出欠や成績の管理、保護者への連絡、会議資料の作成など、日々の校務に追われ、教職員が児童生徒と向き合う時間を十分に確保できていないと感じている学校もあるでしょう。
校務DXでは、校務のあり方そのものを見直し、デジタル技術やデータを適切に活用することで、教職員の働き方や学校運営の変革を目指せます。
この記事では、校務DXの概要や対象となる業務、メリット、推進時の課題と成功のポイントに加え、校務支援システムの活用事例も紹介します。
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校務DXとは
校務DXは、小学校や中学校、高等学校、大学などで働く教職員の業務を対象に、デジタル技術を活用して業務の変革を進める取り組みです。まずは、校務DXの意味と対象となる業務、そして校務DXが求められている背景を確認しておきましょう。
校務DXの意味と対象となる業務
校務DXとは、デジタル技術やデータを活用して、学校運営や教職員の業務を効率化・高度化する取り組みのことです。対象となる業務には、次のようなものがあります。
・出欠や成績、指導要録の管理
・保健に関する情報の管理
・保護者への連絡
・教職員間の情報共有
ここで押さえておきたいのは、紙の書類を電子データに置き換えるだけでは単なるデジタル化や業務効率化であり、校務DXとはいえない点です。校務DXでは、業務フローや情報共有の方法そのものを見直し、教職員が教育活動に時間を使える環境を整え、学校運営のあり方を変革することが求められます。
校務DXが求められる背景
校務DXが求められる大きな理由は、教職員の長時間勤務を是正し、児童生徒と向き合う時間を確保する必要があるためです。教職員の業務負担が大きい状態が続けば、授業の準備や児童生徒への対応に十分な時間を割けなくなります。
GIGAスクール構想によって、学校ではICT環境の整備が進みました。こうして整った環境を、学習の場面だけでなく校務にも活かしていこうという動きが広がっているのが現状です。文部科学省も次世代の校務DXを推進しており、教育委員会や学校に向けたガイドブックを示しています。
DXを進めるうえでのポイントについては、「DXとデジタル化の違いとは?DX推進を実現させるポイントも解説」の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
校務DXで効率化できるおもな業務

ここでは、学校現場で日々発生する業務を3つに分け、校務DXによってどのように効率化できるのかを紹介します。
出欠・成績・指導要録など児童生徒情報の管理
学校では、出欠や成績、通知表、指導要録、健康情報など、児童生徒に関するさまざまな情報を管理しています。これらを紙や個別のファイルで扱っていると、同じ内容を何度も転記したり、帳票を1枚ずつ作成したりする手間がかかってしまうでしょう。
校務支援システムでこうした情報を一元管理すれば、転記や帳票作成の手間を省けるうえ、入力ミスの削減も期待できます。学期末や年度末に集中しやすい成績処理や指導要録の作成でも、作業時間の短縮につながります。
ただし、児童生徒の情報は慎重な取り扱いが求められる個人情報です。管理の効率化だけでなく、誰がどの情報を閲覧・編集できるのかといった利用権限や、情報漏洩や誤操作などを防ぐ運用ルールもしっかり整えておく必要があります。
保護者・地域との連絡やアンケートの実施
欠席・遅刻・早退の連絡や学校だより、アンケート、緊急連絡なども、デジタル化によって効率化しやすい業務です。
保護者からの欠席連絡をオンラインで受け付ければ、電話対応の負担が軽くなります。学校だよりやアンケートをデジタルで配布・回収する方法に切り替えると、印刷や配布の手間が減り、連絡漏れも防ぎやすくなるでしょう。保護者との情報共有も、これまでより迅速に行えます。
一方で、すべての家庭が同じ通信環境にあるとは限りません。一律にオンライン化するのではなく、家庭の状況にも配慮しながら運用方法を検討してください。
会議・調査・各種申請など教職員間の業務
会議資料の共有やスケジュール調整、調査への回答、校内の各種申請、日常的な情報共有も、校務DXの対象となる業務です。
こうした業務は、紙の回覧やメールへのファイル添付、教職員ごとのファイル管理に頼りがちです。しかし、クラウドツールやワークフローを活用すれば、情報を一元的に管理できるため、資料を探したり、申請・承認の進捗を問い合わせたりする手間を減らせます。
ただし、教職員が日常的に使う仕組みほど、操作のしやすさや問い合わせへの対応まで考えておかなければなりません。使い方がわかりにくいままでは、かえって現場の負担が増えるおそれがあります。
校務DXを進める3つのメリット
校務DXのメリットは、業務の効率化だけにとどまりません。ここでは、教育活動や学校運営の質を高めるという視点から、おもなメリットを3つ紹介します。
教職員の事務負担を減らし、子どもと向き合う時間を確保できる
