システム開発にはさまざまな手法が存在しており、それぞれに特徴や向き不向きがあります。自社のプロジェクトに応じて適切なシステム開発の手法を選択することは、プロジェクトの成功に大きく影響します。
そのため、システム開発の代表的な6つの手法が持つメリット・デメリットを理解したうえで、それぞれの特色に合った選択肢を選ぶことがベストです。
この記事では、システム開発における代表的な6つの手法を解説し、メリット・デメリット、最新のトレンドをご紹介します。
システム開発の代表的な6つの手法とは?
システム開発の代表的な6つの手法は以下のとおりです。ここでは、それぞれのシステム開発手法が持つ特徴について解説します。
1. ウォーターフォール型開発
ウォーターフォール型開発とは、滝のように上から下へ順序立てて開発を進める手法です。各工程を順番に完了させていくため、計画が立てやすく進捗管理が容易であり、大規模なプロジェクトや要件が明確なプロジェクトに適しています。
ウォーターフォール型開発では、全体を通して「要件定義→設計→開発→テスト→運用」という流れで進むことが一般的です。予算等の管理はしやすくやりやすくなるものの、前提条件に変更があると計画全体をやり直す必要があるため、工程の後戻りは想定されていません。
2. アジャイル型開発
アジャイル型開発とは、短いサイクルで開発とテストを繰り返しながら、柔軟に開発を進める手法です。2週間ごとなど一定の間隔を決めて、その都度レビュー・改善を取り組みながらシステム開発を行うため、その都度調整しながら進めたいプロジェクトに適しています。
アジャイル型開発では、機能単位の細かい部分で「要件定義→設計→開発→テスト」を行うことが一般的です。仕様変更にも柔軟に対応しやすいため、変化の激しいプロジェクトに向いている一方で、期間が長引くと各開発のクオリティにばらつきが生まれたり、スケジュール管理が難しくなったりします。
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3. プロトタイピング型開発
プロトタイピング型開発とは、実際に動く試作品(プロトタイプ)を作成し、クライアントやユーザーからの意見を取り入れながらシステムを作り上げていく手法です。早い段階で完成イメージを伝えられるため、開発前にクライアントとのイメージをすり合わせたいプロジェクトに適しています。
プロトタイピング型開発では、完成前の仕様変更をほかの開発手法に比べて抑えられるため、スケジュールの遅延や予算コストの超過を抑えやすいのが特徴です。
4. スパイラル型開発
スパイラル型開発とは、システム開発を機能単位に分割し、重要な機能から順に開発していく手法です。各機能に対して要件定義・設計・開発・テスト・レビュー・改善といった工程を繰り返し、製品の完成度を段階的に高めていく点にあります。スパイラル型開発では、アジャイル開発と同じような手法を取り入れているものの、「早い段階からクライアントの評価を受ける」という違いがあります。
早期段階はプロジェクトメンバー間だけで開発サイクルを繰り返すアジャイル開発に比べて、スパイラル型は早期からクライアントにプロトタイプを提供するのが違いです。いわばスパイラル型開発は、アジャイル型開発よりも早い段階からクライアントを巻き込んで開発を進める手法と言えます。
5. DevOps(デブオプス)
DevOps(デブオプス)とは、「開発(Development)」と「運用(Operations)」担当が密に連携をして機能を開発していく手法です。
従来の開発手法では、開発チームと運用チームがそれぞれ独立して作業を進めることが多く、コミュニケーション不足や連携不足による問題が発生しやすい点が課題でした。開発は新機能を、運用は安定したサービスを求めるため、意見の対立を生んでいたケースシーンも珍しくありません。
DevOpsでは、チームとして密に協力し合うことで、開発・運用のプロセス全体をスムーズに進める取り組みを行います。各工程を効率化するためにツールを導入するケースも多くなっており、人的リソースに余裕を生んでさらなる品質向上を期待できます。開発手法というよりも、DevOpsは企業としての考え方や文化など、組織的な面を含めた幅広い概念です。
