
島根県
島根県は、中国地方の北部に位置する人口約62万人の県です。国宝に指定されている出雲大社や松江城などをはじめ、世界遺産・日本遺産・ユネスコ無形文化財などが数多く認定・指定されており、豊かな歴史と文化を有しています。
令和8年2月の財務会計システムの更新にあわせ、システムの使い勝手向上と運用業務の内製化に向けた取り組みを進めています。
デジタルガイドを認知する職員の51.3%が、業務時間やストレスの削減を実感
・財務会計システムの更新に伴うMicrosoft Edge対応により、一部操作感や操作方法が変わり、問い合わせの急増が懸念されていた
・同時に新規導入した電子請求システムは民間企業向けのクラウドサービスのため、自治体独自の業務に合わせたカスタマイズには制約があり、運用上の課題が数多く予見されていた
・システム改修を待たずに、職員自身が操作性や運用を改善できる仕組みが必要だった
・初期パスワードや印刷設定など、移行直後に問い合わせが集中する箇所へ操作ガイドや吹き出しで案内を表示
・決裁ルートの選択や記載例の入力を自動化し、差し戻しの原因となる誤りを未然に防止
・電子請求システムにある、意図しない支出データ連携や追加費用の原因となるボタンを隠し、不適切な事務処理と想定外の費用発生を防止
・計141件の操作ガイドを職員が内製開発し、運用状況に応じて随時修正
・一般職員アンケートで51.3%が「業務の時間やストレスを削減できている」と回答
・システム更新に伴う問い合わせを、事前の想定よりも大幅に抑制
・稼働時点で作成した106件の操作ガイドのうち45件を運用開始後に改善。問い合わせ発生当日の修正も実現
・他システムへの導入も希望する声が出るなど、職員側の改善意欲につながった
導入前の課題
財務会計システム更新と電子請求システム導入で、旧システムとの相違点や業務とのギャップが課題に
島根県では、令和8年2月より第2期財務会計システムを稼働開始しました。
選定の結果、前期と同じパッケージシステムを基とすることになったため、基本的な操作は大きく変わらず、所管部門としては一定の安心感がありました。一方で、旧システムは「使いづらい」との声が寄せられていたことに加えて、更新に伴うMicrosoft Edge対応により一部操作感や操作方法の変更等が発生することから、問い合わせの急増を懸念していました。
また、新システムへの移行に合わせて、電子請求システムを新規導入しました。
発注から請求までの流れを島根県・事業者の双方が全てシステム上で処理するもので、島根県では10万円未満の消耗品に限って利用することとし、事業者から請求を受けたデータを財務会計システムに連携することで、自動で支出が行われる仕組みを実現しました。
業務効率化のメリットが大きい一方で、民間企業向けのクラウドサービスを導入したため、カスタマイズを柔軟に行えるとは言えず、島根県で利用するにあたって数多くの課題が予見されていました。
そのような中で、令和6年9月頃、テックタッチ社よりデジタルアダプションプラットフォーム「テックタッチ」の紹介を受け「これは使える!」と直感しました。
財務会計システムではプログラムに影響を与えずに操作性を改善することができ、電子請求システムでは早期に運用定着を図り、業務削減効果を最大化できるため、「テックタッチ」は島根県が直面するシステム導入と活用課題の状況に極めて合致した解決策であり、必須のツールだと考えました。
また、これらの改善を職員の内製開発によって迅速に実現できることも大変魅力的でした。
既に新システム構築・保守の長期継続契約を締結済であり、基本設計を進めていたところでしたが、各種調整のうえ、令和7年5月に変更契約を締結し、「テックタッチ」の導入を開始しました。
結果的にこの判断は大正解だったと振り返っており、調整に応じてくださった新システム事業者に感謝しています。

島根県 総務部 情報システム推進課 業務システム改善スタッフ 上席調整監 栂 博 様(令和7年度は財務会計システム開発スタッフに在籍)
島根県 出納局 会計課 財務会計システム開発スタッフ 主任 杉原 誠哉 様
活用方法と効果
想像以上の大活躍、運用開始当日から実感した内製開発の利点
新システムの稼働に合わせて、操作ガイドを内製開発し、急増する懸念のあった問い合わせを想定よりも大幅に抑えることができました。
特に電子請求システムは、県のルールに則った正しい支出データを作成する上での注意点が多く、それらをすべて運用でカバーするのは現実的ではなかったため、「テックタッチ」の柔軟性・汎用性に大いに助けられました。
一般職員アンケートでは、51.3%の職員が「デジタルガイドの活用により財務会計システムによる業務の時間やストレスを削減できている」と回答(※)しています。
※令和8年7月実施、回答者数890名のうちデジタルガイドを認知している職員による回答の集計結果
操作ガイドの作成は、多少の慣れは必要ながらも、Excelのマクロを作成すること等と比べると圧倒的に簡単で直感的です。
テックタッチ社のレクチャーや各種支援も充実しており、一般的な行政職員によって内製開発が可能だと感じます。