校務DXを進めると、定型的な入力や集計、連絡、資料作成といった事務作業の負担を減らせます。例えば、成績の集計や保護者への一斉連絡をシステムで処理できれば、手作業にかけていた時間を短縮でき、教職員の課題となっている長時間勤務の改善にもつながるでしょう。
削減できた時間は、教材研究や生活指導、保護者対応などに充てられます。教職員が児童生徒一人ひとりと向き合う余裕が生まれれば、日々の教育活動の充実にもつながるでしょう。校務DXは、働き方改革と教育活動の高度化の両方にかかわる取り組みです。
情報共有を円滑にし、業務の属人化やミスを抑えられる
情報が個人のパソコンや紙の資料に分散していると、担当者が不在のときに対応が止まってしまいがちです。必要な情報を関係する教職員がすぐに確認できる状態にしておけば、特定の担当者しか内容を把握していない属人化した業務を減らせます。
常に最新の情報を確認できるため、転記漏れや連絡漏れ、教職員間の認識のずれも抑えられるでしょう。人事異動や担当の変更があった場合でも、業務を円滑に引き継げる仕組みづくりにつながります。
データを活用した学校運営・教育活動の改善につながる
校務データを集約・可視化すると、学校運営に必要な情報を把握しやすくなります。例えば、出欠状況や保健情報、アンケート結果などを必要な範囲で活用し、児童生徒への支援や学校運営の改善を検討するための材料にできるでしょう。
感覚や経験だけに頼らず、データに基づいて支援の必要性を判断しやすくなる点もメリットです。
データを活用する際は、何のために使うのか、目的を明確にしておく必要があります。併せて、個人情報の保護や適切な権限管理も徹底しなければなりません。
校務DXを進めるうえでの課題
校務DXを進める際には、現場の業務やシステム、運用の面でつまずきやすいポイントも少なくありません。ここでは、導入前に把握しておきたい課題を4つ紹介します。
紙・電話・個別のExcel管理が残り、業務が分断されている
紙の書類や電話連絡、メールへのファイル添付、個別のExcelファイルなどが混在していると、業務やデータが分断されやすくなります。すると、同じ情報を何度も入力したり、確認のために複数の手段を行き来したりする必要が生じ、業務全体を一つの流れとしてデジタル化しにくくなります。
また、既存の業務をデジタル化しても、非効率な手順が残るケースは少なくありません。例えば、配布物をペーパーレス化しても、印刷の手間が省けるだけで、業務全体の効率化につながらない場合があります。
まずは業務フローと、使っている帳票やデータを可視化したうえで、業務の進め方そのものを見直す視点が必要です。
学校や担当者によって運用・デジタル活用の状況に差がある
学校の規模や自治体の方針、担当者の経験などによって、DXの進み具合や運用方法には差が生じます。
学校ごとに任せきりにするのではなく、教育委員会が共通の方針や支援体制を整えることが大切です。先行する自治体の取り組みを参考にしつつ、地域や学校ごとの課題に合わせて進めていく必要があります。
また、学校管理職やICT担当者も、関係部署や担当者に対応を任せるのではなく、校内全体で運用をそろえる必要があります。こうした運用の標準化には、システム上で操作方法や注意点を案内し、担当者の経験や習熟度に左右されにくい環境を整える対策が有効です。
児童生徒の個人情報を扱うため、セキュリティ対策が必要になる
校務では成績や出欠、健康情報などの個人情報を扱うため、利便性だけでなく情報セキュリティへの配慮が求められます。クラウドの活用やネットワークの統合を進める際は、アクセス制御や認証、端末管理、運用ルールなどの対策を検討してください。
一方で、セキュリティを重視するあまり使い勝手を損なわないよう、教育委員会と学校、事業者が連携して適切な環境を整えることも必要です。
システムを導入しても、教職員に利用が定着しない
新しい校務支援システムを導入しても、繁忙期や年度初めには操作方法に関する問い合わせが集中しがちです。研修やマニュアルを用意していても、たまにしか行わない手続きや、複数の画面にまたがる操作までは十分にフォローできない場合もあるでしょう。
利用を定着させるには、自己解決を促進する仕組みづくりがポイントです。例えば、システムの画面上で必要なタイミングに案内を表示し、誤入力や操作の迷いを減らす工夫が求められます。
システムを社内に定着させる方法については、「システム定着化を成功させる具体的なポイントとは?おすすめツールもご紹介」の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
校務DXを成功させる4つのポイント
校務DXを成功させるには、システムの導入そのものを目的にせず、業務の改善や利用定着まで見据えて進めることが大切です。ここでは、押さえておきたい4つのポイントを解説します。
負担が大きくミスが多い業務から優先順位を付けて着手する
まずは、業務量やミス・差し戻しの件数、問い合わせの多さなどを基準に、改善すべき業務を洗い出しましょう。
すべての業務を一度に変えようとすると、現場にかかる負担が大きいため、改善効果を確認しやすい業務から始めるのが現実的です。小さな成果を積み重ねていけば、教職員の理解も得やすくなるでしょう。