6.MVCモデル
MVCモデルとは、プログラムを「Model(モデル)・View(ビュー)・Controller(コントローラー)」と以下の3要素に分割して管理する設計手法です。それぞれの頭文字を取って「MVC」と呼ばれます。
MVCモデル |
Model (モデル) データの管理や操作など、ビジネスロジックを担当。データベースとのやり取りやデータ登録などを処理View (ビュー) ユーザーインターフェース(UI)を担当。ユーザーに情報を表示したり、ユーザーからの入力を受け取ったりする実際の操作画面の構築Controller (コントローラー) ユーザーからの入力を受け取り、モデルとビューを連携させる処理の担当。モデルからデータを取得してビューに渡し、ビューからの入力をモデルに伝える役割を担う |
MVCモデルでは、上記の3つに分けてプログラムを管理するため、システムの保守性を高められる特徴があります。コンポーネントごとに独立したテストを実施でき、品質管理を高められるのがポイントです。
一方で、適切な相互管理を行う必要があり、負担が大きいため特に大規模なプロジェクトには向いていません
システム開発における各手法のメリット・デメリット
システム開発における代表的な手法は以下のとおりです。ここでは、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
開発手法 | メリット | デメリット |
ウォーターフォール型開発 | ・計画が立てやすい ・進捗管理が容易 ・専門性の高い人材を確保しやすい |
・変更に対応しにくい ・手戻りによるコスト増 ・開発期間が長くなる場合がある |
アジャイル型開発 | ・柔軟な対応が可能 ・チームメンバーが役割に集中できる |
・コードの分割や統合に工数がかかる場合がある ・全体設計が難しくなる場合がある |
プロトタイピング型開発 | ・イメージ通りのシステムを開発できる ・手戻りを減らし、開発効率を高められる |
・時間とコストがかかる場合がある ・試作品にこだわりすぎると、開発が遅れる場合がある |
スパイラル型開発 | ・仕様変更や機能追加に柔軟に対応できる ・プロジェクトのリスクを軽減できる |
・時間とコストがかかり、開発期間が長くなる場合がある ・管理が複雑になる場合がある |
DevOps(デブオプス) | ・システムの安定稼働を維持しながら、新機能の開発や改善を迅速に行える ・ツールなどを利用して業務効率化を実現できる |
・チーム連携がうまくいかないと、品質低下や開発遅延につながる可能性がある ・全体のスケジュール感を把握しづらい |
MVCモデル | ・並行開発や部分的な修正が容易 ・コードの可読性や保守性が高く、再利用性も向上する |
・導入までの手間が掛かる ・開発の全体像が見えにくくなり、本来の目的から逸脱するリスクもある |
1. ウォーターフォール型開発のメリット・デメリット
メリット |
・計画が立てやすい ・進捗管理が容易 ・専門性の高い人材を確保しやすいメリット |
デメリット |
・変更に対応しにくい ・手戻りによるコスト増 ・開発期間が長くなる場合があるデメリット |
ウォーターフォール型開発は、綿密な計画に基づいて進捗管理がしやすい点と、事前に必要なスキルや人数を予測できるため人材確保も容易な点がメリットです。
一方で、計画変更や仕様変更への対応が難しいことや、後工程での不具合修正が前工程への影響を大きくする点はデメリットです。修正コストが増大する可能性が高く、万が一変更があれば大幅な納期遅延は避けられません。
2.アジャイル型開発のメリット・デメリット
メリット |
・柔軟な対応が可能 ・チームメンバーが役割に集中できるメリット |
デメリット |
・コードの分割や統合に工数がかかる場合がある ・全体設計が難しくなる場合がある |
アジャイル型開発は、小規模な開発サイクルを繰り返すことで、顧客の要望や市場の変化に柔軟に対応できる手法がメリットです。また、優先度の高い機能から開発・リリースするため、迅速な市場投入も実現できます。