実際、システム稼働時点で当課が作成した操作ガイドは106件にのぼり、そのうち45件は運用開始後の状況を踏まえて改善を加えています。
運用開始当日に、利用者の声を受けてその場で修正した操作ガイドもあり、すぐに改善ができるという内製開発ならではのメリットを実感しました。
令和8年8月時点では追加実装したものを含め141件の操作ガイドを運用しています。
操作ガイドにより、稼動直後の混乱防止・業務効率化・問い合わせ削減・差し戻し削減・不適切事務の防止・委託費増の防止といった効果が得られています。
これらが財務会計システム、電子請求システムでどのような課題を解決したのかを紹介します。
【財務会計システム】

執行伺い起案時の「内容・積算欄」 の記載例を挿入することで記載漏れを防止
①初期パスワードに関する案内(稼動直後の混乱防止・問い合わせ削減)
新システム移行により管理者側で全職員のパスワードを新規設定する必要がありました。
操作画面上に初期パスワードのルールを案内する操作ガイドを実装したことにより「初期パスワードは何か」といった問い合わせを大幅に減らすことができたと考えています。
変更後のパスワードを失念した職員向けには、初期化申請に必要となる様式と、提出先の情報を用意し、初期化をスムーズに行えるようにしました。
一方で、旧・新システムのログイン画面がほとんど同じ見た目のため、新システムと気付かずにパスワード初期化依頼が提出される事態が発生。
そこで、「まずは初期パスワードでログインを試みる」よう、操作ガイドに追記しました。
想定外の状況が発生した当日に対応でき、「テックタッチ」のおかげでスピード感を持って課題解決策を講じられたと評価しています。
②印刷設定に関する案内(稼動直後の混乱防止・問い合わせ削減)
ブラウザ移行した影響で印刷する度に用紙サイズの設定が必要になり、特に印刷サイズの厳密さが求められる帳票に関しては、注意喚起が必要だと見通していました。そこで、印刷を行うごとに設定が必要であることと、設定方法を解説したマニュアルへのリンクを表示。適切な設定を必要なタイミングで促すことができました。
掲示板等での周知では、見落としから問い合わせが殺到してしまっていたと予想されるため、問い合わせ対応負荷が大きく軽減されました。
③決裁ルート設定の支援(業務効率化・問い合せ削減)
元々問い合わせが多かった決裁ルートの設定について、手順を案内する操作ガイドを設置しました。
初歩的な問い合わせの発生を抑制し、1から手順を繰り返し回答する工数を削減できました。
④相手方登録の誤り防止(業務効率化・差し戻し削減)
選択肢の「法人」と「商号・屋号」を適切に選択できず差し戻しとなるケースが多かったため、判断の参考となる説明を吹き出しで表示。
選択ミスを防止し、差し戻しの削減に寄与しています。
⑤執行伺い起案時の「内容・積算欄」 入力内容整合(業務効率化・差し戻し削減)
起案する際に記載が必要な項目が不足しているため、差し戻されるケースがありました。
そこで、初心者を想定し、記載例を自動挿入する操作ガイドを実装することで、差し戻しの発生を抑制しています。
⑥備品購入時の物品登録案内(不適切事務の防止)
備品購入後に本来必須である物品登録を忘れてしまうケースがあったため、購入手続き時の画面に注意喚起を掲示し、登録漏れを抑制しています。
⑦支払期限に関する注意喚起(不適切事務の防止)
支払期限を超過したものや、支払予定日直前になって出納局の支払審査担当へ提出されるものがあり、特に電子決裁によるものが多い状況がありました。
背景には支払期限に対する意識不足や不注意があるため、支払予定日の入力時、文書の決裁時に「必ず伺の支払日を確認し、出納へ5開庁日前までに提出(決裁)してください。」との注意喚起を表示しました。
起案側・決裁側の両方で警告文を表示することにより、期限超過等を防いでいます。
【電子請求システム】

事業コード欄を必須化、入力規則を案内。財務会計に連携して予算残の確認も可能
①システム間連携のためのデータ整合性担保(業務効率化・正しい運用の定着)
電子請求システムから財務会計システムに支出データを連携する際、財務会計システム側で読み込むことができず、エラーとなるケースがあります。
連携元のシステムで「件名」「事業コード」欄に、連携先に合わせたルール外の入力がされてしまうことが理由でした。そこで、入力内容が所定条件を満たしていなければ警告を出し、次に進めるボタンを押せなくなるように「テックタッチ」を実装しました。
また、必須入力項目である事業コード欄には「必須」マークを追加しました。
これにより、データ形式の統一性が担保され、エラーを未然に防止できています。
②件名への所属名略称の自動入力(業務効率化・サービス利活用推進)
運用開始後に、取引事業者からの指摘により発覚した問題として、どの所属から発注依頼をかけたか、判別がつかなくなるというものがありました。
システムの仕様上、取引工程が進むと所属先情報の表示がすべて「島根県システム管理者」に書き換えられてしまうためです。
このままでは、せっかく導入したシステムが事業者に利用されなくなる可能性もあったため、この問題を非常に重く受け止めていました。