現状を把握する際には、校務DXチェックリストなどを活用し、自校や自治体の取り組み状況を点検してみるのも一つの方法です。現状を客観的に把握できれば、改善の優先順位も付けやすくなります。
学校・教育委員会・ICT担当者が連携して推進体制を整える
校務DXには、学校現場だけでなく、教育委員会や情報システムの担当者、必要に応じて事業者もかかわります。現場の困りごとを把握したうえで、導入や運用、改善のそれぞれを誰が担うのか、役割分担をはっきりさせておきましょう。
特に教育委員会には、共通の方針や標準化の方向性を示し、各学校を支援する役割が求められます。学校現場の声が教育委員会に届く仕組みを整えておくと、導入後の改善も進めやすくなるはずです。
セキュリティと利便性を両立できる環境を検討する
環境整備では、校務系・学習系のネットワークや校務支援システム、データ連携の基盤などを総合的に検討します。個人情報を守るための認証や権限設定、端末管理を整えつつ、教職員にとって使いやすい環境を目指してください。
セキュリティを重視するあまり操作が複雑になると、教職員がシステムを使わなくなり、紙やExcelでの管理に戻ってしまうおそれもあります。
環境整備の内容は、自治体の規模や既存のシステムによって異なります。ガイドブックを参考にしながら、段階的に進めていきましょう。
誰もが迷わず使える仕組みをつくり、利用状況を改善に活かす
システムを選定・導入したあとは、すべての教職員が必要な機能を迷わず使える状態を目指します。そのための有効な対策の一つが、既存システムにあと付けする形で操作を支援できるDAP(デジタルアダプションプラットフォーム)を導入することです。
画面上に操作ガイドや入力支援を設けることで、誤入力や問い合わせ、差し戻しを減らせます。さらに、どの画面でつまずきやすいか、どの機能が使われているかといった利用状況を把握し、ガイドや運用の改善に活かすこともできます。
導入して終わりにするのではなく、利用状況や現場の声を分析し、操作ガイドや運用ルールを継続的に改善していくことが、定着への近道です。
【校務DXの事例】早稲田大学|出張申請システムの操作時間を短縮

早稲田大学では、約4,000名の教職員・学生が出張申請システムのe-Tripを利用しています。学生も使う手続きのため、利用者のシステムへの慣れには幅があります。
e-Tripは入力項目が多く、承認フローも複雑だったため、申請時のエラーや差し戻しが発生していました。申請者は入力に手間取るうえ、差し戻されれば修正して再提出しなければならず、確認する側も対応に追われます。利用者が多いほど、この負担は大きくなりがちです。
そこで同大学では、UI改修と並行して「テックタッチ」を導入し、入力補助や操作ガイドを画面上に表示しました。ガイドは入力中の画面にそのまま表示されるため、マニュアルを別に開く必要がありません。
迷わず申請できる環境が整ったことで、出張申請画面の平均入力時間が短縮され、教職員や学生の作業負担も軽くなっています。利用状況をもとにした継続的なシステム改善も可能になりました。
この事例は大学ですが、入力項目の多い申請や、多くの教職員が使うシステムを抱える点は、小中高等学校の校務にも共通します。校務支援システムの定着を図るうえで参考になるでしょう。
早稲田大学の事例の詳細はこちら
校務DXに関するよくある質問
ここでは、校務DXについてよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
校務DXと教育DXの違いは何ですか?
校務DXは、教職員の業務や学校運営を対象としたDXです。一方、教育DXは授業や学習体験も含めた、より広い教育活動全体のDXを指します。
校務DXは何から始めればよいですか?
まずは校務DXチェックリストなどを使い、業務の現状と課題を整理するところから始めましょう。課題を整理したうえで、働き方の改善効果が期待できる業務から着手すると、効果を確かめやすくなります。
既存の校務支援システムを使いやすくする方法はありますか?
システム自体を更改しなくても、マニュアルや研修の見直し、画面上への操作ガイドの追加などによって、使いやすさを高められる場合があります。現場で迷いやすい操作を把握し、その部分に案内を加えるだけでも、操作の負担や入力ミスを減らせ、問い合わせの削減も期待できるでしょう。
校務DXで教職員が教育に注力できる環境を整えよう
校務DXは、出欠・成績管理や保護者への連絡、教職員間の情報共有などを見直し、学校運営を変革する取り組みです。成功させるには、現場の課題に優先順位を付け、セキュリティと利便性を両立させる視点が欠かせません。
「テックタッチ」は、システムの画面上に操作ガイドや入力支援を表示し、教職員の操作負担や問い合わせの削減、システムの利用定着を支援します。こうしたツールも活用しながら、教職員が迷わず使える環境を整えましょう。校務の負担を減らして時間に余裕が生まれれば、教育活動により注力できます。
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