一方で、初期段階での全体像が把握しづらく、開発の方向性がずれる可能性がある点はデメリットです。各段階のコード分割・統合に工数がかかるほか、短い開発サイクルと頻繁な変更により、進捗管理が複雑になる場合がある点もデメリットとしてあげられます。
3. プロトタイピング型開発のメリット・デメリット
メリット |
・イメージ通りのシステムを開発できる ・手戻りを減らし、開発効率を高められる |
デメリット |
・時間とコストがかかる場合がある ・試作品にこだわりすぎると、開発が遅れる場合がある |
プロトタイピング型開発は、試作品を修正しながら開発を進めるため、仕様変更や機能追加に対応しつつ完成品のイメージを固められる手法がメリットです。試作品を通じて顧客と開発側の認識を合わせ、イメージの齟齬を減らせます。
一方で、試作品を完成させるためのコストや作り直し、修正が繰り返されると、開発期間やコストが増大する可能性がデメリットです。試作品によって顧客の期待値が上がりすぎると、さらなる修正要求につながり、開発が長期化するケースもあります。
4. スパイラル型開発のメリット・デメリット
メリット |
・仕様変更や機能追加に柔軟に対応できる ・プロジェクトのリスクを軽減できるメリット |
デメリット |
・時間とコストがかかり、開発期間が長くなる場合がある ・管理が複雑になる場合がある |
スパイラル型開発は、小規模な開発サイクルを繰り返してアップデートすることで、顧客の要望を反映しやすく、満足度の高いシステムを提供できる手法がメリットです。各サイクルでリスクを評価・対応することで、プロジェクト全体の失敗リスクを軽減できるメリットもあります。
一方で、頻繁な修正や変更は開発期間やコストの増大につながる点がデメリットです。その都度のシステム開発によって、複数サイクルの進捗管理や各工程のコストが発生します。
5. DevOps(デブオプス)のメリット・デメリット
メリット |
・システムの安定稼働を維持しながら、新機能の開発や改善を迅速に行える ・ツールなどを利用して業務効率化を実現できるメリット |
デメリット |
・チーム連携がうまくいかないと、品質低下や開発遅延につながる可能性がある ・全体のスケジュール感を把握しづらい |
DevOpsは、開発チームと運用チームの連携により、高品質なシステムをリリースできる点がメリットです。ツールなどを利用した作業効率の改善と、チーム間の密な連携によって無駄な作業を削減し、開発期間を短縮できる可能性もあります。
一方で、開発チームと運用チームの連携が不足すると、コミュニケーションミスや責任所在の曖昧さによって、プロジェクトに悪影響を与えるリスクも否定できません。スケジュール調整の課題など、適切に運用できるかどうかの問題がデメリットとして残ります。
6. MVCモデルのメリット・デメリット
メリット |
・並行開発や部分的な修正が容易 ・コードの可読性や保守性が高く、再利用性も向上する |
デメリット |
・導入までの手間が掛かる ・開発の全体像が見えにくくなり、本来の目的から逸脱するリスクもある |
MVCモデルは、各開発担当を事前に割り切って割り振れるため、コードの可読性や保守性を高めてわかりやすく整理しやすいのがメリットです。一部コンポーネントに修正が必要でも、小分けにメンテナンスできるため部分的な修正・並行開発を行えます。
一方で、実際にMVCモデルを採用するには、システム開発の環境を3つの要素に分ける必要があります。コーディングなども含めて分ける作業が発生するため、複雑な場合はより一層の手間が掛かる点がデメリットです。また、全体像が見えにくくなり、開発本来の目的からそれてしまうケースもあります。
システム開発の最新のトレンド
ウォーターフォール型システム開発が人気の手法だった過去に比べて、近年の最新トレンドでは「アジャイル型開発」「DevOps」「DevSecOps」「ノーコード/ローコードツールの導入」のような手法が良く取り入れられています。近年の最新トレンドでは、システム開発のシーンにおいて特に「DevOps」の手法がよく取り入れられているのが現状です。
≫≫ システム開発の効率化させる方法とは?原因から解決策までを解説
≫≫ システム開発のコスト削減方法とは?コスト高騰の原因から削減のポイント
日本では企業がDevOpsの採用を増加