システムの開発元に改善要望を出しましたが、急ぎ解決する必要があったため、同時に「テックタッチ」での解決も試みました。
結果的に、件名の頭に所属の略称を自動入力する操作ガイドを実装し、件名を見て依頼元の所属を判断できるようにしました。
自動入力のため、職員に負担はなく、漏れ・ミスも発生しません。
③メールアドレスの登録(業務効率化・問い合わせ削減)
電子請求システムのIDとそれに紐づけるメールアドレスの登録は、庁内のルールと画面のデザインから、マニュアルで解説することが極めて難しいものでした。
IDは1所属につき2つずつ(担当者・決裁者)を配布し、各IDには2つまでの通知用メールアドレスが登録可能です。
メールアドレスの登録画面には入力欄が4箇所あり、そのうち3箇所に同じメールアドレスを入力する必要があります。
また、入力欄はいずれもクリックをして展開が必要です。
そこで、入力欄を自動で展開したうえで、1つ目の入力箇所をハイライトし、メールアドレスを設定すると全ての必要箇所に自動転記する操作ガイドを作成しました。
利用者・管理者双方の負担が大きく軽減されています。
④日付の整合性担保(業務効率化・不適切事務の防止)
事業者からの納品の際、事業者は納品書を発行し、それを受けて発注者は検収書を発行します。
納品日は常に検収日以前となるはずですが、これをシステムで制御することができませんでした。
日付の前後関係が誤っていると、地方自治体の支出証拠書類として整合性がとれていないものが残ってしまうことになりますが、この1点のために出納機関の審査プロセスを増やすと、電子請求システムを導入した目的である審査の事務負担削減やスピーディな支出などが果たせなくなる恐れがあります。
そこで、検収日を入力する際、関連付けられた納品日を取得、納品日以降の日付を検収日として選択しなければ次に進めないようにしました。
支出の証拠に不適切なデータが残ることを防止できています。
⑤承認申請ルートの自動設定(業務効率化・不適切事務の防止)
「見積依頼書」「発注書」それぞれで上長の承認を得る必要がありますが、それぞれで設定すべき承認ルートが異なります。
承認ルートの選択ミスを防ぐため、画面内の情報から「見積依頼書」「発注書」どちらであるかを読み取り、自動で正しい内容を選択する操作ガイドを実装。職員が意識しなくとも、誤りなく手続きを開始できるようにしています。
また、初回申請時には「決裁者」を選択する必要がありますが、県の全所属440アカウントから手動で検索が必要で、不適切な設定でも申請を開始できてしまう仕組みになっていました。
そこで、決裁者を選択する画面では、所属名をもとに自動で検索し、該当する決裁者のみを絞り込み表示する操作ガイドを実装。手間と誤りの両方が生じないようにしています。
⑥二重データ生成の防止(不適切事務の防止)
支出データは、電子請求で事業者が請求書を発行し、島根県に送信された段階で財務会計に連携されます。そのため、県側が請求書を差し戻し、再度発注先が請求書を発行した場合、再び財務会計に連携されてしまい、同じ取引の支払データが2重で生成されてしまいます。
このような事態を防ぐため、差し戻し処理が行われないように「テックタッチ」でボタンを隠す対応を行いました。
この点は運用開始後に判明し、一刻も早い改修が必要でしたが、「テックタッチ」のおかげで迅速に対処できました。
⑦ファイル添付の防止(委託費増の防止)
電子請求システムには、見積依頼や発注の際、画像などのファイルを添付する機能がありますが、添付ファイルの総量が一定数を超えると毎月の使用料が加算される仕組みになっています。意図しない使用料増を防ぐため、職員のマニュアルに本機能を使わないよう記載していましたが、それでも添付される事例がみられました。
そこで「テックタッチ」の機能で、ファイル添付が可能な各種ボタンを触れないようにし、「利用不可」と表示。想定外の利用料発生を防いでいます。
今後の展望
職員の業務改善意欲を刺激、他システムへの展開も検討
今回の取り組みを通じて、現場主導でシステム画面や運用を改善できる仕組みの有効性を強く実感しました。
以前は、職員から財務会計システムに関する指摘を受けても「次のシステム改修で改善します」と答えるしかありませんでしたが、現在は即座に対応することができます。改修を待つことも、費用をかけることもなく、職員の入力・操作の負担軽減と適正な事務処理を両立できるようになったのは大きな変化です。
また、操作ガイドによる業務改善効果は明確で、業務改善のモチベーション向上にもつながっています。
「テックタッチ」が効果を発揮する業務は他にも多くあると考えています。一般職員アンケートでは他システムへの導入希望の回答欄も設けました。その結果、導入希望が示された回答のうち、総務事務システムで49%、総合文書管理システムで32%の導入希望が示されることとなり、今後はこれらを念頭に他システムへの展開も検討してまいります。
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