着実に進めていくことが重要です。併せて、システムの導入だけで終わらせず、利用者が使いこなせる環境まで整えることを忘れてはいけません。
既存システムを活かしながらDXを進めたい大学は、操作ガイドやAIによる入力支援をあと付けできるテックタッチの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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