2022年にIDC Japanが行った調査によると、484社のうちDevOpsを実践している企業は59.3%を占めています。2017年時点では20%前後だった採用率に比べて、近年では多くの企業が導入を進めているのが現状です。DevOpsの導入検討中も21.7%と、今後も増加傾向にあるとされています。
また、合わせてあわせてローコード・ノーコード開発ツールを活用し、運用担当が開発担当の負担を和らげる取り組みも進められています。
DevSecOpsの参入
DevSecOpsとは、開発チームと運用チームが密に連携して開発期間を短縮する「DevOps」という開発スタイルに、セキュリティ対策も統合した手法です。これにより、セキュリティを確保しながらも、開発スピードを維持できます。具体的には、システム開発の各段階(要件定義、設計、実装、テスト、リリース、運用)で、脆弱性が入り込むリスクを減らすために、それぞれの段階に適したセキュリティ対策を組み込んでいきます。
DevOpsは、状況を見ながらシステムを安定稼働させつつ、必要に応じて必要な機能をスピーディに提供できるのがメリットです。しかし、近年ではランサムウェアを始めとしてさまざまなサイバー攻撃が生まれています。そこで、トラブルを最小限に抑えて素早いシステム変更を実現するために、「DevSecOps」と呼ばれるシステム開発の手法が注目を集めています。セキュリティ性をもたせたまま機能をスピーディに追加できるため、セキュリティトラブルで企業としての信用・価値を落とすリスクを減らせるのが特長です。そのためには、開発・運用・セキュリティチームが密に連携できる環境を構築する必要があります。
ノーコードツール導入による改修
従来のシステム開発では、専門的なプログラミングスキルを持つエンジニアが必要不可欠でした。しかし、近年では専門知識がなくてもアプリケーション開発を可能にする「ノーコード・ローコードツール」が登場しており、その需要が急速に高まっています。
ノーコードツールは、視覚的な操作で簡単にアプリケーションを作成できるため、開発期間の短縮やコスト削減に貢献します。また、ビジネス部門の担当者自身がアプリケーション開発に携わることで、ニーズに合致したシステムを迅速に構築できるのもメリットです。
DevOpsでは開発・運用がそれぞれ密な連携を必要としていますが、ユーザーから寄せられた機能を実際に追加するうえで、「開発リソースが足りない」と頭を悩ませているシーンも珍しくありません。そこで、ノーコードツールを導入すれば、現場担当者レベルでいくつかのシステム改修を行いやすくなります。
高い専門的知識がなくとも開発に携われるため、ユーザーの要望へ柔軟に応えられるのが魅力です。特に、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業では、ノーコードツールの活用でビジネスのスピードアップや業務効率化を実現できるため、導入が加速しています。
≫≫ ノーコードとは?3つのメリットや注意点からローコードとの違いを簡単に解説
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システム開発における手法のまとめ
システム開発には様々な手法が存在し、それぞれにメリット・デメリットがあります。どの開発手法が良いか悪いかではなく、プロジェクトの目的や規模、予算、期間などを考慮し、最適な手法を選択することが重要です。例えば、大規模なシステム開発で要件が明確な場合はウォーターフォール型開発が適しているかもしれませんし、変化の激しい市場に対応する必要がある場合はアジャイル型開発が適しているかもしれません。
また、顧客の要望を細かく反映させたい場合はプロトタイピング型開発やスパイラル型開発が有効でしょう。さらに、開発と運用の連携を強化し、迅速なリリースと安定稼働を実現したい場合はDevOpsの取り組みが必須です。もし、簡単な改修であれば、費用対効果の高いノーコードツールの導入も選択肢のひとつです。「テックタッチ」をご活用いただければ、UI/UXの簡単な改修もプログラミングなしで実現できます。
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